ウルトラセブン アンドロイド0指令 | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン アンドロイド0指令

『ウルトラセブン』「アンドロイド0指令」
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テレビ トーキー 30分 カラー

放映日 1967年11月26日

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系


 

監修 円谷英二

 

プロデューサー 末安昌美

脚本 上原正三
 

撮影 逢沢譲

美術  成田亨

     岩崎致躬

照明  新井盛

音楽  冬木透

録音  松本好正

効果  金山実

編集  柳川義博

助監督 安藤達己

製作主任 高山篤

製作担当者 塚原正弘

 

 

光学撮影 中野稔

操演    中島徹郎

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社

 

協力   松屋

 

出演

 

中山昭二(キリヤマ隊長)


 

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)

 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

加藤土代子

坂上友之

加藤英作

 

植村謙二郎(おもちゃ爺さん)
小林夕岐子(アンドロイド少女ゼロワン)


上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 的場徹


 

監督 満田 禾斉

 

制作 円谷プロダクション

    TBS

 

森次浩司→森次晃嗣

菱見百合子→ひし美ゆり子

石井伊吉→毒蝮三太夫

満田禾斉→満田かずほ



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 ナレーター

  「地球防衛軍・ウルトラ警備隊。

 

   宇宙人からの侵略から地球を守る為、

   日夜パトロールを続けています。

  

   ある、風の強い夜のこと・・・」

 

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 ポインターに乗って、フルハシとソガは、パトロー

ルをしている。走行中のポインターの前に、金髪の

美女が飛び出し、慌てて二人は車を止める。

  

 

  金髪女性「ウルトラ警備隊の方ですね?」

  

 

二人が同意すると、

 

  

  金髪女性「あのう、モロボシ・ダン隊員では?」

 

 フルハシはソガに合図を送り、ニンマリ微笑ん

で、「そう、モロボシ・ダン」と偽ってニヤリと笑う。

 

 

  金髪女性「お会いしたかったんです」


 

 彼女は握手を求めて手を差し出す。喜んだフル

ハシが握手を受けると、女性の手から電気が流

れ、フルハシは感電し、激しく苦しみ、絶叫する。

金髪女性は逃走する。

  

 

  ソガ「フルハシ隊員、どうした!」

 

 ソガが苦しむフルハシを励ます。彼は女性との

握手の際にフルハシが握ったブローチを見つけ、

その中に赤いワッペンと不思議な文字があること

に着目する。


 ウルトラ警備隊で治療を受け、フルハシは救助さ

れる。キリヤマ隊長は危機的状況であったことを語

る。
 

 

  キリヤマ「あわやショック死寸前だったんだぞ」
 

 

  フルハシ「すみません。女だと思って油断してし

         まった」
 
 
  ダン「僕の身代わりでやられたようなもんだ。
     すみません」

 


  キリヤマ「それにしても問題は何故、モロボシ

        ・ダンを狙ったのか、だ」
 

 

 アマギはブローチの文字を解読し、「アンドロイド

0指令」という内容だ、と告げる。

 

  

  キリヤマ「アンドロイド0指令、一体何だろう?」

  

 

  ダン「隊長、僕にその女を追わせて下さい」

 

 

  ソガ「いや、俺が行く。あの顔は忘れんよ」

  

 

  キリヤマ「二人で追うんだ」

 


 晴れた日の団地では、子供達がおもちゃの

銃で遊んでいる。おもちゃとはいえ銃声は凄い

迫力だ。ポインターでダン・ソガが現れ、子供達

は喜んでかけよる。
 


  子供「カッコいいだろ?」

  

  ダン「凄くカッコいいよ」

 

 ダンはおもちゃを見て「まるで本物だ」と内心驚

き、子供達が、金髪美女の持ち物であったものと

同じ赤のワッペンを付けていることに驚く。子供の

一人が「おもちゃを買うと、おまけに付いてくるん

だ」と説明する。

 

 おもちゃを売ったお爺さんが、子供達を集め、自

慢のジェット機のおもちゃについて語っている。

  

   爺さん「さあ、このジェット機が空を飛ぶよ。わ

        しのおもちゃは買って損はないからね」

 

 ダンが、着陸したジェットを爺さんに届け、老人は礼

を言った後「さ、今日はおしまいにしようか」とリヤカ

ーを引いて立ち去る。

 

  おもちゃ爺さんが家に入るまでの道のりをダン・

ソガは尾行し、彼の近所の住民で赤ちゃんをあやし

ている女性に評判を尋ねる。

 

 

   女性「あ、おもちゃ爺さん、あそこに住み着いて
      一年くらいになるかしら、子供好きのいい

      爺さんですよ」

 

 爺さんは、ダンとソガの様子を観察し、


   「どうやら嗅ぎつけたらしいね。こっちも準備完了。

    今夜やる」


と、ある決意を固める。

 

 アマギの研究で、ワッペンはある種の周波のみを

受けつける受信機であることが判明する。それが何

故子供達の衣服につけられているのか?

