米倉涼子さんのブロードウェイミュージカル「シカゴ」 | 雨音のぶろぐ

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「What I say that I will do I back up with action !」
どうも、どうも~!
危うく「ブログ書く書く詐欺」をはたらくところだった雨音で~す。

さて米倉涼子さんが本場NYのブロードウェイミュージカル
「シカゴ」に主演したのは、2012年 7/10~7/16までの6公演。
主役のロキシー・ハート役として、日本人としては実に54年ぶりのブロードウェイの舞台だったそう。
(それ以前は1958年のナンシー梅木さんという方だったらしいって、誰って?)

さて、「DRESS」11月号は、NY特集。
「米倉涼子さんのブロードウェイへの挑戦」
回想録として再び取り上げられています。


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米倉涼子さんは 2008年 - 2010 日本版シカゴに出演。
日本のマスコミの扱いは、どうやらその時のミュージカル女優としての実力をかわれて抜擢、
本場ブロードウェイに乞われて出演をはたしたような扱いだったと記憶しています。
え~、本場ブロードウェイって、そんなに人材不足だったんですか?



さて、ミュージカルを見るのが大好きな私ですが、その中でも特に好きな演目に
A Chorus Line(コーラスライン)があります。
初演の1975年から1990年まで「CATS」にその記録を抜かれるまでロングラン記録を達成していた、
「これぞ、ザ・ブロードウェイ」、これぞ、「ザ・ミュージカル」のような作品です。
日本でも劇団四季による公演が行われていたのでご存知の方も多いでしょう。

ミュージカル「コーラスライン」とは
ブロードウェイミュージカルに応募してくるダンサーの
オーディションの厳しい現実を描いたストーリーです。
たった8人のバックダンサーとしての仕事、舞台の前にたつことのできない脇役にもかかわらず、
その「役」の、「ポジションのひとつ」を手に入れる為に、
すべてを、人生をもかけて挑もうとするダンサーたちの情熱を描き、
ブロードウェイスターを夢見る若きダンサーたちの、
(オーディションで受かった人も、受からなかった人も)
それぞれに人間として主役級の物語があり、
それがブロードウェイの最大の魅力、つまり、踊りがうまい、歌がうまい、それはあたり前。
それ以上の、プラスαの演技力、パフォーミングアート(舞台芸術)のしての芸術性が
「ブロードウェイ」の素晴らしさであると讃えています。



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コーラスラインのポジションとは主役級の後ろで踊る「その他大勢」のダンサー達。
現実のブロードウェイの世界でもその一つのポジションをめぐって
何百人とオーディションに集まってくることでしょう。
そしてそのブロードウェイのオーディションの為に世界中の若者がNYに集まってきて
「いつかブロードウェイの舞台に」と夢見てNYで頑張っているのです。



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さて、米倉涼子さんがロキシー・ハートなら、
もう一人の「CHICAGO」の主役
Velma Kelly ヴェルマ役のAMRA-FAYE WRIGHT アムラ・フェイ・ライト(写真右)
経歴について少しふれてみましょう。
1960年、サウスアフリカ生まれのアムラはダンサーとしてキャリアをつんだ後、
ヨハネスブルグで行われたミュージカル「コーラスライン」のシーラ役を演じ、
その後ミュージカルアクトレスとして活躍。
彼女と「CHICAGO」の関わりはすでに10年以上。
ヴェルマ・ケリー役を、ロンドン、ヨーロッパ、ニューヨークと
2001年から演じ続けている「CHICAGO」の大ベテランなのです。
「Velma Kelly 」といえば「AMRA-FAYE WRIGHT」と言われるぐらいのあたり役。
舞台の上で監獄のボス、ヴェルマは歌もダンスも貫禄たっぷりで見せてくれます。
キャリアに裏付けされた演技は、観客を安心してストーリーに引き込ませてくれる余裕さえ感じられ
長年舞台に立ってきた「人としての生き様」がヴェルマというキャストを作っているんだなと思わせてくれます。
アムラ・フェイ・ライトという人はヴェルマという役を完全に食ってしまっています。



