#186 ガンジスへ | かふぇ・あんちょび

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このカフェ、未だ現世には存在しません。

現在自家焙煎珈琲工房(ただの家の納屋ですけど…)を営む元バックパッカーが、

その実現化に向け、愛するネコの想い出と共に奔走中です。

 大都会ニューデリーの喧騒も、宿の日本人バックパッカーたちも、ひととおり満喫したので、この街を離れ北へ向かう事にした。


 バックパックの旅の醍醐味は何かと聞かれれば、僕がまず挙げるのはこの感覚である。

つまり、ある町に滞在していて退屈を感じたり、面白くない思いをした場合には、バックパックを担いでバスに乗って次の町へと行きさえすれば、そこには次のステージ、次の空白のページが待っているのである。


 僕の旅はこれ以降3年以上続き、その間僕はこの無責任で投げやりな感覚にドップリと骨の髄まで漬かっていたので、バックパックを降ろして日本での社会生活へと戻ろうとした時には、それはそれは大変な思いが待っていた。




 ・・・今では、生きていくっていう事はそんなもんじゃない とも感じますが、あの感覚が私の中から完全にぬぐい去られた訳でもないような気もします。




 まあとにかく、この時点での僕の次の目的地は、ガンジス川である。


 ガンジス!


 なんと旅のココロをくすぐる地名であろうか。

ヒンズー教の考え方では、この川はそれ自体が神格化もされているが、それもまた、いかにももっともな気もしてくる。

 時は12月中旬、僕の波乱に満ちた24歳という歳が終わろうとしており、その水で身体を洗えば全ての罪は清められ、死してその水に葬られれば苦しみに満ちた輪廻の輪を超える事ができるというその川で僕は沐浴をし、自分の誕生日を迎えたかったのだ。


 先の事を考えるのを放棄し能天気な旅を続けながらも、僕はそれなりにいろんな事を考え、思い悩んでいたのだろうと思う。


 


 ・・・ああ、こうして回想して文章を書いていると、なんだかやるせなくなってきました。

なんだかなあ・・・、今でもちっとも変わってなんかいないなあ。

相変わらず私はあの頃と同じ迷いの中にいて、なーんにもわかっちゃいないんですよねえ。


 あれから何度も何度もバスに乗り、数え切れないほどの新しい町に降り立ち、舞台を換え背景を換えてここまで来ましたが、相変わらず私は、全く同じ不恰好なステップで哀れなダンスを踊っているだけなのではないでしょうか?