中野区民交響楽団 第57回定期演奏会 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

平成26年9月28日(日)、
『中野区民交響楽団 第57回定期演奏会』(in なかのZERO)を聴きに行く。



エスプリプリプリ、プリップリッ。

曲  目:M.ラヴェル  古風なメヌエット
     F.プーランク バレエ組曲「牝鹿」
     C.サン=サーンス 交響曲第3番ハ短調作品78「オルガンつき」

指  揮:高橋 勇太
オルガン:新山 恵理

◇◆

『あもる一人直木賞選考会』に比肩する恒例行事がやってきた。
半年に一度のチケット強奪演奏会。
またの名を、中野区民交響楽団定期演奏会である。

『中野区民交響楽団 創立30周年記念サイクル 第51回定期演奏会』
『中野区民交響楽団 第52回定期演奏会』
『中野区民交響楽団 第53回定期演奏会』
において、何度も何度も無料チケットを強奪し・・

『中野区民交響楽団 第54回定期演奏会』
『中野区民交響楽団 第55回定期演奏会』
では、パブロフの犬のように、手を出せばチラシと無料チケット2枚が用意され・・・

中野区民交響楽団 第56回定期演奏会
では、初めての非・強奪。
前回の演奏会時にアンケートに書いておいた住所に届いた無料の招待ハガキを持って、
演奏会に行くことにした。
そう、非強奪でもいつもどおりタダ。

そして今回も彼から強奪しようにも都合が合わず、
仕方ないので(毎回、ナニサマ?)無料の招待ハガキを握りしめて、
なかのZEROホール意気揚々と向かった。
やっぱり、いつもどおり、タ~ダ~。←News ZERO風に。

今回の演奏会の曲目は、まあ正直、私の苦手なエスプリですよ。おフランスざ~ます。
みたいな。
だいたい、エスプリってなんやねーん。みたいな。
カーペッペッ、みたいな、タンが出そうな発音をするフランス語の国ざ~ますよ~。

でもでも、そんな苦手なエスプリプログラムの中で、唯一キラリと光る演目が!

ラヴェル『古風なメヌエット』
である。

ラヴェルと言えば、
先日の『NTT DATA Concert of Concerts Opus 19』でも書いたが、
「オーケストラの魔術師」という異名をもつ人。
そんな人のデビュー作である「古風なメヌエット」が演奏される。
もともとこの曲は、ピアノの小品として書かれたもので、
私も過去に弾いたことがあり、そして今も時々弾いている。
初めてこの曲を演奏したとき、私、ラヴェルが好きになった。
美しく散りばめられた、光り輝く不協和音の宝石。
そのピアノの小品を作曲してから30年ほどが経った頃、
オーケストラの魔術師ことラヴェル自身の手によって、
オーケストラ版として生まれ変わったのだ。

ピアノの小品、と書いたが、この曲、音符的には容易く見えるが、
演奏してみると案外難しいんだぞ~~~~。
何が難しいってねえ。
どの音も飛び出してはいけないのだ。
平均的に全ての音を同じような音色で出す、って案外難しい。
しかも繊細な音ばかりが重ねられ、薄く薄く重ねられた音が最初から最後まで連なり、
見事なバランスで作られた、精巧なアンティークグラスのようなのだ。
扱いが非常に難しい。
壊れそうな音ばかり集められた ←光GENJI?
そんな、アンティーク・メヌエット(古風なメヌエット)。

そんな繊細なピアノ曲をオーケストラで演奏。
1人で演奏するピアノでも難しいのに、大勢で演奏するのかあ。
勇気あるねえ。
中野区民交響楽団。
そしてラヴェル自身。
そんなにこの曲の思い入れがあったのか。
誰かにオーケストラ版にされるくらいなら、とか思ったとか?
なぜオーケストラ版にしたのか・・・
それは今となってはわからないが、楽しんで聞こうではないか。

あ、枝野元官房長官にちょっと似てる高橋先生の登場だー。
あれー、また痩せた?
どんどん枝野さんから離れていく・・・
なんてことを思っていると、会場に懐かしい不協和音が響いた。

ごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃ・・・

金管がーーーー。
木管がーーーー。
あ~あ~あ~あ~。
バラバラバラバラ・・・・
そんなバラバラな金管をバイオリンがなんとか支えてゴール~~~。
(と大げさにひどいこと書きましたが、そこまでひどくはなかったです。
 ただ、ほら、この曲には私自身に思い入れがあるもんですけえ。)

私「ほっ・・・」

やっぱり難しい。
いい演奏を期待してたけど、うまく演奏されなくてよかった、という複雑な乙女心。
やっぱりこの曲はピアノがいいからさ。
ラヴェルには申し訳ないけど。

この曲がいかに難しいか、を証明することがもう一つある。
YouTubeでざっくり探してみたが、どの演奏もイマイチ・・・
イマイチどころか、イマニ、イマサン・・なのだ。
んもー、私の演奏のほうがいいんじゃねえの?くらい。←嘘。大げさ。紛らわしい。

そんな中、ようやく見つけました!!



Monique Haas(モニーク・アース)さんの演奏。

誰、それ?なのだが、フランスの女性ピアニストだそうな。
やっぱりフランス人の曲はフランス人のものか~。
とかぶつくさ。

ペダルの使い方も弾き方も、彼女の演奏は飛び抜けてすばらしかった。
モニークさんかあ。
知らんかったなあ。
特に2分20秒あたりからの、日だまりのような温かい和音がすばらしい。
本当にフランス人ピアニストなのか!?
と疑いたくなるような温かさ。

あやしいwikiで調べてみると、
「アースと同世代のフランス人ピアニストは、
 マルグリット・ロンに関連した演奏様式(流麗な演奏技巧や堅く鋭い音色)から
 離れつつあった。
 アースの場合は、古いフランス・ピアノ楽派の明晰さや正確さと、
 コルトーの影響力を物語る暖かな音色とを両立させている。」
だそうでーす。

どうりで、私の嫌いなフランス人特有の「堅い音色」がないわけだ。
そしてどうりで、過剰な情緒の表現がないわけだ。
この曲はねえ、最初に申しましたが、見事な平均的なバランスで組み立てられた曲。
安定した情緒で弾かないと、ただの気持ち悪い曲になってしまうのだーーーー。
ふんがふんが。
熱いオバハンの主張。
だから、彼女の演奏に心を奪われたわけね。
なるほど納得。

YouTubeで見つけた多くの過剰な情緒表現の演奏を挙げたいが、やめときますです。
ほんと船酔いのように気持ち悪くなります・・・

バラバラ、あらあら、という「古風なメヌエット」の演奏が終了し、
そして引き続き、プーランクの「牝鹿」である。
また難しい曲を持ってきたなあ。
この曲の現題は「かわいい娘さん」みたいな意味があり、
その名のとおり、本当に無垢で軽やかでおっされー、みたいな曲なのだ。
それを、ウェッティな土壌の日本の、ウェッティなジジババたちが演奏・・・←コラッ

と息をのんで見守っていると、
おおおお!
このピッタリ感はどうした!
と驚くほど、ちょっと前の古風なメヌエットとは違う統一感である。

響き渡るトランペットも、ちょっとご愛嬌、的なところもあるが、
きちんと押さえるところは押さえ、みんなをひっぱっていく。
そしてやっぱりこの楽団の強みは、バイオリン。
しかも前回よりうまくなってる。
弾いても弾いても、ズレていかない。
一致団結して一つの音の点に向かおうとしている。
すばらしいわ。
音色も統一されてるし、なに、これ。
ほんとにあの中野区民交響楽団!?みたいな。←コラッ。

しかもちょっとだけ軽やか。
エスプリッとちょこっとだけ跳ねてる。
すごい!!

