5月10日 3号機300度超は異常な状態 小出裕章
2011年5月10日

2011年5月10日(火)、MBS(毎日放送)ラジオの番組「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

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2011年5月10日【火】
千葉アナの被災地報告
千葉猛アナウンサーが出身地でもある宮城県に入っています。この1週間、「被災地と仕事」を切り口にレポートする予定です。今夜は「農業」です。京大・小出先生の原発事故解説も。




要約

・(半径20キロ圏内の警戒区域内住民の一時帰宅が始まった。帰宅後の被曝量を調べたところ1~10マイクロシーベルトだった。どうか?)その程度で収まってよかった。被曝に関して安全量はないが、住民の方にとっては当然必要な行動だった。この被曝量であれば少し安心した。

・(ペットを連れ帰りたい人が多いため、職員が連れ帰り、基準値を上回ったときは水で除染すると言うが?内部被曝は?)もちろんペットは内部被曝はしている。ペットから人間がどういう被曝をするかについては大した危険はないだろう。ただペットは汚染した空気を吸い込んでおり、水も食べ物も摂取しただろうから、放射性物質を取り込んでいるはず。そうしたペットの鼻から出た息を吸い込めば、人間が被曝することもありえる。が、相手が人間だったら当然汚染地域から連れ出すし、ペットを家族とみている飼い主からすれば、被曝はどうであれ連れ帰るのは当たり前。

・(リスナーからの質問。3号機の圧力容器の温度が毎日上昇しているが大丈夫か?)私も不思議だと思ってデータを見てきた。東電の発表は後に訂正されることがあるから、今回も間違いであればいいとは思うが、圧力容器の温度は333度になっている。

・(4月末は80度代だったが300度超になった要因は?)よく分からないが、測定器が正しいのであれば冷却に失敗している証明。外から水を送る配管に破れがあって水がきちんと入っていない心配がある。東電もそれを疑って、別の配管にする予定と報道されている。

・(何度になるといけないのか?)運転中であっても280~300度。それが今回300度を超えているというのは、異常な状態になっているということ。

・(温度を下げるために新たな配管をつくって冷やす?)と、東電は言っている。

・(燃料棒が再度熱を持っているという判断か?)可能性はある。運転中の燃料ペレットの最も高温の部分は2000度。いまは連鎖反応は止まっていて温度は下がっているはずだが、電源がなくなり、燃料被覆管が壊れ、ペレットは2800度くらいになり溶けてしまって、それは東電も認めている。溶けたペレットは炉心に留まっていると予想してきたが、もしかするとそれが圧力容器の底に流れ落ちて、それにより温度が上がっている可能性もある。ただしこれは最も恐れているメルトダウンではない。これなら水蒸気爆発は起きない。燃料が一部溶けた状態で圧力容器の底に留まって温度を上げているのかも。

・(最近出ている即発臨界説と関係あるか?)関係ない。

・(3号機の使用済み燃料プールの写真が公開されたが、瓦礫だらけで燃料が見えない状態だが?)3号機はすごい爆発だったため燃料プールは破損しているはずで、燃料も破損している心配がある。きちんと調べてほしい。詳しく知りたい。

・(この燃料プールで、通常は検出されない放射性物質が5月8日現在で検出されているらしい。通常の1000倍程度の濃度。1立方センチメートルあたりセシウム137が15万ベクレル、セシウム134が14万ベクレル、ヨウ素131が1万1千ベクレルだが?)いま聞いた限りでは、使用済み燃料棒が破損していて、それがプールの中に漏れてきたものと思われる。不審なのはヨウ素131。これが他の10分の1としたら、多すぎる。これは半減期が8日。既に事故発生から二ヶ月経っており、100分の1以下にはなっていないとおかしい。多すぎる。もし多いとすると、途中で核分裂の連鎖反応があったということかもしれない。3月11日の時点で核分裂の連鎖反応は終わっているはずだが。いま聞いたので正確な分析はできないが。

・(東電は高い放射能濃度の原因は、燃料棒の損傷ではないと言っているが?)それはおかしい。

・(東電は、原子炉損傷による核分裂生成物の落下、あるいは瓦礫に付着した放射性物質がプールに落ちて溶けた、と説明しているが?)正気かどうか東電に聞いてほしい。そんなことでは到底説明不可能。瓦礫はどこから来たのか?使用済み燃料プールのフロアで爆発があったが、そのフロアで最も放射能濃度が高いのは使用済み燃料そのもの。それが壊れていないというなら、それ以外にどれが原因になりえるのか東電に聞いてみたい。