 

  一方自宅でチェスを楽しんでいたおもちゃ爺さ

んは、チェックメイトの一手を打ち、タンスを開ける。

中には金髪美女の人形が・・・。

爺さんが手をかざすと、あの美女に変身した。彼女

はアンドロイド、名はゼロワン。

 

 

  爺さん「さあ、おいで。

       アンドロイド0指令、今夜発動する」
   
  
  金髪女性「はい」

 


  爺さん「モロボシ・ダンの動きを封じねばならん」



 


 深夜。

 

 

  ポインターで、ダン・ソガがパトロールして

いると、あの金髪美女が車の前に現れ、走り去

る。二人が全速力で追う。女性はある百貨店に

逃げ込む。二人も百貨店に入る。

 

  女性の声でアナウンスが流れる。


  「お客様にお知らせします。午前零時の時報

   と共にアンドロイド0指令が発令されます。あ

   と、しばらくお待ち下さい」
 
 金髪美女のマネキンがソガに倒れかかって、彼

を驚かす。
 
 靴音が響く。

 

 

  ソガ「0指令とは何だ!?答えろ!」

 

 おもちゃ爺さんと金髪美女アンドロイドゼロワンが現

れる。

 

  爺さん「お答えしよう。簡単に言ってまず、催眠周

      波を子供達に送って催眠状態にしておく。
      それから、あのおもちゃ、実は本物なんだ。
      機能は止めてあるがね」

 

  ダン「そのためにあのワッペンを!?」

 

  

  爺さん「さよう、あのワッペンは子供達を催眠状態

      において、おもちゃを実戦用の武器に切り替

      える機能がある。
      
      午前零時の時報と共に、子供達のおもちゃ

      が一斉に凶器になる。私のばらまいたおも

      ちゃな。催眠状態に置かれた子供達は私の

      思い通りに操ることが出来る。
 
      子供達の持つ最新式の武器は地球上のい

      かなる武器よりも強力だ。まして地球の大人

      達は、子供達に武器を向けないだろう。
      
      だから、子供達は何の苦労もなく、平和的に
      東京を、日本を、いや、全世界をたちまちに
      占領してしまうだろう」

  


 

   ソガ「馬鹿馬鹿しい、おもちゃが本物になってたまる
       か!」
  


   爺さん「では、納得させてあげよう」


 

 爺さんが手をかざすと、おもちゃの戦車や戦闘機がダン

・ソガに襲い掛かり、発砲する。二人は屋上に向って逃げ

る。


 ソガは負傷し、ダンはウルトラ警備隊本部に救援

を依頼する。
  
 

  ダン「おもちゃの戦闘機に襲撃されたんです」

  

  アマギ「もっと真面目にやれ」

 

 

 ダンは、冗談ではないことを力説し、キリヤマが詳しい

事情説明を求める。ダンはおもちゃ爺さんの恐ろしい企

みである「アンドロイド0指令」の内実を説明し、それが午

前零時に発令されることを告げ、緊迫した状況にあるこ

とを説明する。

 

 

 時計は23時45分を指している。

 

  二人は屋上のドアが破られようとしている音を聞く。ド

アはこじ開けられ、おもちゃ爺さんと金髪美女が現われ

た。

 

 ダンとソガに危険が迫る。

 
 ダンはセブンに変身したい。だが、ソガ隊員が居て変身し

たら、正体を知られてしまう。 

 

  「ソガ隊員、すまん」と告げて、ダンはソガを当身で気

絶させ、ウルトラアイを取り出す。

 
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 ダン「デュワ」


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 ダンは、セブンに変身する。


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 セブンの怖さを知る爺さんとアンドロイド少女は逃げる。

だが、セブンは、素速く二人の後を追う。

 

  爺さん「あの時、モロボシさえ殺しておけば・・・」

  

