妄想小説【If...!?】 56
(ジェジュン、おはよう...)
彼より早く目を覚まして、その手にキスをした。
人間で言うところの「舐めた」だけれど。
『...ん...誰?』
彼のその言葉が少し淋しかった。
私の声が聞こえているはずなのに、寝ぼけている彼には手の甲を舐める人間なんてすぐには頭に浮かんでこないんだろう。
その日外に出かけると、公園で大きいおじさんがベンチの上に座っていた。
『おじさん....』
『お、今日は早いんだな?みんなもう出かけたのか?』
『うん。今日は朝が早くて夜も早いってみんな話してたの。それって早く帰ってくるって事かな?』
『そうかな...うん。でも、今日は...彼、誕生日なんじゃないのか?』
『あれ?どうして知ってるの?』
おじさんは少し笑って空を見上げた。
『いい天気だな?でも、彼の国はものすごく寒いらしいぞ』
『おじさん、何でも知ってるんだね?じゃあ...』
『ん?』
『私が間違ったのなら教えて?私...もうジェジュンの目を見ていられないの。雪が降る時みたいに重くて、暗い青なの。ジェジュンのそばで、彼がただ楽しく過ごせる相手は...今の私じゃないの?』
『人間はな...ただ楽しくいればいいわけじゃないんだ。悲しい事も、辛い事も、腹の立つ事も、愛している人と分け合って生きていくんだ。楽なだけじゃ...ないんだよ』
『そっか...でも...もう、遅かったね?私、もう分け合うって事、できないんだね...猫だから』
おじさんが私の頬を3回舐めた。
『お前はなんでも気が早いんだ。彼に触れたいと思った時も、彼に触れれる身体から元に戻る時も...それから今もだ。』
『今?』
『神様がな...せっかく人間の身体をあげたのに、全部お前が決めて元に戻ったって呆れているんだ。お前にはまだやり残した事が山ほどあるのに...そしてまた、もう遅いと買ってに決めているんだ』
『何を残してきたの、私?』
そう尋ねる私におじさんは答えた。
『女の子は...幸せになれ、ミュウ』