国産ジェット旅客機「MRJ」、政府が10機調達へ | Flight Blogger Nippon 2011 0fficial Blog

国産ジェット旅客機「MRJ」、政府が10機調達へ

【情報元】
FujiSankei Business i
10月17日/川上朝栄、小熊敦郎

政府は16日までに、三菱重工業が事業化を決めた国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」を政府専用機として導入する方針を固めた。約10機の購入を検討している。
MRJは国と三菱重工などが「オールジャパン態勢」で開発を進めており、2011年初飛行、2013年の就航を目指している。
ただ、採算ラインは350機とされる中、現時点での受注は全日本空輸(ANA)からの25機だけにとどまっている。政府が率先して購入することで、国内外に「日の丸ジェット」をアピールする狙いがある。
政府が現在保有する専用機2機は、いずれも米ボーイング社の「B747‐400(400席)」で、皇族や首相など政府要人の輸送や緊急援助活動などに利用されている。政府はこの「ジャンボ」と呼ばれる大型機2機に加え、小型ジェット機のMRJを導入する計画。
MRJは経済産業省が旗振り役になり、三菱重工が事業化を決めた初の国産ジェット旅客機。国産旅客機の開発は1973年に生産中止になった「YS‐11」以来約半世紀ぶりで、三菱重工やトヨタ自動車、三菱商事などが4月に設立した「三菱航空機(名古屋市港区)」が開発や受注活動を進めている。
MRJは東京‐香港間など短中距離を飛ぶ「リージョナル・ジェット機」と呼ばれる小型機で、航続距離は最大で3330Km。70~80席の「MRJ‐70」と86~96席の「MRJ‐90」の2種類がある。同規模の機体に比べて燃費が2~3割向上するほか、客席の快適性、低騒音などが特徴。三菱航空機によると、リージョナル・ジェット機は今後の20年間で、5000機の需要が見込まれている。『世界の航空機メーカーから高い評価を得ている(戸田信雄社長)』と追加受注に自信をみせており、MRJは1000機の受注獲得を狙っている。
MRJの開発費は約1500億~1800億円で経産省が約500億円を補助。政府専用機として購入することで、事業化を後押しする狙いもある。9月には米ボーイングから開発、販売、サービスの幅広い分野で支援を受ける契約を結び、ボ社の先端技術やノウハウを取得し、受注をスムーズに進める態勢の整備に乗り出した。
また、三菱航空機は16日、米テキサス州に全額出資のMRJ販売会社を設立し、11月1日から営業を始めると発表。リージョナル・ジェット機の世界最大の市場である米州に販売の橋頭堡(きょうとうほ)を設け、現地に密着した営業活動を展開。受注獲得とともに、MRJブランドの浸透などを狙う。
MRJが参入する50席以上100席未満のリージョナル・ジェット機市場は、世界的な中距離路線の拡大を背景に参入が相次いでおり、競争激化は必至だ。先行するカナダのボンバルディア、ブラジルのエンブラエルの“2強”に加え、2009年にはロシアの軍用機メーカー「スホーイ」、中国の「中国航空工業第一集団公司」がコスト競争力を武器に参入する。そこに三菱航空機が2013年に進出し、5社が世界市場でしのぎを削ることになる。
各社がこの分野に食指を伸ばすのは、主要国で大都市と地方都市間を結ぶ運航需要が高まっているほか、中国やインドなど新興国の旅客機利用の増加がある。加えて、航空産業は周辺の部品産業も育成できるなど裾野が広いだけに、いずれも国家プロジェクト同士の受注競争の様相を呈している。
MRJの機体価格は最大40億円とライバル機よりやや割高になる見込みで、現在の円高基調も向かい風になる。他社を上回る約3割の燃費改善、客席の快適性、低騒音性など最先端技術をPRし、低価格戦略の新興国に対して受注競争で優位に立ちたい考えだ。
MRJの成否のカギを握るのは、海外市場の開拓に尽きる。全日空に次いで政府から受注を獲得したとしても、採算ベースに乗せるまでにはまだ道は遠く、受注機数ではライバルの中国に大きく水を開けられているのが実情だ。実は、国産旅客機「YS‐11」が生産中止となったのも、技術的には評価が高かったものの、海外に有力な販路を持たずに採算が合わなかったという事情がある。
航空機市場は米国発の金融危機の影響などで新規発注を手控える姿勢が顕著になりつつあり、逆風下での就航になる。そんな中で米国に新設する販売会社が海外の有力航空会社から受注を果たせば、事業化への道筋がみえてくる。(終)
【コ メ ン ト】
政府がMRJを政府専用機として調達することを決めたのは、おそらく麻生首相の強い意向が働いたのではないかと考えられます。
麻生首相が以前外相を務めていた頃、エリツィン元ロシア大統領の葬儀に出席しようとしましたが、政府専用機(B747‐400)が不在で利用できず、また民間航空便では葬儀に間に合わないこともあり、結局麻生外相は葬儀には出席出来ませんでした。この時、麻生外相は小中型の政府専用機の必要性を訴えており、彼が首相に着任したことでその希望を現実のものにしようと調達予算計上を決めたのかもしれません。