逃げろ、ノラクロ | 続・阿蘇の国のアリス
「トイレ、がんばる!ハァ、ハァ、ハァ」


「サラパパさん、出たよ♪」


ビールのようなオシッコをしたら、
旅の始まりです。


今日は小国町へ向けて出発しました。

まずは、やきたてのパン
「そらいろのたね」さんへ。


「ジャージーミルクパンに
チーズブレッドに木の実のパンに
チーズのぱんにシナモンロールに
クロワッサンにチーズケーキをください」


「テヘッ、買いすぎちゃった♪」

「いつものことです」


次に
「菜園の風」さんに到着しました。

「サンくんこわいよ...」


「じゃあ、母さんに近づかないでね」


「かあ~、さ~ん♪」


サンくんは一年半前に、
この付近で保護されたワンちゃんです。


菜園風1600円...
セットメニューに必ず付く
サラダとスープには
無農薬野菜がたっぷり。




「...ん?」




「阿蘇山が見える」


「アリスちゃん、すごいね、
がんばってるね♪」


ファームロードを
車で走って帰っているとき...

突然、目の前に
黒い犬が飛び出してきました。


ひどく痩せていて、
後ろ足を引きずっています。
首輪も付けていません...。

パパは車を急停車させました。


犬は逃げるどころか、
クンクン鳴きながら
パパに近づいてきました。

パパは先程買ったパンを
犬に与えました。

「おまえは山に捨てられた
ノライヌかい?
...どうしょう、今は飼えないんだ。
ごめんね。どうかこのまま、
生き延びておくれ」


パパはそこまで犬に話しかけると、
悲しそうに車に乗り込みました。

ノライヌ...ノラクロは、
3本足で500メートル程
必死に追いかけてきましたが、
パパに降り切られ、
草原の彼方に消えてゆきました。


「許せ、ノラクロ、僕は偽善者だ...」


一部始終を見ていたシカも
悲しそうに鳴きました。

「キューン、キューーン!」


「ノラクロはもしかして、
サンくんと兄弟だったの?
今度来るときは、
私のご飯をたくさん持ってきてあげるね。
だから、逃げて、ノラクロ!」

「パパ見て、アリスがひとりで立ってる...」