…さー、いよいよ黒ジンギさんが動きますよ。
chiakiオンマ、苦情は受け付けませんのでそこんトコよろしく←(笑)



  『 銀鱗 』 3



 ジョンヒョン達のバンドのライブシーンの撮影は、なじみのライブハウスで行われることになった。
その方が、少年たちも普段通りの演奏ができるだろうという制作側の配慮だ。


『バンドで明け暮れていた高校生活を終えようとする仲間たち。
僕等の青春は、音楽と○○○(商品名)と共にあった』が今回のCMテーマ。


このドリンクのCMはテレビではオリンピック出場選手など、
有名どころのスポーツ選手がキャラクターになっている。

が、WEBCMは一般の人たちの日常を描くシリーズになる予定で、
今回はその、記念すべき一本目の作品だ。


朝8時集合で、今日のスケジュール説明。
その後、順次衣装を合わせ、メイクに入る。


近づく卒業式を前に最後のライブを行うという設定で、収録する曲はアップテンポなロック。


実際の演奏は別録りで、スタジオで録音を済ませてある。


撮影はカメラの位置を変えて、4パターン。

商品ロゴの電飾をバックに客席後方からステージ全景をフレームイン。
ドラムセットの後ろから客席を見下ろす。
ステージ下からバンドメンバーを見上げるカット。
そして、メンバーと見上げている女生徒、それぞれのアップ。


観客役の50名は、エキストラ事務所派遣2割、ボラエキ8割。
中央の女生徒役2人は、クライアントの要請で出演が決まったkeyとテミンだ。


普段は200~300人は最低でも入るハコなので、それに比べたら人数は少ない。
バンドメンバ―達は物足りない様子だったが、CG処理で100人にも1000人にもなるという。



 初等部以来のセーラー服姿に、keyとテミンははしゃいでいる。
そこにジョンら、バンドのメンバーも加わった。


 「やーん!何か恥ずかしいねぇ~」

 「中高とスーツだったから、変な感じ」

 「いや、新鮮でいいよ~!二人とも可愛いから何着てもオッケーだよね」

 「後で皆で記念撮影しとこうぜ!」


 そこに制作チームのまとめ役である、ジンギがやってきた。

 「さっきも言ったけど、仲間内で撮影したものは、
  公式発表が出るまでネットに流さないよう、頼むよ?」

 「はーい!解ってマース」

 「クライアントさんも、昼過ぎにこちらにみえるから、皆頑張ってね!」

優しい笑顔が印象的な彼の言葉に、メンバーも期待で気持ちが高まってくる。


keyがジョンの傍に行き、一瞬、テミンが一人になる時間があった。

ジンギはその僅かな時間を見逃さず、テミンに話し掛ける。


 「えーっと、テミンちゃん? ミノの上司に当たる、イ・ジンギです。
  まあ、上司って言っても、年もそんなに変わらないけどね。
  …いやぁ~、企画書やビデオでは散々お目に掛かってるけど、
  実際にこうやって間近に見ると、本当に可愛いなぁ~。
  ヤツが自慢ばっかりするから、どんな子かと思ってたんだ。
  今日はよろしくね」

 「あ、ハイ! ご期待に応えられるか不安ですけど…
  どうぞよろしくお願いしますっ」

 「ははっ…そんなかしこまらなくてもいいよ!
  ミノは今日、別の企画のクライアントさんとこ寄ってから来るけど、
  それまで何か分からないことがあったら俺に言って?
  遠慮しなくていいからね」

