アメリカで最近よく「グルテンフリー」の言葉を良く聞きます。
私がよく行くマーケットには「グルテンフリー」コーナーなるものがあり
ベーカリーにはグルテンフリーの表示があるものがたくさん並んでいます。
アメリカのヘルストレンドになってしまった感のある「グルテンフリー」
最近日本でもエリカ・アンギャルさんが紹介され話題になりつつあるようですが、
あまりにもこう「グルテンフリー」を売りにしている商品を目にするようになると、
まずは「グルテンフリー」ってなに?って話しです。
「グルテン」とは、小麦、大麦、ライ麦・などに含まれるたんぱく質で、
例えば、小麦粉を水でこねると粘り気が出ます。その正体がグルテンです。
うどんなどの麺類のコシやピザのもちもち感もグルテンによるものです。
小麦粉は強力粉、中力粉、薄力粉に分けられてますが、
薄力粉はグルテンの含有量が少なく粉に粘り気を必要としない天ぷらなどに、
反対に粘り気が必要なパンやピザ、うどんなどはグルテン含有量の最もおおい強力粉を使うわけです。
日本語で「ダイエット」というと必ず「減量」という意味と取られがちですが、
元々の「ダイエット」とは食事法という意味であり、
アメリカで言われる「グルテンフリーダイエット」とは「グルテンを摂取しない食事法」という意味で、必ずしもグルテンを摂取しないと痩せるという事ではありません。
グルテンフリーダイエット は元々は病気や麦アレルギーの食事療法でした。
グルテンを食べては行けない病気に celiac disease(セリアック病)があります。
セリアック病とはグルテンに免疫反応を起こし、小腸の内膜にダメージを与える疾患です。
その結果、慢性的な下痢や痛み、ガスっぽいなど、ひいては体重低下や倦怠感、皮膚のかゆみ、湿疹、貧血や骨粗鬆症なども引き起こします。
治療法としては本来病原菌や異物をアタックする役割のある免疫系が、グルテンに対して中毒反応を起こすわけですから、ひたすらグルテンを食べない食事法を続けるしか他に方法がありません。
アメリカでの患者の数はFDAによると、全米で300万人ほど、
人口の1%、つまり、100人に一人位のわりでセリアック病と言われていますが
アジア人の発症は西洋と比べてわりと低くまれな病気だと考えられているようです。
元々昔からセリアック病の人の為の食事療法だった「グルテンフリーダイエット」が
なぜ、アメリカで大流行してるのでしょうか?
1年間にアメリカで消費されたグルテンフリーの食品の合計は $4.4 ビリオンにも登ります。
なぜ、グルテンフリーダイエットが一般的に広がっているのか色々理由はあると思いますが、
おおきく二つの理由があげられると思います。
一つは、セレブの間でグルテンフリーダイエットが流行したこと。
ビクトリア・ベッカムやグウィネス・パルトロー 、マイリー・サイラス(セリアック病であるらしい)
などが広告塔になってグルテンフリーの食事をして減量に成功したとコメントしてる事から
一般にもセレブのダイエット法として広がったようです。
もう一つの理由は、本来は減量を目的としたものではなく、
セリアック病の人のための治療食だった、グルテンフリーダイエットですが、
ハリウッドスターがグルテンフリーの食事を口にし始めると同時に
世界的巨大食品企業が次々グルテンフリーの食品を発売し始めたからです。
次第に、グルテンフリー食品を食べると痩せる、健康的といった噂がまことしやかに囁かれ、
それに伴いまるでグルテン自体がさも体に悪い影響を与えているような擦込みを
消費者に与えているような気がしてなりません。
そこはエコノミックアニマルのアメリカの食品ビジネス業界、
セレブダイエットの噂が先か、食品の販売が先か、同時でしょと思うのですが
(全てマーケティングとしてセットで作られてる)
グルテンフリー食品は普通のものと比べて割高なのは事実です。
「グルテンフリー」食品は今やアメリカの一大産業となっていて、
先にも書きましたが
年間 $4.4 ビリオンのビックマーケットです。
グルテンを使用している主な食品は、
小麦、大麦、ライ麦などから作られてるほとんどの食品、
パン、パスタ、うどん、ケーキ等です。
反対にグルテンを使用していない代表的食品は、コメ、つまりご飯です。
アメリカではグルテンフリーの小麦粉、パンケーキの素、クラッカー、ビスケットなどの菓子、
パンやカップケーキ、クッキーなどのベイキングプロダクツ、朝食のコーンフレークやバー、
変わったところではグルテンフリーの醤油、ビールなども販売されています。
日本では、
「食べて痩せるグルテンフリーダイエット」
「欧米では、おしゃれな食生活と大ブームに」
「ハリウッドセレブはグルテンフリーはもう常識」
「ドミノピザのメニューにも導入。」
「グルテンフリー」という言葉自体が、
おしゃれでヘルシー、何か体に良さそう、さらにセレブという印象を
与えていると思います。
それでは、グルテンフリーダイエットで本当に痩せるのか?
ABCニュースや,アメリカで最も信頼されてるメディカルサイト、Web MDでも伝えていますが、
「グルテンフリーダイエットで痩せる」には
全く根拠がないそうです。
減量に成功したセレブ達はピザや、ハンバーガーなどのジャンクフードを食べない、ケーキやクッキーなど甘いものを食べなかったせいで摂取カロリーを減らす事ができ、その結果体重が落ちただけで
グルテンを摂取しない事が減量に繋がったわけではないと結論づけています。
何やらグルテンが健康を意識する人々の間で悪者になってますが、
そもそもグルテンってそんなに悪者なんですかね?
グルテンフリーダイエットはベジタリアン、ローフード、マクロビオテックなどと同等に
体に良さそうな食事療法と同様に捉えられていますが、
それは全く正しくありません。
例えばベジタリアン、ビーガンの食品の多くはグルテンから作られています。
つまり肉を食べない代用品としてのプロテインをグルテンから摂取しているわけです。
ベジタリアンの考えとグルテンフリーの考えは全く相反するものなのです。
体に悪いものは排除するという思い込みだけで
グルテンフリー、ベジタリアン、マクロビオティックと続けると、
どういうことが起きるか、
必要な栄養素が不足しがちになってしまいます。
グルテンを含む小麦粉類には体にとって大切な栄養素が含まれています。
なにより食物繊維が豊富であり、
ミネラル、ビタミンB類などが豊富に含まれています。
グルテンフリーダイエットはもともとceliac disease(セリアック病)の為の食事療法です。
医療機関や、ニュートリシャン(栄養学士)、専門家の中にも、
ブームにのってグルテンフリーの食品に走り過ぎているのではと警鐘をならす人もいます。
グルテンのアレルギーがない人に取っては全く体によくない成分ではないという事です。
なんとなく体にいいのではと言う思い込みでアレルギーでもないのに
わざわざグルテンフリーの食品を取る必要はまったくないというわけです。
是非、「真のナポリピッツァ協会」と「本場さぬきうどん協同組合」はタッグをくんで
このおかしなグルテンフリーダイエットブームに戦いを挑んで欲しいと思うわけです。
特定の食品が良いという噂に惑わされず(サバ缶も)
自分で正しい知識を知る事が必要なのではないかなと思う。