妄想小説【If...!?】 52
確かにミウの声がする。
僕は自分の頭がおかしくなった...とは思わなかった。
不思議な事になんとなく普通にそれを受け入れている自分が笑えた。
(ジェジュン、なんで笑ってるの?おかしいと思わないの?それとももう...おかしくなっちゃったのかな...)
『ちょっと!俺は普通だってば...ただ...普通に話してる自分が可笑しいだけだよ』
ただ僕にはわからない事が多すぎて、それを今からじっくりミュウに...いやミウに...どっちでもいいけれど、とにかく聞きたい事が山積みだった。
僕はミュウを抱き上げてみんなのいる場所を素通りして、まっすぐ部屋に向かった。
背中でユノの声がした。
『なんか...さっきからおかしいんだよ、あいつ』
やっぱり僕はおかしいのかもしれない。
僕はベッドの上にあぐらをかいて、向こうの椅子に綺麗な姿勢で座って話すミュウの言葉を黙って聞いていた。
野良猫だったミュウが僕に恋をした。
僕に会いたくて、毎日僕の帰りを待った。
ある日僕に拾われた。
もっと僕に触れたくて願ったら...
『あっは!!待ってよ?え...願ったら朝起きたら人間の女の子になってたの?』
(うん、そう)
『猫ってそんなことできるの?』
(普通はないと思うけど...)
大きいおじさん
神様からの伝言
キス
最後に望む幸せ
ミュウの言っている事が理解できるようなできないような...僕は首をかしげてミュウを見つめた。
ミュウもしばらく僕を黙って見つめていた。
(ねえ...ジェジュン。そんな顔しないで?私、ジェジュンのそういう淋しそうな顔を見たくなくて...だから...)
『ちょっと...頭整理するから...』
僕が言うとミュウは椅子から飛び降りて歩き出して、部屋のドアの前で振り向いた。
(開けてよ...)
『あ...そっか...はいよー』
すっかりミウと話している様な気がしていたけれど、やっぱり猫にはドアは開けられない。
ドアを開けるとミュウはソファーに寝転んでいるユチョンのお腹の上に飛び乗った。
『ぅおっふ...おお...ミュウか?びっくりしたなあ...もう』
ユチョンのお腹の上で添えられた指を舐めるミュウの姿に、僕はとてつもない淋しさと、ユチョンへの嫉妬で気が変になりそうな自分の気持に涙が出そうだった。
『どうして...?』
僕はドアに頭をもたれ掛けてひとり言をつぶやいた。
『え?何、ジェジュン?』
のんきな顔でユチョンが僕に話しかけた。
『いや...ちょっと俺、頭が痛いからさ、ミュウよろしく』
『あー...まだ風邪が治ってないんじゃないの?ミウちゃんに看病にきてもらう?はははははっ!』
『....あっは...』
僕が小さく笑うと、ミュウが涙をためた目で僕を見た。
僕にはここからでもその涙がはっきり見えた。