 「はい、ありがとうございます。ジンギさん」


ペコリと頭を下げる姿も、受け答えも、すれてなくて初々しい。
テミンのそれは、業界の大人慣れした学生タレントと違って、ジンギの興味をそそった。



 ほどなくして、撮影が始まった。

立ち位置に並ばされ、背の高さの微妙な違いであっちにこっちにと移動を指示される。
そして動作の確認。
何度も何度も少しずつ違った動きでリハーサル。

実際にカメラが回るまで、こんなに時間がかかるとは…

最初は現場の雰囲気だけで盛り上がっていた撮影初体験のメンバーも、
長くて1分のCMに、これだけの手間暇がかかっていることに驚きを隠せなかった。


実際に生の音は出さず、エア演奏。
少し物足りないが、これはこれ。
リハとテストを繰り返し、本番の声が掛かる頃にはコツを掴んできたようだ。



 やっと会場後方からのカットの撮影にOKが出た。

ふう~っと、声にならない声が会場に漏れ、一旦休憩に入る。


カット割りが変わるたびに機材の配置替えがあるので、待ち時間の方が長い。

keyとテミンが入口近くのパイプ椅子に腰を下ろしたところに、ジンギがやってきた。


 「どう?撮影初体験の気分は?」

 「…正直、時間掛かるんでビックリです。
  あ、でも、なかなか体験できることじゃないし…
  面白いよね?keyちゃん」

 「うん。自分の知らない世界が見られるのって、刺激的ですね」

 「高校最後の思い出になります」

テミンが言うと、ジンギは少し間を置いて答えた。


 「…最後じゃないかもよ?」

 「はい?」

 「あー… ホラ、ネットって今は瞬時に情報が世界を回るじゃない?
  地元アイドルが一夜にして全国区になったりさ。
  仮にこのCMがきっかけで君らの未来が変わる、なんてことがあり得ないとも限らない。
  …逆に堕ちるのもあっという間で、怖いけどね」