米倉涼子さんのブロードウェイ公演に話しを戻すと
日本のマスコミでは「現地のマスコミも絶賛」などと書かれていましたが、
それなら、それなりにリビュー(評価)が何処かで書かれてると思い
検索してみましたが、
「RYOKO YONEKURA 、日本のアクトレスが54年ぶりにブロードウェイの舞台に。」
の新聞記事はいくつかあるのですが、
その舞台の評価といったものはまったく探せない。
英語検索、探しても探しても、
「米倉涼子のロキシー・ハートの演技が素晴らしい」
などと書かれた英語記事には残念ながら辿り着くことができませんでした。

どういう事なのか。
つまりは、評価の対称にすらなってない。
つまりブロードウェイのゲスト的な捉え方しかされてない証拠だと思います。
ブロードウェイの評価は日本の女優がたかだか6日公演を行ったからって、
採点されるような立ち位置ではまったくないということです。
絶賛したのは現地のマスコミではなく日本方ではないかといえると思います。


さて、ただいまNYで行われている「CHICAGO」のキャストですが、
Velma Kelly は、もちろん、アムラ・フェイ・ライトが
Roxie Hart は、メキシコ生まれのBIANCA MARROQUIN ビアンカ・マロキィーンが演じています。


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ビアンカ・マロキィーンは、例えば「日本版シカゴ」のように、
メキシコのプロダクションが行っているブロードウェイミュージカルに数々出演してきた本格派。
「シカゴ」「美女と野獣」「レント」「オパラ座の怪人」「サウンドオブミュージック」など
メキシカンブロードウェイの大スターです。
小さな体ながら迫力の歌声とキレのあるダンスが彼女の魅力ですが、
それにもまして彼女の演技力が素晴らしいのです。

有名になりたいロキシー・ハートはナイトクラブの常連客で不倫相手の恋人の
自分を売り込んでスターにしてくれるという噓に気づき逆上。
不倫相手を射殺し逮捕され監獄へ入れられてしまう。
そんなしたたかな悪女というイメージのロキシーなのですが
実はロキシーという役はダメダメのまったく憎めないキャラで、
ビアンカ・マロキィーンのロキシーはそんなドジのくせに鼻っ柱が強い、そうかと思うと情にもろい
とってもとっても魅力的なロキシー・ハートを見せてくれます。
BIANCA MARROQUIN、舞台の為に生まれてきたような素晴らしい女優さんです。



実はロキシー・ハートという役柄は
今までも色んな方が演じておられ、言ってみれば「CHICAGO」のなかでは
ゲストキャストを迎える為のポジションと言ってもよいと思います。
アメリカでは誰でも知っているスターがロキシーハート役をやっています。
Ashlee Simpson、Kara DioGuardi、日本の方もご存知といえば
ブルック・シールズや、もとビオンセがいた Destiny's ChildだったMichelle Williamsなど。
有名人だからブロードウェイの評判も良いかというと、そうでもなく、
ダンスは良いけど歌はどうかなどと、いがいにも厳しい評価なのがブロードウェイの現実なのです。



先にも言いましたがNYのブロードウェイの舞台を目指して
世界中からたくさんの人がチャレンジにやってきます。
今、行われてるブロードウェイの「CHICAGO」、
ロキシーはメキシコ生まれのビアンカが、ヴェルマはサウスアフリカ生まれのアムラが演じています。
きっと舞台の上で踊ってる人以外にも、オーケストラ、舞台装置からプロダクションまで
「CHICAGO」に関わっている人すべての中にはたくさんの外国籍の人がいることでしょう。
米倉涼子が日本人だとか、54年ぶりにブロードウェイの舞台に日本人がたつとか、
そんなことはまったくどうでもいいこと。
つまり、ブロードウェイとは、実力の世界。国籍は関係ないのです。



日本側から見ると、米倉涼子さんがブロードウェイにたったことが重要なことであって、
「米倉涼子がブロードウェイの舞台へ」「現地メディアも絶賛」は
最初から作られていた筋書きのように思います。
ブロードウェイが終ったすぐその後、アムラ・フェイ・ライトを引き連れて
日本で凱旋公演が決まっていましたし.....

