九死に一生を得た! | フィリピン良いとこ、一度はおいで ~不良ジジイのフィリピン日記~

フィリピン良いとこ、一度はおいで ~不良ジジイのフィリピン日記~

フィリピンは住めば住むほど人生気楽になるよ、まずは僕の話を聞いてから一度遊びにいらっしゃい。

僕はナイジェリアの最北部にあるマイドグリと言う町で農業プロジェクトを追い掛けていた。マイドグリはラゴスより約1500kmの内陸部でサハラ砂漠がすぐ近くまで迫っている所である。全く何もない所で、出張に行くのが苦痛な所で有った。

或る日の事マイドグリへの出張でナイジェリア国営航空に乗った。離陸に問題なく3万フィートまで上昇してそれから通常飛行に入ったのだ、後1時間程の飛行でマイドグリに着くとのアナウンスを聞いた。

僕はぼんやりと機外を見ていた。飛行機の遥か下に雲がゆったりと浮かんでいるのが見えた。少し本を読んでいたらなんだかいつもの飛行と違うなと思って外を見たんだ、下に見える雲がどんどん上にあがってくる、真っ白な雲が飛行機と同じ高さに並んで見えたと思う間もなくその雲が今度は目の上にと遠ざかって行った。何で雲が急に上昇してくるんだろうと不思議に思っていた。

僕は突然気が付いた飛行機が猛烈な勢いで低下していく事を。周りの連中が急激な降下の為に耳がキーンとしてくるのでしきりと耳を押さえ出した。その途端に緊急時の酸素マスクがおりてきて、機内は騒然となってしまった。みんな急いで安全ベルトを締めなおした。僕は周りの連中の顔を見たが誰もが口もきけないほどの恐怖で緊張の極限にあるのが見えた。

酸素マスクをしてもエアーが全く出ないのだ。僕はマリ航空のオンボロ飛行機で死ぬほど怖い目に会っていたが、その時と違って今度は本当の事故なんだ。

僕は外を見てもう駄目だと観念した、だって僕の座って居る側のエンジンが停止しているのが分かったからだ。片肺飛行をしていたのだ。飛行機が飛んでいるのではなく落下していく如き状態なのが凄くリアルに分かった。

地面がぐんぐん近づいてくる、そして荒野の様な半砂漠地帯がくっきりと目に入ってきた。僕は只ひたすら地面を見つめていた、大きな岩の様な石がごろごろと砂漠に転がっていた。

僕が思ったのは此の場所に緊急着陸しても岩にぶち当たって機体はバラバラと成って周囲数キロメーターに飛び散るのだろうなと言う事だった。誰が探しに来たって見分けのつかない切れ端に僕達は成るんだと思うと同時に人生はなんて簡単に終わるんだろうと思った事だ。不思議な事に死ぬ事を思いながら怖いと言う気持ちがなくなって居た事だ。

その内に手を出せば岩に触れられるのではないかと錯覚するぐらいまで飛行機は落下してきた。僕はあと数分で此の世とおさらばだと覚悟して神にこれまで素晴らしい人生を与えて下さった事を感謝する祈りを捧げていた。

僕は無神論者なんかじゃない、神の存在を強く信じている人間だ。でも僕は特別な宗派に属してはいない、そういう意味での宗教は僕にとっては無意味なものなんだ。

僕は生まれついてのキリスト教徒で育った、子供の頃祖母に無理やり、引きずられるようにして教会に連れていかれたもんである。

然し宗教に強烈な疑問を持つようになったのは商社マンとして活躍し始めた頃にキリスト教国とモスレム国の両方を担当するようになって、宗派が有るから人間の争いが起きるのだと気が付かされた事でこう言った既存の宗教に対する信仰心を失った。

僕は、神は唯一のもので、自分で信じる神を人に強制しないと言う立場を強く取るようになった。神が信じられない無神論者は何を頼りに生きていけるかと思ってしまう。如何考えたって神がいないと信じる事なんかできない。キリスト教でもモスレムでもその大本は唯一の神と言っている、僕はその唯一の神様に帰依する事にしたんだ。

神様の話はやめておこう、人それぞれの考えが有るのだから、議論する必要もない事だ。

さてお祈りを終えて僕は心の準備が出来た、窓の外を凝視していたら遠くの方に一本の滑走路が見えた、僕はいきなりもしかすると助かるかもしれないと思いだした。滑走路がぐんぐんと眼前に迫ってきている、でも地面もそれと同じように接近してきているのだ、滑走路かそれとも砂漠の一角に不時着と同時に木端微塵と成るのかどちらかだ。僕はもう一度神さまにお祈りした、‘どうか僕にもう少し生きる機会をお与えください’と。

飛行機はすれすれで砂漠の瓦礫の間を飛んでいたが僕がもう一度地面を見たときそれは滑走路に正に着陸しようとしている時だった。機体がドシンと着陸して滑走路を走った。僕は機体が引っくり返りませんようにと祈りながら飛行機が停止するのを待った。飛行機は空港の真ん中で無事に停止したのだ。救急車や消防車、軍用車と滑走路を走ってくるのが見えた。

パイロットが震える声を抑えながらアナウンスした‘此の飛行機は片肺飛行と言う極めて危険な状態で有ったが、神のご加護を頂き今無事着陸出来た、皆さんおめでとう’と。その瞬間飛行機の内部は歓喜の声で爆発した。

僕は横の叔父さん、前の爺様と固い握手を交わした。無論後ろの若い娘とも固い抱擁をちゃっかりと交わしていた。

死ぬのは怖くないと思っていた自分だが、こうして大地を足で踏んだ瞬間に生還できたことの喜びで涙が出た。

僕は此の事件以来ナイジェリア各地を旅行する時は車で移動するようになった。アフリカ諸国は貧乏で有るので飛行機の整備は極めてお粗末である、しかも人間の命なんて誠に軽々しく扱われている事も明らかなので自分の車で移動するようになったんだ。

‘人の命は地球より重い’と言った能天気な奴がいるがアフリカで数年暮らして見るがいい、人生観そのものが変わるだろう。


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