事件の真実


スーパーにクレームはつきものですが、クレームをいうお

客さんには絶対金を払ってはいけません。
もし私が金で済ますといった既成事実をつくってしまうと

社員がそうしてもとがめられません。
それにもし、それが単に相手がお金を取る目的だった場

合は、お金を払ったことが相手の仲間に伝わり、そういう

輩たちが入れ替わり立ち替わりクレームで強請ろうとして

くる場合もありますから。
輩のクレームでも簡単なものもありました。
クレームにより家に伺うと「誠意を見せろ、俺は〇〇組とは

親しいんじゃ。組長にいってやるぞ。」
っていわれたときはうれしくなりました。
組長もこんなちんけなクレームで出てこなければいけなくな

ったら哀れだなぁと思いながら
「じゃー〇〇組に行けばよろしいんですか。」とにやけるの

をこらえながら言ってやると「こっちは気をつけてくれたらい

いんじゃ。

と言って終わりました。
まぁ。あとは仕入れが600円ぐらいのマスクメロンを化粧箱

に入れたものを渡して返ってきます。
別に受け取らなくてもかまいませんし、「そんなのをもらうた

めにいったんではない」とたいがいは言いますが、これ以上

どうにもならないとおもったらたいがいは受け取ります。
安いおみあげぐらいは用意してやらないと相手も少しは立場

もあるかも知れませんから。
受け取っても受け取らなくても終わりますが、受け取ると終わ

ったという感じはしますからね。
「えっ。実際に行けと言われたらって。」
その時は警察にそう言われたと言ってあげましょう。
だれも警察にはやっかいになりたくありませんから。
やくざの組の名前を出した時点で終わってます。
とにかく金は出さないと言う姿勢が大事なんです。

