遠い日
ほんの些細なひとことが、後になって静かに確実に、胸の中で渦巻き始める。
それがいいとか悪いとか、好きとか嫌いとか、正しいとか過ちとか、そういう判断を強いられているわけではなく、ただ、ぽつんとそこに小さな渦巻きができる。その言葉がその存在を僅かにけれど画然と主張している。
これはただの記憶。これはただの記録。これはただの私のひとりごと。
気がつけばあの日から何一つ、変わってはいなかった。
c'est époque la
少しだけ、唇をかみ締めたい気分を振り払う。
「私はそれを二三のひたむきな読者に知らせたいだけなのです。」(太宰治『川端康成へ』)