ブロードウェイに向けて歌と踊りのレッスン、英語の勉強を続けてきました。
そんなことはあたり前のことじゃないですか。
演じてお金をいただくわけですから。
ストリートパフォーマーだって例えばジャグリングなどものすごい時間を練習につぎ込んで
プロの域にまで達するわけですから。

私が姉と二人で見た「CHICAGO」は「TKTS」で50%引きで買ったオーケストラシートです。
チケット2枚約150㌦。定価なら300㌦の席です。
お芝居を見る時は初日と最終日が良いといわれます。
理由はもちろん役者さんが一生懸命演技をなさるので素晴らしい舞台を体験できるから。
いつも劇場に足を運んでいる方々というのはそれだけ目が超えているので
評価も厳しくなるわけですね。
さてそんな演劇通がたまたま米倉涼子がロキシー・ハートをやる日だとしたら
(現実にはCASTが誰か調べてからチケットを買うわけで、日本からのゲストが主役をやるとしたら、よほどの日本オタクいがいの人は他の日にしておくことでしょう。)
やはりハズレだと思うのではないかと思いますね。
少なくとも「CHICAGO」のミュージカルを見に来た人はがっかりされるのではないでしょうか。
日本人の方は米倉涼子さんのロキシー・ハートを見に来られたわけですからよいとして。

ところでロサンゼルスでも時々日本のアーテイストさんがコンサートやライブをおこなっていますが
たいがいは日本のコミュニティー新聞や日本語放送のチャンネルを通じて
チケットの宣伝が行われています。
例をあげえると、赤西 J←ががんたぶん、まるわかり
「アメリカ公演のチケット完売!」「アメリカツァー大成功!」
などと言われていても日本人のファン以外は少数のアメリカの日本オタクだったり
それ以外は招待客の外人さんや、モデルやタレントの仕込みだったり。
(インタビューやカメラに抜かれるのはほぼこういった人達)
ほとんど日本のマスコミで伝えられるものとは違っている事がままあったりするのです。

私は米倉涼子さんのチケットも、アメリカの日系のコミュニティーで大々的に広告をうたれて
「今まで『CHICAGO』は見たことがないけど、この機会に出かけて見ようかしら」
という人が一人でも多くいらっしゃったのなら、
それはそれで米倉さんのブロードウェイ公演は成功を収めたということになるのではと思います。
米倉さんがブロードウェイで主役を務められ、
日本のメディアが取材にNYにやってきて「絶賛」
その後日本に凱旋公演で戻られてまた「注目」ということでしたら
「NYの舞台は大成功」という事でしょう。

ですが、ブロードウェイ側から見たらあくまで米倉涼子のロキシー・ハートはゲスト出演。
ミュージカル「CHICAGO 」の演技がどうとかの前に
「米倉涼子が歌って踊ってる」その域を出ていない。
ダンサーの人達の力を借り、特にアムラ姐さんの胸を借りて
やっとステージに立たせてもらっている。
ロキシーハートとしての演技がどうとかいう評価の対象のスタートラインには
残念ながら立っていなかったと思います。




米倉涼子さんの6日間のブロードウェイを見ていない雨音が酷評するのもなんですが
世界の舞台とは「一生懸命頑張った」だけでは評価されない厳しい世界。
最高のそのまたほんの一握りの超最高だけにスポットライトがあたる過酷な世界。
だからこその芸術といえるだろうし、観客に感動を与えられる素晴らしい世界でもあるわけですが。

米倉涼子さんも元々ミュージカルスターではないわけで
その後もテレビや雑誌で大活躍です。
たぶん毎日の仕事のスケジュールで一杯々の日々でしょう。
「CHICAGO」主演が決まった時、「夢がかなった気分!」とおっしゃられたとか。
ブロードウェイに立つ事が米倉さんの夢だったとしたら、
更にその上のまた上の夢を求めて、
格好いい米倉さんが自分でつかんだロキシー・ハートを
再びブロードウェイで演じて貰いたいと思っています。
がんばってください。


米倉涼子さんの歌う「ロキシー」
BIANCA MARROQUINが歌う「ロキシー」
聞き比べて見てください。
同じ「CHICAGO」の舞台ですが
まったく別ものです。