オーボエのいつものお上手な人はセカンドとして演奏しており、
新しい方がファーストで吹いていた。
うん、まあまあ。
このオケ、オーボエに優秀な人材が集中しとるーーーー。

ホルンでずこーーーーー!となる場面もあったが、←ホルンにも集まって~~~。
全体的にすばらしい演奏であった。

そして休憩。

夫「『古風なメヌエット』、聞いたことあったー。あもちゃん弾いてるよね。」
私「おお、よくお分かりで。でもオケ版はイマイチだったね。」
夫「何が何だかよくわからないうちに終わったって感じだった。」

言い得て妙。

そして本日のメイン演奏。
サン=サーンス 交響曲第3番ハ短調作品78「オルガンつき」
である。

なかのZEROホールにはパイプオルガンがないため、
電子オルガンを使用した演奏となるとのこと。
タイトルに「オルガンつき」なのだから、オルガンがあるのは当然なのだが、
他にもピアノ(1台を2人4手で演奏)が用いられていることに私は驚く。
ピアノってオケの楽器の一つとして演奏されるんだなあ。
と改めて、ピアノは楽器、ということを思い知る。
もちろん知ってましたけども!!
オケと一緒に演奏したとしても、ピアノ協奏曲、などの独立した楽器として見てしまう。

この曲がすばらしいかどうかはさておき、
 ←おほほ、私、あまり好きじゃないの。
  第1楽章なんてドヴォルザーク劣化版かよ、みたいな。
  どこがエスプリなんだ、みたいな。
  つーか、エスプリってなんなのさ。みたいな。←調べなさーい。
演奏はとてつもなくすばらしかった。
やっぱりバイオリンが上手だと、曲運びもうまくいくのだ。

オーボエは、いつも上手な方がファーストに変わっており、余裕の安定感であった。
毎度毎度安心するね、彼の演奏は。

その後もヒヤヒヤポイントが全くないまま、怒濤の第2楽章(前半)へ。
(普通の交響曲と違い、第1楽章(前半、後半)、第2楽章(前半、後半)という構成)

バイオリンやチェロがかき鳴らす激しい濁流、ティンパニが雷のように打ち鳴らす。
その合間に見える青空にフルートなどのコトリのさえずりが響く。

休む間もなく、第2楽章(後半)のオルガンの独奏へ。
(聞いたことある人は聞いたことあるメロディ。映画にも使われたことがあるらしい。)

私「あー。やっぱりここはパイプオルガンのほうが・・・」

仕方ないが、迫力が少々足りない。
しかしこれだけは言っておきたい。
ここ以外については、別にパイプオルガンじゃなくても全然大丈夫であった。
むしろコンパクトでよくまとまってる感じで、電子オルガンのほうが聞きやすいくらい。

そう思っている間も、荒れ狂う嵐のようなフィナーレへ。
聞いてる方が疲れるわ、レベルの荒々しさ。
休みがない!!
ヴァイオリン、キコキコーーーー
トランペット、プカプカーーーー
ティンパニにいたっては、お前はYOSHIKIか!ってくらいにドコドコーーー

ジャン!!!!

パチパチパチパチー!!!
今回は中野区の地元のオケの演奏なので、当然ながらブラボーおじさんはいなかったが、
みな、心の中ですんばらしいー!の声を発していたであろう。

よき演奏であった。

そこへみなの拍手に応えて、高橋先生が再登場。

「オールフランスプログラムでしたが、
 エスプリを表現するのが難しく・・・うんたらかんたら」

と説明を始めた。

マイクもなく話しているため、
私の前に座っていたおじいちゃんも、耳に手をあてて高橋先生の話を集中して聞いていた。
その姿はまるで・・・

私「野々村議員・・・?」

と、ぷーくすくす、と笑ってしまったが、ふと気づけば私も同じポーズをしてたーー!!

そしてアンコールは、グノーの「歌劇ファウスト」から3曲が演奏された。
アンコールで3曲!!
多い!!
練習量も大変だろうに。。。

こちらも勢いのある演奏で、
サンサーンスに続いて。大変盛り上がったのであった。
いつからあんなにうまくなったのか。
新しい風が吹いているのかしら。
それともたまたま曲との相性がよかっただけなのか。

そんな話をするべく、また近いうちに彼とお食事会をする予定。
バリバリ聞き出すぞー!!!

次回は、シベリウスのバイオリン協奏曲、そしてチャイ4である。
うへー。
シベリウスのバイオリン協奏曲かあ~~~。
これまた、ずいぶんと難しい曲に挑戦するなあ・・・
きっとこれが中野区民交響曲の、エスプリッぷりなのだろう。