勝って栄光を掴もうと思ったなら、近道して要領よく小手先だけを追求するだけでは、
それはかえって遠回りだったりする。
逆に、『こんなことやってて大丈夫なんだろうか?』と、一見遠回りに見えることが、実はいざ真剣勝負
となったとき、芯となって勝利への重要な要素になったりする。
映画『ベスト・キッド』で、師匠のミヤギさんが、空手を教えて欲しいというダニエルに対して
はじめに指示したのは、壁のペンキ塗りとクルマのワックスがけの繰り返しだった。
ダニエルはこんなことは無意味だと腐りかけていたが、いざ試合となると、無意識的に空手の基本
動作が習得できていて、ついには勝利できた、というストーリーだ。
まあ、この練習方法が効率的かどうかは別として、一見無意味な練習であっても、繰り返し反復すること
によって、無意識的に効率的な身体の使い方が身についているというのは、空手に限らずスポーツ
では往々にして存在する事実であることは否めない。
幸いにして、本郷高校ラグビー部の監督・コーチは、この映画のように、本人に悟らせるような、
難解な指示・指導はしないでくれる。
すべてにおいて、目的と期待できる効果を示した上で練習メニューが指示されているはずだ。
しかしながら、こうした『手取り足取りコーチング』のうえにあぐらをかいてしまって、一番大事な、
『実際にプレーする本人』の思考が停止してしまっている選手が見え隠れしている。気がする。。。
ときに、日々の練習は惰性になりがちだ。
ゲームのための練習のはずが、指示されたことをソツ無くこなすだけの、『練習のための練習』に
なってはいまいか。
また、本人は一生懸命考えているつもりであっても、その局面の、ひとかけらをクリアすることだけに
執着し、ゲームシチュエーションやモメンタム(試合の流れ)のイメージを持つことを怠れば、その練習は
近道に見えて遠回りだったりする。
だからこそ、日々の練習の中では、イマジネーション力を身につけることが大事だと感じる。
イマジネーション力を身につけるのも、もちろん練習なのだが、この部分に関しては、残念ながら
監督・コーチがいくら口酸っぱく言ったところで、その効果を実感できるのは選手個人でしかない。
つまり、選手個人がこの力の必要性を悟らないかぎり、ずっと遠回りの練習を続けることになるし、
イマジネーション力を鍛えながら練習する選手と、そうでない選手とでは、同じ練習をしても、
日々を重ねるごとに実力に差が出てくるということだ。
反復練習によって、ある程度の技術は身につくし、それが試合で活かされる場合も、もちろんある。
だが、本人の思考が停止したままの練習を続けていても、映画のような勝利は収められないのが
現実だし、『言われた通りの練習さえすれば勝てちゃう』ほど、高校ラグビーの強豪校は甘くない。
身体を動かすスポーツではあるが、無意識のなかに刷り込んだだけの動きだけでは、チームも、個人も
天井が知れている。
身体を使うスポーツではあるけど、その実は、『脳が筋肉に指令を出して、身体が動く』ということ。
当たり前のことだけど、こいつを意識して練習に取り組めば、問題意識が自然に
生まれ、自分に足りないもの、チーム全体やチームメイトに足りないことも同時に見えてくるはずだ。
翻ってみれば、勉強もスポーツも、結局アタマでやるものだってことじゃないかな。
このメンタリティを鍛えることこそ、実は勝利への近道だと思うのだけど。。。
『ベスト・キッド』のダニエルくんが、言われた練習に意味を見出して取り組んでいれば、ラストでは
もっと圧倒的な勝利を収めていたかもしれない。
まあ、それじゃ、映画にならないけど。。。
試験が終わって、いよいよ春に向けたスタート。
気合と根性がなきゃ勝てないけど、気合と根性だけじゃ、やっぱり勝てないのが現実。
『なぜ、この練習が必要なのか』
『なぜ、自分はこの練習が苦手なのか』
『なぜ、練習でうまくできたのに、試合で表現できなかったのか』
『なぜ、身体が大きくならないのか』
『なぜ、すぐ倒れてしまうのか』
etc......
練習中に『なぜ?』と、まず考えるクセをつけたら、その次に、『どうしたら・・・』を考えるだけで、
次の行動が変わってくると思うんだけどね。
その繰り返し、積み重ねが、遠回りに見えて、実は勝利への近道だと思うな。