悪女学にご興味をお持ちの皆様、こんにちは。

悪女学研究所・美術担当・ 造形作家の常楽です。


悪女たるもの、アートも充分に楽しめるだけの知的さと時間の余裕を持っていなければなりません。

一流の物をよく観る機会を持つ行為は、鑑賞者自身をより洗練させるだけでなく、

一流の成功者との共通の話題を持つことにも繋がります。


現代の日本では、世界的にトップクラスのアート作品も頻繁に日本を訪れては美術館を飾るようになっています。


これらの世界有数の作品が、ほんの少しの料金で観覧できるのですから、

その機会を逃す手は無いと存じます。


この文章をお読みになっている方のアート鑑賞の一助となれるよう、

今回は少しだけ「アートの多角的価値」について書きたいと思います。


アートの価値とお聞きになると、すなわち「金銭的価値」がまず念頭に来る方も多いかと存じます。

それはそれで健全な思考の一つであると、私は考えます。

欧米社会やアジア社会に限らず、今や「アート」は「投資」の一つとしてメジャーな地位を築いています。

「アートファンド」というものも既にあります。

これから値上がりしそうな作品を共同出資で買い、値上がりしたら売却してその利益を分配する・・・。

正に株取引のような世界が、既に構築されているのです。


これはこれで、健全な経済市場の一端ではあります。

私はこの世界を否定するどころか、むしろもっと奨励し、色々な方がアートをもっと愉しむようになればと思っております。


しかし、ご存知のようにアートの価値は「金銭的価値」だけではありません。

そして更に、「美術的価値」だけでもないのです。


アートの価値は、大きく分けて下記のようなものがあげられます。


「金銭的価値」

「美術的価値」

「歴史的価値」

「希少価値」

「学術的価値」

「社会示唆的価値」


これらの要素はお互いがお互いにかぶさり合っているため、明解に分けることは出来ませんが、

確かに存在する価値基準の一つです。



例えば、

ある美しい大壷(陶芸専門用語では「たいこ」と読みます。)があるとしましょう。

これは500年前に作られた、今は失われた技術によって焼成された特別の色彩がある大壷だとします。

この色彩を持つ壷は、世界に一つしかありません。


この時点で、この大壷は「美術的価値」「歴史的価値」「希少価値」「学術的価値」があるという事になります。

これらの4点の価値が考慮された結果、最終的に「金銭的価値」が決定されます。

「金銭的価値」は需要と供給のバランスを如実に受ける価値なので、もし「この壷が好きだと思うマニア」が沢山居れば価格は上がり、その現象をみて「この壷は将来値上がりしそうだから投資として持っておきたいな」と考える人が沢山居れば、「金銭的価値」は更にドンドンあがります。


ここで、事件が起こるとします。

世界に一つと思われていた大壷が、もう一つ発見されてしまったのです。

色彩も形もそっくり同じで、しかも贋作ではない事が証明されたとします。

そうすると、「希少価値」は一気に減ります。

厳密に半分になるとは申せませんが、如実に下がる事は確かです。

さらに悪い事に、歴史学者が突如現れ、

「この大壷は500年前に製作されたものではなく、300年前に制作されたものだ」

と、断定すると、さらに「歴史的価値」が下がり、連動して「金銭的価値」も下がります。

しかしここで、その歴史学者が後になってからまた発表し、

「この大壷は確かに300年前の製作である。しかしその後の調べにより、この大壷は●●時代に当時の天才陶芸家の○○が気まぐれで作った事が分かった。しかも土の組成が、当時その陶芸家が住んでいない土地のものである事が判明した為、この陶芸家は何らかの形で遠くの土地の物と陶芸技術向上のための交流を持っていた事が分かった。

これは学術研究的に、極めて貴重な発見である!」と言ったとすると、

「学術的価値」の向上により「金銭的価値」はまた上昇するといった事が発生するのです。



今あげた例はほんの一例に過ぎませんが、

「金銭的価値」というものがいかにその他の価値に振り回されているか、お分かりになったと思います。

ここでくれぐれも注意していただきたいのですが、私は何も

「アート作品の価値はいい加減に適当に変わる」と言いたい訳ではありません。

アートの価格は変動するものですが、その価格はそのつどそれらの専門家の方々が慎重に吟味した結果、決まっているのです。

私が言いたいのは、

「アートの金銭的価値は、多岐に渡る価値基準の一つに過ぎず、しかもその他の価値基準に依存した形で存在する価値基準です」という事なのです。


上記の点を踏まえた上で美術館に行くと、美術鑑賞の楽しみは益々広がります。

表面的な外見にとどまらない美術の本質の鑑賞。

未体験な方には是非体験して頂きたく存じます。

きっと今まで知らなかった感動と巡りあえます。



最後に、ゴッホの「ひまわり」が常設展示で鑑賞出来る美術館をご紹介します。


損保ジャパン損保ジャパン東郷青児美術館

http://www.sompo-japan.co.jp/museum/


ここに展示されている「ひまわり」は、1987年のオークションで、当時の世界最高額となる約53億円で購入されたものです。


現在では、もしもう一度この「ひまわり」がオークションに出されれば150億円で落札される可能性もあると言われています。


世界最高峰の絵画が新宿駅から徒歩圏内で鑑賞出来るのですから、まだ観ていない方は、是非ご覧になってみて下さい。


一流の人物は一流のアートを知っているもの。

一流のお方との共通話題として、役立つ事請け合いです。

そして何より、自分自身の感性を磨くのはこの上も無く楽しい時間の過し方であると、感じて頂けると思います。



最後まで読んで下さって本当にありがとうございました。


陶芸作家 佐藤百合子