  ゼロワン「もう、何もかもおしまいです」


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 セブンは、エメリウム光線を放って、アンドロイド少女

ゼロワンを撃つ。ゼロワンは絶命し、マネキンに戻って

倒れ、ガタリと肉体は崩れ去る。

 

 爺さんは「あ、あ」と恐れの声を発しつつ、チブル星人

としての正体を現す。


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セブンは、チブルにも、エメリウム光線を浴びせる。
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 光線によって致命傷を受けたチブルは、仰向けに

倒れこみ、その肉体は溶けはじめる。


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 セブンがダンに戻ると、キリヤマ隊長・フルハシ

・アマギが気が付いたソガと共に駆けつけた。

 


 時計は、平和のうちに午前零時を指していた。

 

☆☆「子供達におもちゃを与え、戦争をさせる」
    という恐るべき企てを為すひと☆☆

 

 上原正三脚本、満田かずほ監督による本第九話

が、教えてくれている事柄は、一体何であろうか?

 

 冒頭の場面の風の強い夜の闇の深さ。ポインター

の前に現れる金髪の美少女。魅力的な少女に惑わ

されて、握手して危機に陥るフルハシ。

 

 序盤のミステリアスな雰囲気の怖さは、強烈で、傑

作揃いの『ウルトラセブン』の中でも、本第九話は特に

凄い。神秘性や幻想的空気等、上原・満田コラボが生

み出す世界の魅力は圧巻である。

 

 アンドロイド少女ゼロワンを鮮やかに演じた小林夕

岐子の名演は歴史的であり、視聴した者に永遠性を

感じさせるものがある。美貌は演技において冷たさを

漂わせ、無機質な台詞回しは、アンドロイドの機械的

なムードを鮮明に描いた。

 

 小林夕岐子は昭和二十一年(1946年)十月六日

東京生まれ。父は俳優水島道太郎、母は女優山鳩

くるみである。

 

 2013年に洋泉社から刊行された『ウルトラセブン 

研究読本』のインタビューで小林はゼロワンへの思い

を語ってくれている。

 

  とても印象的で大切な役柄です。その前に何本か

  映画やテレビに出させていただいたんですけれども、

  「アンドロイド0指令」は、私にとっては、一番最初に

  いただいた本格的なお仕事ですね。

  (『ウルトラセブン 研究読本』248頁)

 

 小林の神秘的で優雅な美貌と知的な雰囲気が、ヒロ

インゼロを不滅のキャラクターとして輝かせた。

 

 ゼロワン役は三面写真や石膏の顔の型取りなど大変

な撮影だったそうである。

 

  石膏を顔に塗られ、呼吸の為に、口と鼻にストローが

  通されました。型取り中は顔がずいぶん熱く感じられ

  ました。初めての経験なので、「こんなことをするの!

  ?」ってちょとドキドキしましたね。石膏取りされた自分

  の人形を現場で見て、「わぁ、似てるわ~!」と思いま

  したが、後の撮影で壊されるのがとても残念でした。

 (『ウルトラセブン 研究読本』248頁)


 

 小林自身も、セブンのエメリウム光線で、ゼロワンとその

人形が無残に壊されていくことに悲しみを語っている。

 

 第九話の特徴の一つは、ゼロワンの幻想的な魅力だろう。

 

 可愛い笑顔でお心を軽く掴んで握手で電流を送って殺害

しようとする美しき刺客である。

 

 デパートでソガの背後からゼロワンの手が近づき、振り返

ると人形に戻っているシーンに、満田禾斉監督のサスペンス

演出の輝きがある。

 

 あのシーンは、ソガの心象風景の歩みの幻影だったのか、

正体を見破られそうになったゼロワンが咄嗟に人形に変身

したのか?

 

 どちらが正解かはわからないし、どちらとも読めるところに

上原脚本・満田演出の魅力があると自分は思う。

  

 

 
 おもちゃ爺さんを熱演した名優・植村謙二郎(大正三年 1914

年 一月三日-昭和五十四年1979年 四月三日)の重厚な名演

も忘れられない。


 

 爺さんはニコニコと温厚な態度で子供達の心を捉えてしまう。お

もちゃとワッペンをくれて、楽しい戦争ごっこの快感をもたらしてくれ

るおもちゃ爺さんは子供たちにとって大切な存在だ。子供達を催眠

状態に置いて操って戦争をさせるという恐るべき計画をじっくりと遂

行させようとする爺さんの老獪さを、植村は重く深く演じきった。

 

 植村は六代目尾上菊五郎の日本俳優学校において演技を学ん

だ。

 

