カブト虫捕り4
PM9:30、今日もカブトを捕りに行った。
ポイントの森に近づく前にいるかもしれない先客にさとられないように自転車のライトを消す。
そっと近づく。「ん?」ライトが見える。それも緑のライト。
誰かいる。オレの流儀。“他の人のカブト捕りのジャマは絶対しない”
オレはそのまま次のポイントへ行く。次のポイント50m手前で自転車のライトを消す。今度は2台の自転車のシルエットが見える。誰かいる。オレはゆっくりと自転車を進め、ただの通行人のふりをする。
父親と男の子の2人連れだ。会話を聞く。
「今日はいないねぇ」父親の声だ。このポイントを知っているとはかなりの強敵と見た。しかも「今日は…」の「は」!
今日はいないということは、昨日はいたということか。おとといか…。捕られた…。まあ、許そう。
親父と息子のカブト捕り、オレは広~~~~~~い心でやさしく見守る男だった。
よし、最初のポイントに戻るか。すでに20分は経っている。もう先客はいないだろう。
“げっ!!”まだいる。緑のライト、しつこい。まだねばってやがる。これでは樹液の出てる木に近づけない。
ライトを消した自転車にまたがり、待つこと5分。まだ緑のライトはいる。なかなかの強敵と見た。
蚊に刺されかゆい。しかし“人のジャマはしない”というオレの流儀がある。
10分経った。かゆいよ~~~。
緑のライト持ってるやつ何者じゃー。
15分経った。
オレはついに決断した。ここは無理にあの緑のライト野郎と争うより“勇気ある撤退”だ。
オレはポイントを後にした。
オレは心の中で思った。
こういうのを“試合に負けて勝負に勝った”というのだと。
オレはオレの流儀“人がカブト虫捕りに熱中してるのを決してジャマしない”という鉄則を守り通したのだ。
オレは勝った。自分に勝った。
カブト虫一匹も捕れなかったが、オレは満足だった。
しかしかゆい・・・かゆいよ~~~~~