妄想小説【Love in the Ice】 ~Extra Story~
初めてのドラマも終わった。
アジアもまわった。
アメリカでも初めてライブをした。
僕は気づいたら10キロも痩せていた。
もしかしら今はもう少し減っているかもしれない。
彼女が僕の前からいなくなって、また会えた時のまんまるい僕の頬を、彼女はよくつまんで笑っていた。
『ユチョン?このほっぺはどこから首になるの?あはは!』
今はこの痩せた頬に、彼女は優しく手をあててくれる。その表情は優しくて、そして少し悲しそうに見える。
明日、僕達にとって今までで一番大きなライブがある。
僕達....3人の。
アジアもアメリカも3人でまわった。
遅くまでリハーサルがあって、やっと彼女の宿泊しているホテルに来る事ができた。
彼女に会うのは2ヶ月と少しぶりだろうか。
アジアのツアーに日本を入れる事ができなかったから、僕も日本に行く機会がなかったし、これから行く予定もない。
部屋のドアが開くと彼女が笑ってくれると思っていた。ドアが開くのをわくわくしながら待った。
彼女は何も言わずに首を少し横にかしげて、優しく、そして悲しく微笑んだ。
『音色...やっと会えた...』
そう言う僕の頬に彼女はそっと手を伸ばした。
『ユチョン...ほんとに...ほんとに...うん...写真は見たし、ドラマも見てたけど...ほんとに...こんなに...』
『気持ち悪い?』
彼女の手に自分の手を重ねて僕は笑った。
『気持ち悪いわけないでしょ?』
僕の頬に手を当てたまま下を向いて泣き出した彼女を僕は抱きしめた。
『ねえ音色、覚えてる?音色が韓国に始めて来た時も、俺、やっとホテルに来れて...あの時も久しぶりに音色に会えたからさ、今みたいにドアのとこで音色と抱き合ったんだよな...覚えてる?』
『うん...』
抱きしめている僕の腕の中で、彼女はただ腕を下にさげて立ったままだった。
『ねえ...ギュってしてよ?』
僕が催促するとやっと彼女は僕に腕をまわした。
『覚えててよかった...』
『忘れるわけないもん...ユチョンの事は全部覚えてるよ...』
『あの日も寒かったね』
『うん...起きたら雪が降ってた...』
『明日、雪かもよ?音色、ちゃんと暖かい服持ってきた?』
その後少しの間僕はそうやって彼女とその場に立ったまま抱き合っていた。
彼女の体の体温と感触が自分の体にどんどん伝わってくるにつれて、僕はなんとなく自分で自分の中に閉じ込めていた弱い部分が蘇って来るのを感じた。
『不安なんだ...不安なんだ...』
不意に自分でも驚く言葉が口から、いや体の中から押し出された。
そしてそれと同時に涙が止まらなくなった。
彼女は黙って僕の涙をいつもみたいに指で拭いてくれた。
『俺さ...』
『うん』
『俺さ...音色は信じないかもしれないけど...もうずっと泣いてないんだ。泣けないんだ。泣けないんだよ...』
『うん』
『でも...なんだろう...今、どうして泣いてるんだろう...俺...音色の前では結局泣き虫のままだ...あはは...』
彼女はそのまま僕の涙を指で拭き続けた。
その指先の暖かさが、余計に涙を引き出した。
『ねえ、音色...もっと...もっとギュってしてよ...』
~see you someday!!!~