意味ありげなジンギの言葉に、勘のいいkeyは少し違和感を覚えたが、その場ではやり過ごしたのだった。



 午前中の撮影が30分押しで終了し、昼食休憩の時間になった頃やっとミンホは現場に到着した。


 「おはようございます。遅くなりました」

現場の制作スタッフに声を掛けながらライブハウスの中を見回す。

 「よっ! O製薬さん、どーだった?」

後ろからジンギが声を掛けてきた。

 「ナレーションと音楽のタイミング、もう少し変えたいそうですよ。
  …っていうか、別にこの件、今日じゃなくても良かったんじゃないですか?」

ミンホが言うと、ジンギはしらばっくれた。

 「まあ、そう言うなよ。あちらの広報さん、お前のファンらしいから、愛想良くしとけ」

 「…どーだか…」


妙な沈黙が二人の間に流れる。

 「あ~…JKちゃん達、ステージ裏の楽屋で飯食ってるよ」

ジンギがワザとらしく呟くと、ミンホはチラリと彼を横目に見て、そちらに足を向けた。



 話が盛り上がっているのだろう、ドアの向こうから笑い声が漏れ聞こえてきた。
遠慮がちにノックをして、ミンホはカチャリとドアを開ける。


 「…おはようございまーす。撮影、順調みたいだね」

バンドのメンバーとセーラー服の二人が、バッとこちらを振り返る。

 「オッパ!」

誰よりも早く反応して、テミンが立ち上がって近付いてくる。

 「何とかやってます!」

 「すっごい時間掛けるんですね~」

 「…まあ、積る話もおありでしょうから、どーぞどーぞ。
  こっちはこっちで盛り上がってますんで、お気になさらず~♪」

keyが気を利かせて、二人をドアの外に押し出す。
ドアを閉めたと思ったら、すぐさま開けて二人に言った。

 「あっ!撮影再開時間になったら声かけて下さい。
  うっかり開けちゃったら気まずいと思うんで」

 「もー!keyちゃんそんな言い方しないでよ~」

そう言いながら、テミンは顔を赤らめる。


扉が閉まった楽屋前の狭い廊下は、二人だけの空間になった。

ミンホがそっとテミンを引き寄せて軽く抱きしめる。


 「遅くなってごめんね?」

ミンホの背中に手を回して、テミンは答えた。

 「お仕事だもん。仕方ないの、分かってるから。
  一人だったら不安だったけど、皆が一緒だし…
  でもやっぱり、オッパの顔見たらほっとしたかな?」

自分を思いやってくれるテミンの気持ちが嬉しくて、その髪を2度、優しく撫でた。


身体を離すと、薄暗い照明の下で、ミンホはテミンの姿をしげしげと見つめる。

 「…セーラー服。似合ってるね。
  普段のスーツもいいけど、こっちも捨てがたいなぁ」

 「初等部の時はセーラーだったの。何だかくすぐったい感じ」

そう言って、ミンホの前でくるりと一回転して見せた。


 「午後はアップの撮影だよね?可愛く撮ってもらいな。
  いいスチールあったらこっそりもらっちゃおうかな~」

 「セーラー服の女子高生の写真を手帳に入れてたら、ヤバイ人になっちゃうよ」

 「自分の彼女の写真入れてる人なんていくらでもいるよ!
  …あ、でもアラサーのおじさんが持ってたら、やっぱ危険かな」
  
 「キャバクラのおねーさんに見られたら、引かれちゃうかもね~」

 「コラ、そんなトコ行かないって言ってるだろ!」

 「え~、さっきジンギさんに聞いたもん!
  オッパはクライアントさんにも接待で行くお店の人にもモテモテだって」

 「…テミナ、あの人のいう事、信じちゃ駄目だから!!
  俺とテミナの仲を羨ましがってそーゆー事言ってるんだからね!
  大体、仕事関係の人とどうこうって、絶対無いからっ!」

 「一生懸命否定するところが怪しい~~~」

横目でチラリと見ながら、テミンが腕組みをする。

 「俺、テミナ以外いらないから!」

 「ほんとぉ~?」

テミンは上目使いで拗ねた顔をしてみせる。

 「ほんとだって。これがその証拠♪」

ミンホはそう言ってテミンの肩を抱き寄せ、唇を合わせた。


 「…ん。今日のトコロは許してあ・げ・る」

テミンはにっこり微笑んで、勝ち誇った顔をする。
年齢の差なんて関係ない。
女性の方が相手を操縦するのが上手いのかも…と思うミンホだった。


やがて、助監督から声が掛かり、午後の撮影がスタートした――。




 午後のかなり遅い時間になって、クライアントのCM担当者の男性2人が現場にやって来た。

『ぜひこの二人を』と、keyとテミンを熱望していただけあって、
二人のカットを撮影している間は、熱心に横から覗いていた。


企画打ち合わせの窓口だったミンホは、ジンギと共に休憩時間に2人に呼ばれてある提案をされた。

 
 「え?…彼女たちを夏のTVCMキャラクターに、ですか?」


ミンホは思わず、ジンギと顔を見合わせる。
ジンギは知っていたのかどうなのか、さほど表情に出してはいない。


 「今回はWEB限定、ということで保護者の方にOKをもらっているので、
  TVという媒体になると、話はまた変わってくると思うんですが…
  それに彼女らはタレントじゃありませんし…」

 「ミノ君、君だってこの業界にいるなら、一般人が一晩でスターになるのを見ることあるよね」

 「その現場に立ち会えるのって、嬉しい事じゃないかな?」


どうやらクライアントの意向はかなり前向きなようだ。

まだWEBCM自体も公開されていない段階で、この入れ込みようは普通ではない。
2人がよほどの逸材と判断されたのか、それともジンギのテコ入れか…


逡巡して、ミンホは言葉を絞り出す。

 「…もう少し、時間を置いてからでいいでしょうか?
  彼女たちも高3で、進路など、イロイロ考えていると思うので」



  「俺は構わないと思うけどね~」


建物の外に出て一服しながらジンギは言った。


 「…やっぱりジンギさんが提案したんですか?」

 「そんな強力に押しはしなかったけど、新鮮な素材ってのがいいんじゃないの?」


ふぅ~っと煙を吐き出して、ジンギはミンホを見た。

 「こんなご時世だからなぁ~、金のかかるタレント使うよりは、
  経費掛けずにさわやかな商品イメージが作れる新人の方が動かし易いのは確かだし。
  特にテミンちゃんはあの美貌だから、放って置く方が罪じゃない?
  …ま、彼女らもこれから大学に行くワケだし、
  それとの兼ね合いは本人に任せるしかないけどな」


 「そりゃそうですけど…
  とりあえず、WEBの反応見てからでもいいですかね?」

 「様子見るのは構わんけど、時間取れないぜ?
  夏商戦は4月にはスタートだからな。
  駄目なら駄目で、差し替えられるモンも同時進行だから、
  キツくなるのはお前自身だからな」


