発展途上国支援、大和証券グループが「ワクチン債」発売へ

 大和証券グループ本社は、発展途上国の子供たちが予防接種を受けられるようにするための「ワクチン債」を国内で初めて売り出す。

 予防接種の普及活動を行っている国際組織「IFFIm」が発行しているもので、国内の投資家向けに販売する。

 一口約150万円で、IFFImが調達した資金は、ワクチン購入にあてられる。債券の利回りは未定だが、国債などよりも低めに設定し、社会貢献をしたい人たちの投資を募る。利払いや償還は、IFFImがイギリスや南アフリカ政府などから受け取る寄付金で賄うという。

 IFFImは2006年にイギリスや南アフリカなどの7政府が設立した。ワクチン債の発行により、国際金融市場から10年間で40億ドルを調達し、5億人の子供たちに予防接種を受けてもらうことを目標にしている。
(2008年2月2日19時55分 読売新聞)
-------------------------------------------------------------------------------
今日のニュースより。思いつきのエントリですが・・・。
上記ニュースにある、ワクチン債について、ちょっと。

一般の債券のキャッシュフローは、投資家⇒発行体⇒投資家という流れで利払い、償還(元本が帰ってくる)されており、発行体がお金を借りて、そのお金を使って稼ぎ、投資家に返すという形になっている。

一方でワクチン債のキャッシュの流れは、投資の時点では投資家⇒IFFIm⇒ワクチン購入となるわけだけれども、利払い日や満期が来て償還されるときのお金の流れはイギリスなどの各国政府の寄付金⇒IFFIm⇒投資家となっていて、発行体がお金を返さずに、政府が寄付金という形で元本を返済するところが一般の債券と異なっている。

ここでそれぞれの収支を考えると、投資家はワクチン債を購入し、満期になれば元本は返済されるので利息以外の収支はゼロ。また、IFFImは投資家からのお金をワクチン購入に充てて、政府からの寄付金を投資家に流しているだけなので収支ゼロ。政府は寄付金で債券の元利払いを行っているので、収支はマイナス。要は、政府がお金を出してワクチンを買っているということに。


つまり、この債券のウリである「ワクチン購入資金を手当てして、世界中の子供を救う」というお題目は結局のところ各国政府の寄付金によってなされているわけで、別に投資家がワクチン債を買ったところで、直接的に救済に寄与しているわけじゃなさそう。もしかしたら資金調達と元利返済の時期がずれることで、ファイナンスという面では何かしらの効果はあるのかもしれんけど。

そうすると「ワクチン債の意義って何?」って話になるけど、「世界中には幼くして病気で亡くなる子供がたくさんいます」みたいなことをアピールする、ただの広告としての役割しかないような気がする。IFFImも、たぶんそれが一番の目的にしてると思うし、それはそれですごく重要なこととは思うけど。

この債券を買った人は何か社会貢献したような気になるんだろうけど、結局は政府のお金でワクチンを買うことになるんだから、そんなもんに投資するよりは国債でも買ってワクチン債との超過収益分を寄付した方がずっと意味があるのになー、たぶん。

まあ、この債券の発行で一番得するのは貧困な子供達じゃなくて、販売手数料を稼げて、なおかつレピュテーションの上がる大和証券っていうところがミソだね。

僕はというと、そんな蓄えがあるわけでもないのでワクチン債さえ買えませんが・・・
(*ワクチン債については全くの素人なんで、色々と間違っててもそのへんは大人の対応をお願いします)