クレーム発生。
私が一通り業務を終えた5時頃であった。
「いつも忙しいんだから今日は101の喫茶店に行き、あとの

時間はのんびり過ごそうか。」と思っているときにN経理から

電話がかかってきました。


「社長。M店お客さんから苦情があったらしくて、K店長弱っ

てたぞ。助けてあげないといかんのちゃうか。」と言うことで

した。
私はN経理に「いちいちクレームがあるたびに俺が行ってた

ら休む暇もないやろ。

店長会議でもクレームは店ごとに対処する事に決まってる。
俺まで回してきたら減給処分やし、それに店長も店では一

番偉いんだからそれぐらい解決できないとお話にならないや

ろ。」と言い電話を切った。
「せっかく今から101の喫茶店にいって、マスターと楽しく話

でもしようと思ったのに・・・。行く前にM店に寄ってみるか。」
私はとりあえずM店に行くことにした。
M店にはいってK店長にクレームの事を聞くと「漬け物が悪か

ったらしいんやけど、漬物屋さんに連絡するともういなくて連

絡が付かない。行ったら3人ぐらい男の奴がいて「どう誠意を

見せてくれるんや。もう一回会社に帰って社長と相談してもう

一回来い。」っていわれたと言うことだった。
私は「ふーん。でもクレームは店長が処理するように決まって

るからがんばって行ってきて。」と言って事務所から出ました。
おもしろいので階段を下りて帰った振りをして、もう一度音を立

てずに台所の隙間から事務所をのぞいてみると頭をかかえ下

を向いて弱った顔のK店長がいました。
そんな私の姿をS社員が見て「社長なにしてんの。」と言った。
私は「いやー。K店長の弱ってる姿を見るのが楽しいから。」と

言うと「ひどい~K店長さっきから悩んでるのに・・・、社長助け

たってや。」と言われた。
「仕方ないなぁ。貸しやで貸し、ぱっぱと終わらせて飯でもお

ごってもらおか。」と言うと「なんでもおごるがな。」とK店長は

不服そうな口調とは裏腹に安心した表情を浮かべた。
「天丼がいいかな。やっぱ鰻丼かな・・・寿司も捨てがたいし・・」

と私が言うとSは「何でそんなに楽しそうやの、信じられへん。

・・で僕も連れてってくれるの食べるの」とS社員は言い、「俺だけ

やで。」という私だった。

K店長に例のメロンを用意させ出陣した。
K店長についていくと文化住宅の2階に上がっていった。
そしてK店長は「すいません、スーパー〇〇〇です。」と言うと、

中から「どうぞ。」と言ってきた。
部屋は薄暗かった。K店長についてはいっていくとなるほど体格

のよい男が3人座っていた。
「まぁ、K店長が弱っていたのも無理もないか。」と思い、私は当

事者と思われる相手にしゃきっとした姿勢でまっすぐに相手を見

て切り出した。

そういう態度こそが大事で、動揺していないすぐ決断できると言う

ことを伝える上で必要不可欠だからだ。
「私は〇〇〇の代表をしております〇〇です。このたびは悪い商

品があったということでご迷惑をおかけいたしましてまことにすい

ませんでした。

わざわざ連絡くださり本当にありがとうございます。」
すると相手は「どうするんじゃ、もしこんな悪いものを食って中毒に

なったらお前とこ責任取れるのか、どうしてくれるんじゃ、保健所

に持っていくぞ。会社としてどうしてくれるか答えを持ってきたん

か。」といった。
私は、「本当にご迷惑をおかけして申し訳ありません。わざわざ

保健所に持っていっていただかなくても私が持って行かしていた

だきます。ご迷惑をおかけして、そのうえまた足を運んでもらうの

もなんですし、私どもの不注意でこのようなことになったのですか

ら。」と言った。
また相手は
「おたく、保健所にもっていったら営業停止になるぞ、そんなんなっ

たら困るんちゃうんか。」と言った。
「やっぱりご迷惑をおかけしたのは事実ですし、店の管理責任は

店長にありますしそれらすべては私の責任ですから。それで営業

停止になればそれはそれで私どもの不注意ですから当たり前の

結果です。わたしどもも今後このようなことの内容によりいっそう

注意していかなくてはいけません。そう言うためにもきちっとしなく

てはいけませんから。」とわたしはいった。
しばらく相手はだまったままで周りの二人も無言だった。
しずかな間があったあと相手は「休むとなったら相当損害が出るや

ろ。そうなっても本当にええんか。」と言った。
私は「私どもの店は8店舗あって、各店きちっと管理してるとは思っ

ていたんですが実際には今日のように管理の甘さを実感させられ

ています。

今後このようなことが起きないためにも、また他店への見せしめの

ためにもきちっとしなくてはいけませんし、会社としてほっていけな

い問題です。

それによって損害が出ればいたしかたないことですし、店長の減給

や処分によって補うことになっていますので。
迷惑かけたのは当然私どもの責任です。

でもこのような問題の責任をとるのも私どもの問題ですから。」と言

った。
相手は「俺はただきちっと商品管理してくれればそれでいいんや。

今後このような事がないように思って言った事や。」
私はすかさず「本当にご迷惑をおかけしました。

これに懲りずに今後ともご利用ください。

これは商品の返金代金です。そしてこれは商品についてのお詫びと
わざわざ連絡して教えて下さったことをかねての店からのお詫びと

お礼の気持ちです。」と言うと、返金のお金、そしてメロンを渡した。
そして「すいません。商品の方保健所に持っていくのにいただけま

せんか。」と言うと相手は「もういい。」と言った。
私は「じゃー保健所にはこのこと連絡さしてもらっておきます。

ご迷惑をおかけして本当にすいませんでした。」と言って部屋を

出た。
そして一件落着。

帰りの車の中でK店長は「よくあんなこと言えるなー、うまいこ

と。」と言った。
私は「最初から相手はどうしたいかはっきりしてるやろ。

でも相手の思惑どおりになって金払うんやったら、営業停止に

なって損害を店長に長期ローンで補ってもらう方が気分もいい。

それに店長も店に縛れるし。」と冗談を言って笑った。
K店長は「保健所はどうする。」ときいた。
私は「電話はしないといけない。電話したという既成事実をつく

らないといけないから。

でも実際現物がないと取り合ってくれないから問題ない。

一つ貸し覚えといてね。

それからメロン代なんやけど。」と言うと「わかってるがな。

俺が払うことぐらいおやすいご用や。」と店長が言ったので、
私は「ちがうちがう。メロンは確かに600円箱代を入れても

700円弱だけど私の手間がかかってるから、漬物屋に3800円

のメロン持っていったって言って3000円にまけとくって言って金

もらっといてな。」と言った。
「ちゃっかりしてるな。」とまたまたメロン代も払わなくていいのか

と言う顔をしながら店長が言うと私は「経営者ですから。」と言って、

店長いつおごってくれるのかなと思いながら不安な表情で笑うの

だった。

実際、納品業者の商品でもお客さんからすれば店の管理責任で

業者は関係ありません。

納品業者が・・などと言うと返って店に責任はないのかと文句を言

われることでしょう。

納品業者と一緒に行く場合もありますが納品業者を待っていくより

は早く対処するほうがいいでしょう。
このようにして、たいていは納品業者に恩をうっておいて業者にメロ

ンを買ってもらい商品をまけてもらうようにするんです。

得すると思えば気分も上々、クレームも商売!商売!


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