 「分かってますよ…」

 「さーて!休憩終了!ラストまで頑張りましょう」


吸殻を携帯灰皿に収めると、ジンギは先に立って中に戻る。
ジンギの吐き出した煙が風に消えるのを待って、ミンホは歩き出した。

 


  ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─



 それから3週間後、件のWEBCMが公開された。


もちろん、評判は上々で、3年生は自宅学習期間に入ったというのに、
CMに出たメンバーを一目見ようと、学校周辺に人だかりができるようになっていた。

人だかりの整理は大変だが、受験生も増えて、学校としては悪くない効果があったようだ。

 
 1週間振りの登校日に、ミンホは学校への挨拶も兼ねてテミンを迎えに行った。

応接室で校長ら学校関係者と面談した後、待ち合わせた職員用玄関に行くと、
ジョンヒョンやキーらと共に、テミンが待っていた。


 「CM効果、絶大だね。
  なかなか大変なんじゃない?」

ミンホが問うと、ジョンが答える。

 「まあ、たまたま外出なくてもいい期間なんで、それほどキツクないですけど…
  バイト先まで押しかけられるメンバーもいて、ちょっとびっくりですね」

 「私なんかそれほどでもないけど、やっぱりテミンはマンションの外に出るのも決意がいるよね」

 「今朝はたまたまオンマの会社の人が車出してくれたから、助かったけどね」


 「…ここまで話題になるとは、正直考えてなくて。
  対策考えないとマズイかなって思い始めてるトコ。
  って、今更かな!?」

 「卒業式まであとひと月だし、それをやり過ごせば平気じゃないっすかね?」

 「確かにCM自体は3月までだから、それ過ぎれば盛り上がりも落ち着いてくんじゃないですか?」


うーん、と顎に手をやりながら、ミンホは眉間に皺を寄せる。

 「…立ち話もなんだから、車の中で話しようか?」



 「おお~!でっかい四駆っすね!
  流石、広告代理店務めの人は違うなぁ~」

 「毎月ローンで支払いしてるんだから、全然普通だよ」

 「俺も早く免許取りてぇえええ~!」

 「教習所行ってるんだっけ?」

 「はい。でも、今回の騒ぎでちょっと足踏み状態ですけど」

 「やっぱり、生活に支障出てるね。損害賠償モノかな」

 「いや、ミンホさんのせいじゃないですから!!
  そんなこと言わないでください」


会話に少しの間があって、ミンホはやっと本題に触れた。


 「お騒がせついでで聞いて欲しいんだけど…
  実はさ、keyちゃんとテミナに出演依頼があってね」

 「…またWEBCMですか?」

 「いや、今度は夏の間中流れる、テレビCM」

 「テレビ!?」

 「WEBだと割と視聴者が限定されるけど、流石にテレビだと伝達力あるよ。
  ネットも見ない老若男女の目にも触れるわけだし…」

 「それだと素人の見よう見まねっていう訳にはいきませんよね?」

keyの的を射た質問に、ミンホは苦笑する。


 「さすがkeyちゃん。鋭いなぁ~」

 「どこかとタレント契約するとか?」

 「もし二人がやりたいんならね? 無理にとは言わない。…言えないしね」

ミンホ以外の3人は、無言でお互いの目を合わせる。


 「2人ともこれから大学生になって、新しい生活が始まるでしょ?
  そんな大事な時に、ペース乱すような事、俺は勧めたくないからさ」

 「ミノさんは反対ですか?」

keyに聞かれ、一瞬返答に詰まる。


 「…反対というか、うーん…そうだな、諸手を挙げて賛成はしない。
  この世界を5年見て来たけど、やっぱりリスクの方が高いと思うから。
  どうしても本人がやりたいなら止めないけど…」

