フランス語交渉術 | 王様の耳はロバの耳

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ゆがんだかがくしゃのたのしいにっきだよ

とあるパリ在住まいみくさんに助け舟(の再編)。
アートエキシビジョンのための印刷物を印刷屋に頼んでいるんだけど、こないら
しい。
まあ普通にある話だよな。

ちなみにビジネスの交渉では、怒っても、この国では役に立たないです。
ちょうどCDG空港でストに腹を立てて「責任者だせバッキャロー!!」とか吼え
ている日本人女性が居たりしましたが。
普通にドン引きされて、顔真っ赤にして言い訳されるだけです。


話を印刷屋に戻しますが、店主の視点では、ビジネスで常連のお客さんが一番プ
ライオリティ高いはずです。
逆に、個人とか学生は立場低いです。


こんな感じで接してみては?

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これねえ、11月X日までにN部配らないといけないんですよ…大事なアートエキシ
ビジョンの仕事で。お客さんも沢山来ます。それに、この会社の印刷のクオリ
ティと納期も確認したいし。私は日本の美大で先生をやっているので、もし、い
い仕事(ビアン・トラバイエ)してくれるなら、次ももっと大きい仕事があるん
だろうけど…間に合わないかも?うーん、料金下げてもらっても、あまり意味が
ないんだよね…実際にどんな問題があるの?ほかのオーダー(仏語でコマンド、
と言う)があるの?それともオペレータがバカンスとか?もし本当に間に合わな
いなら、代わりの印刷屋探さないといけないんだけど、ご存知?…来週あがる?
来週のいつ?月曜日?月曜は無理?じゃあ火曜日の午前でどう?じゃあ火曜の10
時に来るから、ちゃんと仕上げて、領収書(ファクチャー、ビジネスなら絶対必
要)をこの名前で書いてくださいね。
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…ってな感じです。

気をつけたいのは、ビジネスでない、領収書も要らない、納期も曜日時間でなく
正確でない仕事は、実は会社の公式のオーダーではなく、担当者が懐に入れる内
職(ポッシュする、というPocketね)になってることがあるのです。もちろんイ
ケナイことなんですが、相手が職人の場合には土日のバイト感覚ですし、そのほ
うが安いので。アーティザンでも、プライドがあるならそんなことはしませんけ
どね…ちょろまかせる職業は要注意です。
(特に材料費がごまかせるタイプの職業)


とにかく、具体的に何を要求しているのか伝えなければなりません。
そして、相手の言い訳を逆手にとって、ゴールに持っていくのが大事です。
暗黙のルールでは、相手の言い訳が尽きたら、向こうの負けです。
「…。」となったら、すかさず
『ドンク、セボン?メルシーデボートルコーポラシオン!』
(じゃ、いいね?ご協力ありがと!)
…と、勝利宣言しましょう。

それ以外では「なぜ?」と問い詰めます。
「ジュヌコンポンパ」(わっかんねー) ←ボケてみる、外人なら特に有効。
「ジュヌコンポンパビアン」(ほんとによくわかりません) ←ハァ?という感じに
「…パスク?」(…だから?) ←かなり攻撃的
「セヌパデレゾン」(それ理由になってない) ←めったに使いません

あと、ところどころに相手をほめるのが大事です。
「セビアン、サ」(いいじゃん、それ)
「セ、サンパ」(ナーイス!/いい人!)
これだけでもずいぶん、交渉が楽に進みます。

都合上、カタカナですが、英語交じりでも十分役に立つでしょう。

少なくともこの国の生活や経済は、すべて即物的なものです。
実は日本人のほうが、生活や経済に精神的なものを求めてます。
「謝れ!誠意を見せろ!」
なんて、フランス人にとっては「何それ?」です。
(日本だと誠意=お金、恐喝って方面の人もいますが…)

「これからもお客になるだろう人」には親切に接しますが、
「このあとブチ切れてどっかいっちゃうだろう人」には、とことん冷たいですし
そんな人にまで礼節を尽くす義理はこの国にはありません。

それに無礼をした後に、謝る言葉はありません。
基本的には、言い訳されるだけです。
日本人にはこの言い訳が「とっても腹立つ」わけですが、怒ってはいけません。
付き合っていると気がつくことがあるのですが、
『長い言い訳』をして、『謝意を伝えている』こともあるのです。
つまり日本語だと『申し訳ない』=もう言葉が出ません、ということなんですが、
フランス語だと、相手が怒りを収めてくれるまで、
出せる限りの申し訳をしていく…ということですね。
(ちなみに4歳児ぐらいでも、かなりの言い訳をします)

もちろん「je me desoree」(ごめんなさい)は言いますけどね、
よっぽど品のいいおじいさんか、完全に言い間違えたときとか、
表現を間違えて勘違いしたときぐらいしか聞きませんね。


まあそんな感じで、フランス語での交渉術を軽くまとめてみましたが、これは基
本中の基本。
とにかく腹を立てずに、頑張ってください。