「リフレ派と実質賃金」にまつわる勘違い(?) | 空き地のブログ

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誰に吹き込まれたのか知りませんが、近頃やたら「リフレ派は実質賃金下げ(≒国民貧困化)をよしとする国民の敵だ!」みたいな話が飛び交っていますねぇ。

 

ハッキリ言ってその理屈はそもそもの「リフレ派」の主張を大いに勘違いしています。もし、故意にやっている人がいるとしたら、それは非常に由々しき言動であると言えるでしょう。

 

とりあえず、「リフレ派」の主張をおさらいしましょう。相手の主張を正しく把握しないで批判してもそれは「お人形遊び」に過ぎません(参照:はた迷惑な「お人形遊び」)。

 

リフレーション

http://ja.wikipedia.org/wiki/リフレーション

 

(引用ここから)

失業と賃金について 

リフレ政策は需要不足から生ずるデフレを克服し、完全雇用(インフレを加速させない失業率)を達成するための政策である[11]。 

リフレ政策は「物価水準を貸し手と借り手にとっての不公正を修復する水準まで戻す政策」と定義されるが、政策の目的は景気を回復させる点であるため、物価を「企業が失業者を吸収できる水準まで戻し安定させる」である[12]。雇用回復と賃金上昇を伴う景気回復を目指す労働者全般に恩恵をもたらす政策である[5]。 

石橋湛山は「失業は総需要のコントロールで解消できるものである」と指摘している[13]。また石橋は「物価が上昇しリフレが実現するということは、労働者に購買力が創出されるということである。仮に、物価が上昇して、労貨が物価上昇分しか上がらなければ、労働者の状態は一人当たりで見て変わらない。しかしそういった場合、その分雇用が増えて失業が減っているから労働者総体としては購買力は上昇する」と指摘している[14]。 

経済学者の浜田宏一は「物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がらない。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増える。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていく。その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策である[15][16]」「リフレ政策を通じて、物価上昇で実質賃金が低下し、企業収益が増えることで雇用拡大の余地が生まれる。ワークシェアのアイデアと同じだ[16]」と述べている。 

また浜田は「よく『名目賃金が上がらないとダメ』と言われるが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなる。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る」と述べている[15]。

(引用ここまで)

※リファレンスはリンク先でご確認下さい。

 

物事には順序というものがあり、リフレーションの場合であれば、

 

リフレ-ション政策による物価上昇(または物価上昇期待)

→(賃金の硬直性による)実質賃金下落

→新規雇用へのインセンティブが働いて失業率が減少

→やがて完全雇用に近づく(=人手不足)

→労働に対する需給バランス(需要>供給)によって賃金が上がり始める

→実質賃金上昇(←過去の実績からの類推)

 

という感じでしょうか。あくまでも「実質賃金の下落」は過渡的な現象であり、「リフレ派」が実質賃金が減り続けることを望んでいるわけではない、ということは明白です。冒頭で示したような揶揄が、都合良く相手の主張を切り取ってデコレーションされた「お人形」であることがよく分かりますね。


むしろ、今の段階(失業率の減少を伴う実質賃金の下落が観測されている最中)において、「実質賃金上げろ!」というのは、(本人が自覚しているか否かに関わらず)「これ以上失業率を下げるな=今失業している人は失業したまんまでいい」と言っているに等しいわけです。今の時点での失業者(賃金ゼロ)を差し置いて既存の労働者の利益(賃金)を増やせ、というのはあまりにも「経世済民」の理念から外れているように思うのですが・・・。

 

実質賃金についてリフレ派を揶揄している人たちがやっているのは、言わば、

リフレ派「ジャンプしま~す」→(かがむ)→おい!重心下がってるじゃんw跳ぶんじゃなかったのかよw

というような、非常に短絡的で物事の順序を弁えていない言説であると言えるでしょう。より高く跳び上がるために一旦かがむのは至って当たり前の話であり、瞬間的に重心が下がること自体は何ら問題ないはずなのに、その瞬間を捉まえて揶揄するというのは、分かってないとしたら相当の間抜けでしょうし、分かっててやってるならなおさら悪質でしょう。

 

日本でリフレ政策が行われた先例である昭和恐慌においても、リフレ政策開始から(もしくは、インフレ率のプラス転換から)実質賃金が上がり始めるまでにはかなりの時間差があります(参照:AJER日本経済復活の会「高橋是清財政とアベノミクスの違いを徹底比較」)。このような過去の実証例を無視して「実質賃金上げろ!」と声高に叫ぶのはあまり賢い者のやることではないでしょう。ましてや歴史から学ぶ立場であるはずの「保守」がそのような言動をするのはあまりに軽はずみなのではないでしょうか?