 「…この話、いつまでに返事すればいいの?」


助手席のテミンが見上げてきた。

 「長くは待てないね。夏のCMに取り掛かるなら、もう遅いくらい。
  ホント言うと、バンドの撮影の時にはもう話が来てたんだ」

 「…そうなんだ…」

そんな前から…と、テミンは一人ごちた。


 「…ミノさん、私、ここで返事するんでいいですか?」

突然、keyが毅然と言い切った。
ジョンが隣で声を掛ける。


 「せめて一晩考えるとか、しなくていいの?」

 「考えても多分、答えは一緒だと思うから…」

 「そっか…」

もう分かってるよ、と言うようなジョンヒョンの態度だった。


 「私はタレント業に興味が無いので、お断りします」

はっきりと発せられた言葉に、ミンホは頷くしかない。

 「うん。分かった」

 「あっ!テミンはテミンの考えでいいんだからね!
  私とは違うんだから、私の意見に引きずられちゃ駄目だよ!?」

テミンは助手席から、後部座席のkeyを振り返ってこくこくと頷いた。


やがて車は、keyとジョンヒョンの利用する駅に着いた。
二人はここから自転車に乗って家まで帰る。

 「ミノさん。多分テミン、一生懸命考えてると思うんで、気持ち尊重してあげてくださいね」

車を降りながら、keyはミンホに話し掛けた。


 「大丈夫だよ。分かってるから」

ミンホが笑顔で答えると、keyは安心したように微笑んだ。

 「送ってもらっちゃって、すみませんでした!」

 「ありがとうございましたっ!」

開けた窓から、テミンが二人に声を掛ける。

 「keyちゃん、ジョン!また来週ね!」

 「うん!何かあったらすぐ連絡してよ!」



走り去る車を、手を振って見送るkeyとジョンヒョン。
小さくなっていく車の後ろ姿を見ながら、ジョンが言った。

 「やっぱ、車っていいよなぁ~!
  ホテル代、かからなくていいじゃん!カーセック……」

そこまで言ったジョンヒョンのみぞおちに、ドスっとkeyのこぶしが撃ち込まれた。

 「アンタ、それ以上その口で汚い言葉言い続けたら…殴るよ!?」

ジョンの顔の横で低い声でつぶやくと、keyは彼を残して踵を返した。

 「…かはっっ…す、すみません。。。てか、もう殴ってんじゃん…」

ジョンヒョンは腹を押さえてその場に膝を折った。



 二人きりになった車内は、しばらく車の走行音しかしなかった。

テミンはリュックに付けた小さなクマのマスコットをいじっている。

と、ミンホが急に笑い出した。


 「ははっ…!keyちゃんてさ、テミナのもう一人のお母さんみたいだね」

 「え?なぁに?いきなり…」 

 「しっかりはっきりしててさ。テミナの事を一番に考えてくれて…
  いい友達がいて、ホントに良かったね」

 「…うん」


またしばらく沈黙が続いた後、テミンは決心して口を開いた。

 「オッパ…。私、やってみようかな、テレビCM」

 「…うん」

 「keyちゃんはね、昔っからファッションセンスがすごく良くって、
  大学も服飾系に行くって早くから決めてて…
  でも私は、特にやりたいことなくて、先生の薦める大学行って、
  このままなんとなく就職して…ってなってたかもしれない」

 「うん」

 「けど、ミスコン選ばれたり、スカウトの声かけられたり、
  人の事褒めないオンマが“顔だけはいいんだから”って言ってくれたり…
  ひょっとしたら、この見てくれが私の武器になるかもしれない…って思ったの」

 「うん」

 「オッパがあんまり良く思わないのは分かったけど…
  でも、私は自分を試してみたい。……ダメ、かな?」


ミンホは車をマンションの駐車場に滑り込ませて、エンジンを切った。
ハンドルを握ったまま目を瞑り、下を向いて少し考えた後、天井を向いて一呼吸する。


 「テミナが考えて出した結論なら、尊重する!
  …ただし、何か困った時は必ず俺に相談する事!
  あと、お母さんやkeyちゃんが心配するようなことは絶対しない事!
  …約束して?」

 「うん、分かった…」


祈るように覗き込むミンホの右腕に手を添えて、テミンは目を閉じて首を伸ばした。


ひとつになる影。


二人を待ち受けるものは、まだ正体を現してはいない―――。



  ☆つづく☆




…あれれ?裏まで行かなかったわ?

作者もビックリ!まだまだ続いちゃう勢い!?

何とか次でまとめたい!まとめられれば…まとめられるかな…(^▽^;)