事件の真実


M病院の食堂から納品してほしいと電話があった。
Aさんがいるのですこし気が引けたが、私は早速商談に

M病院に行った。
M病院に行くと中学の同級生が働いていた。
まじめだが融通の利かない堅物の男だった。
わかってはいるが独身かと聞くとそうだと言った。
紹介してくれと言われたが私は「病院だったらたくさん

いるだろ」ときいた。
「なかなか話する機会もないし」と言うことだったが、

きみがかわってるからだ」
と言ってやりたかったが言えなかった。
注文の量は少なそうだが友達の頼みなので引き受けた。
毎朝少ないが配達することになった。

配達が始まった。
朝はみんな忙しいので暇な私が社員に代わって配達に

行くことも多かった。
私はいつも愛車で配達に行っていた。
そんなある日、量としてはいつもより多かった。
入り口は病院の横に勝手口があり、私は車を駐車場に

止め、そこから肩に担いで勝手口を入っていった。
入り口を入ったところで、私はよろけて可動式のベットの

ようなものの上にのしかかってしまった。
ベットの上には荷物のような物が置いてあってその上に

シーツがかぶっていた。
わたしはその安定の悪い物の上にいったん荷物を置き、

持ち直してまた荷物を担ぎ食堂に持っていった。
偶然Aさんと会ったが、私は頭をさげて挨拶するだけで

話はしなかった。
気まずい雰囲気だった。
そして食堂をでて勝手口から帰ろうとすると、その通路

をたくさんの看護婦さんが両側に並んでいた。
「私の見送り。」・・・・そんなはずないか。と思いながら

一度は通るのを躊躇したがそこしか通るところがないの

でその間を恥ずかしがりながら通ると、後ろから何かが

来た。
見てみるとさっきの可動式のベットの荷物にシーツをか

ぶせた物だった。
でも周りの看護婦は頭を下げ目を伏せているようだった。
「俺は王様か」と思い少しいい気になりながら、でも後ろ

が気になってもう一度振り返った。
よく見ると荷物と思っていた物は人の死体だった。
私は死体様に配達の荷物を載せたり、もたれかかった

りしたのだった。
柔らかい感じがしなくて、何か堅い棒のような感じだっ

たことを思い出し、くわばらくわばらとおもい、お経を唱

える?私だった。
みんなが知らない間に勝手口から死体は運ばれてい

くんだなと思う私であった。
病院で看護婦が並んでいたらそれは死体の見送りだ

と言うことを知ってる人は少ない。