 俳優として活動していたが、第二次世界大戦では徴兵され、大変

な苦労をされた。

 

 戦後復員され、日本映画において重厚な名演を発表された。山本

薩夫監督『ペン偽らず 暴力の街』や成瀬巳喜男監督『稲妻』の名演

が特に強い印象を与えてくれる。

 

 本第九話「アンドロイド0指令」の撮影当時、植村は五十三歳の若

さだが、老獪で知恵者のおもちゃ爺さんのしたたかな個性を魅力豊

かに渋く勤めている。

 

 戦前生まれの役者の底力は深く大きいが、戦場で苦労された植村

謙二郎は、少女ゼロワンや子供達を操って戦争体制を築き、権力の

拡大を狙う爺さん役の探求において、凄まじい芸力を明かされ、視聴

者の心を震撼させ、衝撃を与えてくれた。

 

 沖縄で「チブル」は頭脳の意味である。

 

 頭脳明晰で謀略・知略に富み智謀戦の達人がチブ

ル星人の特徴である。

 

 おもちゃ爺さんの風格。子供達を見守る優しい眼差し。

温厚そうな笑顔。

 

 穏やかで優しい一面はチブル星人の怖さを際立た

せている。

 

 

 知略に富んでいるが若き日のような体力・戦闘力は

ない。

 

 おもちゃで子供達に戦争ごっこの楽しさを覚えさせ、

催眠状況に置くという老獪な戦術に出る。

 

 いつの時代、どこの国でも、リーダーは老獪で、若者

達を洗脳・教育して、戦場へと送りだして行く。

 

 チブル星人が子供達を見ている眼差しは利用価値だ

けでなく愛情もあったのかもしれない。

 

 だが最大の目的は意のままに操れる兵士に対する

愛情だ。

 

 老いた肉体なので、バトルを為すのは厳しいが、子供

達に武器を持たせて大人たちを威嚇して従属させようと

いう戦法である。

 

 上原正三は昭和十二年(1937年)二月六日、沖縄県に

生まれた。金城哲夫は同郷の友人である。

 

 「北海道から沖縄まで遺骨を収集団としてやってきた

母親が息子の死に様を戦友たちに聞いてまわるという話」

(『語れ!ウルトラマン』2012年 KKベストセラーズ)である

『収骨』で芸術祭第一公募脚本に入選する。

 

 円谷一は上原の脚本を演出することを確約し、円谷に

おける脚本活動が始まる。

 

 盟友金城哲夫の視点については、「反戦とかそういう次元

にはいなくて、金星あたりに」あったと前掲書『語れ!ウルトラ

マン』のインタビューで語り、金城の代表作第42話「ノンマルト

の使者」次のように解説している。

 

  金城はね、ことさらに戦争のことを口にしない男でしたよ。

  それをいかにも反戦の旗手みたいに採り上げる傾向は、

  僕は嫌ですね。(中略)

  「ノンマルト」で反戦を語るのは、金城に対して失礼だと思う

  んです。金城の書くものは、僕なんかが書く反戦とは全然

  次元が違いますよ。

  (19頁)

 

 

 

 上原の解説によると、金城哲夫の視座は「宇宙」にあった。大

宇宙の歴史という永遠の時の流れにおいて、「自己」のいのちを

宝として生きる。

 

 「いのち」が金城哲夫脚本のテーマであったことは確実である

と思われる。

 

 先に引用したインタビューの言葉の文意は、上原が金城脚本

を語ったことが本流にある訳だが、「金城の書くものは、僕なんか

が書く反戦とは全然次元が違います」という一節に注目したい。

 

 この言葉は、「円谷特撮・ウルトラシリーズ」で「反戦」の脚本

を明かしたのは、広く宇宙を見つめながら『命』を探求した金城

哲夫じゃなくて、「僕」が「書いた」という事柄の確かめが背景に

あるとも思う。

 

 上原正三脚本も、反戦平和を声高に叫んだり、視聴者の子

供達を教え子扱いして教育しようというものではない。

 

 本作においても、智恵ある老人が若き美女の部下を刺客と

して派遣して警備隊隊員を襲撃し、子供達を幻惑させ意のま

まに操って武器を持たせて大人たちを脅かして、地球を狙

うという恐るべき「チブル」(頭脳)の謀略の物語である。

 

  『ウルトラセブン研究読本』(2012年、洋泉社)のインタビュ

ーによると、上原正三は本作の脚本について、「予算のかか

らないものを書けよ」と言われたことを確認している。

 

