いいじゃありませんかあたしでも
「いいじゃありませんか男なら 何をくよくよするもんか
真っ赤なフンドシ引き締めて 行くぞこの道どこまでも」
最近この歌をよく思い出すのよね。
父が死んだあと、姉が言ったの。
「『俺の人生もこんなもんかなあ』って、こないだ言ってたの聴いて、なんだかかわいそうな気がしちゃった・・・・・」
あたしはそれを聴いて不思議に思った。
なんで?
なんで、「かわいそう」なん?
「こんなもん」っていう言葉がそう思わせたの?
って、聴けるような状況じゃなかったから、そのときは尋ねなかった。だから、今もってその疑問は解決していない。だって、後からそんなこと蒸し返しても、あの時はまだ、父親が死んで間もないときで、姉の気持ちも動揺が収まってなかったために出た他意はないものだったかもしれないもの。
だから、あたしはやっぱり、賛同できないままでいる。実際父が発言したその場面に同席していたら、言葉だけでない、その前後の話や父の態度、様子で、姉と同じように受け止めたのかもしれないけど、だから、やっぱり、あたしは姉と同じ意見にはなれない。
「こんなもん」
これでもよかった、これでも、まあいいんだ、ってある意味満足してる部分もあったように、あたしは感じる。それは、自分の親不孝を棚にあげた、あたしに都合のいい解釈なのかもしれないけど。
死人に口なし。
最早確かめる術も手立てもない。ただ、できることは、しなければならないことは、したいことは、「こんなもん」が、「こんなつまらないもの」ではなく、「このくらいならまあまあよし」だったのでは、と姉にも思わせてあげられる程度に、あたしがしっかりせなあかんいうことやな。
いいじゃありませんか、女でも。
あたしはあたしで、このままなんとかやっていきたい。よれよれのぼろぼろで、みっともなくても恥ずかしくても、とにかく、生きて生きて生きる。あたしの人生を生きる。批判するなら、否定するなら、それもそれぞれの人の判断。甘受いたしましょう。なんといわれようと、あたしは誰かにはなれないし、なるつもりもないし、今までのあたしがあって今のあたしがあるのはよくも悪くも厳然たる事実。
いいじゃありませんか、あたしでも。
かわいそうなんかじゃないんだよ、あたし。あたしはあたしで決めた時間をあたしの権利として使っているんだから。誰かに何かを言われてそれを考慮することは勿論あるけど、決定はあたしの意志でしてるんだからさ。あたしは、これでも、結構、いや、かなり、仕合せなんだけどな。
あなたの思う仕合せと合致しないとしてもさ。
真っ赤な口紅塗り上げて、行くわよ、この道、どこまでも♪
でも、だから、心配させてごめんね。
そしてそれよりもっと、ありがとう。
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