前回では生前贈与されていた場合は、相続時に贈与分を相続分から差し引く「特別受益の持戻し」というものがあり、その計算方法についてお話しました。
しかし、生前贈与を受けていても持戻しを免除できる場合もあるのです。
被相続人が「長男に生前贈与した財産については、相続時に持ち戻す必要はない」と意思表示した場合には、特別受益を持ち戻さなくても良いのです。
一般に、特別受益の持戻しは相続人同士の公平を図るために行われます。
ですが、被相続人が遺言で相続分を指定したり、遺産分割の方法を指定できることから、相続財産をどのように分けるかは、被相続人の意思で自由に決めることができます。
そのため、遺留分を侵害していないことが前提ですが、持ち戻さなくても良いと意思表示がされている場合には、被相続人の意思が尊重されて生前贈与を受けた相続人は持戻しをする必要がありません。
では、どのように「持戻しをしなくても良い」と意思表示すれば良いのでしょうか。
ただ持戻しをしなくて良いと思うだけでは、意思表示にはなりません。
書面でも口頭でも「今回の贈与については、特別受益の持戻しをする必要はない」と伝えれば良いのですが、後でもめることを考えると、やはり書面にする方が良いですね。
書面にする場合に様式はありません。
「長男に対する2000万円の贈与は、特別受益の持戻しを免除する」
「次男に対する不動産の遺贈は、相続分には含めない」
などと記載した書面に日付を入れて、署名と押印すれば良いのです。
この持戻免除の意思表示は、単独行為ですので、一定の相手方に対して行う必要も、承諾を得る必要もありません。
また、持戻免除の意思表示は贈与を行ったときと同時でも、贈与の後でもできます。