ちょうど、10年前だ。

愛しい人を、永遠に失った。
永遠に、ではないかもしれないけれど、その人は旅立ち、いなくなった。

わたしの中に、音楽を聴いて、それを動かした唯一の人だった。


私は、立ちすくみ、そして決めたのだ。

永遠に、愛し続けると。
忘れない、と。


それしか、自分を守る術が無かったからかもしれないし、
それが、愛する人を守ることだと、信じたかったからだ。

その1年後にも、2年後にも、やはり冬だった。


逢いたいと願った。
どうしても逢いたかった。

けれど、逢うことはできなかった。


呼吸して、リラックスして、感じて、見て、委ねて。

今ここにいながら、必死でそれを繰り返した。


逢いたい。



それが、音楽と結び付いた、私の瘀血だろうか。

それとも、それより遥か以前から私にある、
何か別のものが、その体験と結び付いたのか。



「なかなか根深い瘀血だ」

と、主治医は言った。

自覚している。
私の中の、なにか。
顔が似ている、
と言われた。

あなたとは、とくに。

私は、
おそらく先祖をたどっていくとどこかにロシアの血がある
と、人生で何度か人から言われたことがある。


ロシアと関係はないの?
出身は?

突然聞かれたりした。



あなたも同じだった。
ロシアにルーツを感じていると言っていた。
実際に、あなたは白人のように色が白かったが、それは日本一日照時間が少ない土地の出身だったからかもしれない。



「きょうだいだったのかもね」



あなたの言葉を、今日突然思い出した。



「ハーフみたいな顔だね」と、
今日、人から言われただけ。
たったそれだけなのだけれど。

あの日、あの場所であの人と別れてからずっと、
この世界を俯瞰している自分がいる。

忘れている時もある。
全ては見えないし、
ほとんど何も見えていないのだけど、
この世界のどこかであの人が生きているということだけで、この人生の目的を感じることができるような気がして。


時間も空間さえも飛び越えて、
また必ず逢えると信じていた。
必ず逢うのだと。




君の名は。
今日、2回目の鑑賞をした。

やはりあの頃の私を見ているようで、
感覚を目覚めさせろと言われているようだった。

夢を見て、夢で泣いていた。
目を覚ますと、本当に涙が流れていた。

あの人は私にきっかけをくれているのだと気付かされる。
いつもそうだ。
なぜなんだろう。


なりたい自分になれているのか?
そのために何をしているのか?

愛する人を愛せているのか。
愛したい人を愛して生きているのか。

もう下を向いて歩かない。

胸を張りたい。

必ずまたあえるから。