 政治的メッセージや体制批判とも質を異にしている。

 

 確かに放映当時はベトナム戦争が激化していて、沢山の人々

が亡くなっていた。

 

 日本国内においても学生運動が熱くなっていた。

 

 戦後二十二年を経て、沖縄・日本・アジア・世界の「戦争と平

和」の問題が人々の心を問うていたとは思うし、テレビ・映画・

演劇・音楽・文学もこの深刻な問題と関わりあっていたことを

全面的に否定するつもりはない。

 

 だが、「アンドロイド0指令」を見直すと、「戦争反対」と声高に

叫ぶ姿勢とは違っている。

 

 おもちゃ爺さんの謀略と作戦により、子供達が武器を取り、大人

達を威嚇・委縮させることが計画されている。

 

 武器のおもちゃで遊んでいた子供達が、「戦争ごっこ」の楽しさ

から、本物の「戦争」の兵士にされていく過程に震えが走る。

 

 ドラマの中では、おもちゃ爺さんの心象風景として、爺さんの顔

と行進する子供達の映像が映る。

 

 セブンの活躍で、おもちゃ爺さんことチブル星人は倒され、子供

達が兵士にされることは無いのだが、それが逆説的に「子供達が

兵士にされていたら」という問いを熱く厳しく視聴者の心に訴えか

けるものともなっている。

 

 おもちゃ爺さんの言葉を聞いていると、子供達に武器を持たせ、

大人たちを威嚇すれば、「大人たちは子供達を討てないのから降

伏するだろう」という読みを持っていることが聞き取れる。

 

 おもちゃ爺さんはセロワンにダン暗殺を命じたが、子供達に大人

達の殺傷をさせることまで狙ってはいない。あくまでも武器で大人

たちを震撼させ、従属・臣従せしめることが目的なのだ。

 

 地球人を威嚇することは、武器を持った子供達にさせることは

成り立つであろうが、地球掌握における地球人との交渉は、やはり

世古に長けた自身が為さねばならぬという課題と思惑をチブル星

人は考察していたのだ。

 

  セブンがゼロワンをエメリウム光線で倒すクライマックスで、ゼ

ロワンの肉体がマネキンに戻って崩れて行く場面には哀れさも感じ

させ、「無常」を伝えるものとなっている。

 

 「ゼロワンは助けてあげて欲しかった」という思いを抑えられない。

 

 おもちゃ爺さんが追い詰められて、「あ、あ」と声を出してチブル星

人に変身するシーンに、満田禾斉演出の鋭さがあると思う。

 

 追い詰められて、チブル星人は正体を現す。

 

 強敵セブンに対して笑っているようにも見える。

 

 危機に在り、苦しく困っている時にや悲しみを感じている時には、意

外に表情に「笑い」が出てくることを想起する。

 

 老獪で策略家・謀略家のチブル星人だが、肉体的には老人であり、

バトルでは屈強のセブンの敵ではなかった。

 

 エメリウム光線を受けて倒れ、溶けていく大詰には淋しさと切なさが

募る

  恐ろしいゼロ指令の陰謀は防ぐことが成り立った。

 

  街は平和のうちに眠りにつく。

 

  子供達が戦争の兵士にされることも防げ、安心して眠ってもらうこ

 とが成りたった。

 

 上原正三・満田禾斉の両師がこの第九話で平和の尊さを説き明かさ

れたことは確かだと思う。

 

 ウルトラセブンの勇気に学んで、平和のうちに眠りがあることに感謝し

たい。

 

 第九話「アンドロイド0指令」が教えてくれる平和の尊さを毎日の生活の

中で確かめ学んでいく。

 

 そのことを自分の課題にしたい。

 

 平和は一人一人の努力と熱意によって紡がれ、成り立っていくもの

だ。

 

 その平和希求の道を絶やしてはならぬことを、モロボシ・ダンの勇気

が教えてくれている。

                      

 

                                    文中敬称略

 


 

  ☆2007年11月26日に発表した記事を、2012年11月26日・2013年6

月10日に大幅に加筆・改訂しました☆



 

  参考資料

  『ウルトラセブン』 DVD.VOL3

 

  参考文献

  『語れ!ウルトラマン』 2012年 KKベストセラーズ

  『ウルトラセブン 研究読本』 2012年 洋泉社

 

                              

                                        合掌


 

                                  南無阿弥陀仏


 

                                       セブン