あげくの果てのカノン 3 米代 恭 感想 『破滅へ』 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 一、二巻までは(不倫だけど)恋愛的な盛り上がりと積み重ねを経てきたけれど、この巻で一度それがご破算になり、不倫らしい重苦しさがかのんと先輩の関係性の中にも立ち込めてきた。
 それにしても、本当に一本の映像を見ている感じというか、押し流されるように一気に読んでしまった。セカイ系の空気感が好きな人は今巻も堪能できるだろう。
 今回面白かったところ。
 先輩とその妻はそれぞれ英雄と宇宙人の研究者ということで、崩壊しかけの世界を維持する役割を持っている。
 かのんの不倫はもちろん先輩の家庭も自分の家族との関係を壊してしまうものだ。
 しかしさらに、かのんの不倫により、英雄と研究者の関係性、世界を存続するシステムさえ揺るがせている、というのがダイレクトに展開として呈示されるのが面白い。
 自らが持つ毒、エゴ、不倫という関係によって、主人公のかのんこそが世界を終わりへと導いているような演出。
 実にセカイ系的だし、暗黒のカタルシスがある。
 読ませる力があるマンガ。次巻で完結だろうか。

 

あげくの果てのカノン 3 (ビッグコミックス)