サイン・コサイン・タンジェントの由来 | アラ還 ~ 毎日が日曜日

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 高校数学を語るとき、「微かに分かった積もり」という人もいる「微分・積分」と共に、「サイン、コサイン何になる…」と歌詞にもある「三角比」のサイン・コサイン・タンジェントを思い浮かべる人は多い。
 ここでは、サイン・コサイン・タンジェントという名の由来について述べる。
ギリシャ人のアリアバタ(Aryabhatta、476?~550?)は、扇形からできる弦ABの半分をjyardhaと呼び、後に省略してjivaと呼んだ。即ち、「サイン」の概念をjiva(ジャイバ、弦の意味)と呼んだ。角度を長さで置き換えようとした時、ギリシャ人の頭の中には、弓が浮かんだらしい。
 概念は、人伝えに方々へ広がっていく。ギリシャ人の生み出したjivaという概念を知ったアラビヤ人は、それにjayb(ジャイブ、凹所、入江の意味)という訳語を当てた。
 そして、更にアラビヤから伝わってきたjaybという概念に対して、ヨーロッパ人は、ラテン語で同じく「凹所、入江」の意味であるsinus(シヌス)という語を当てた。
 更に、このsinusをイギリス人は、彼らの言葉である英語sineに訳した。後に「e」が省略されるようになりsin(サイン)として定着したのである。
 sinを日本語では「正弦」と訳しているが、これは中国の明時代の漢語訳をそのまま輸入した名前であり、ヨーロッパのように「凹所、入江」と訳すのではなくて、「弦」と訳した中国人は、ギリシャ人の概念理解により忠実であったといえよう。
ちなみに、正弦の「正」の字は、「正しい」という意味ではなくて、「基準の、大元の」という意味である。つまり角度を長さで置き換えるという概念はサインを基準としているのである。

 コサインの概念は、インドで生まれた。サインの概念を知ったインド人は、余りの角のサインを考えてもいいのではないかと考えたのである。インド人達は、この余った角のサインをcotijiva(コティジバ)と呼ぶことにした。この名前が、サインの場合とは逆に、東方から西方へと伝わり、sinus residvi(余角の正弦)、sinus complenti(補足の正弦)、co-sine(共正弦)と様々に使われる中で、cos(コサイン)という表記に定着していったのである。これを余弦という名で呼ぶの、文字通り「余りの角の正弦」だからである。コサインは、サインから生まれたのである。

 中世になって、ラテン語で、水平の影・垂直の影をumbra vecta(余接の意味)・umbra versa(正接の意味)と呼んだが、この呼び方は18世紀以降も使われた。このumbra versaに対してtangentという語を用いたのはトーマス・フィンケ(デンマーク)である。

 ちなみに高校数学においては、三角比を以下のように定義する。
直角三角形の一つの角の大きさをAとし、直角三角形の最長辺を斜辺、角Aと隣り合った辺を隣辺、残りの辺を対辺とする。このとき、比:(斜辺の長さ)分の(対辺の長さ)の値は、角度によって変わるが、直角三角形の大きさには無関係であり、この比の値をsinAとする。cosAは(斜辺の長さ)分の(隣辺の長さ)であり、tanAは(隣辺の長さ)分の(対辺の長さ)であると定義する。

             参考文献 畑村洋太郎著の「直観で分かる数学」
                  大矢真一・片野善一郎共著の「数学と数学記号の歴史」