老犬に寄り添う山下由美さん=宮崎県国富町
犬や猫の引き取りから治療、譲渡を
一貫して行う「動物愛護センター」が
宮崎市に計画されている。
宮崎県内初となる施設が設置される
背景には、動物愛護団体の長年の
努力があった。
宮崎市清武町木原の木原地区
ふれあい広場で1日、
みやざき動物愛護センター(仮称)の
地鎮祭があった。
戸敷正市長は「センターがようやく
実現する。動物に愛を与える施設に
なれば」と期待を込めた。
市によると、動物愛護センターは
市政90周年事業の一つとして
企画された。
鉄骨平屋(床面積約1184
平方メートル)で保護室や検疫室、
譲渡室に加え、診察室や
手術室なども用意。市議会6月定例会に
提案された工事費用案は約3億円で、
2017年4月の開設をめざしている。
県内の動物保護管理所との違いは
「生かして譲渡する」のを目的に
病気やけがの治療を行うことだ。
動物愛護教室を開き、
被災動物の受け入れなども行う。
県の乳肉衛生担当の
下村高司副主幹は「譲渡の
呼びかけや、一時預かりなど
行政では出来ないところは
動物保護団体の努力のおかげで
成り立っている。
センターの運営に関しても知恵を
借りたい」と話す。
■実情発信10年、手応え
国富の山下さん
国富町の古びた一軒家。
高い木の柵で囲われた庭では、
犬たちが元気に走り回って
いた。
「いのちのはうす保護家」では、
殺処分対象の犬や猫を引き取って
世話をし、
譲渡先を探す。
病気の老犬などを介護しながら
看取(みと)る「ホスピス」もある。
山下由美代表(46)は
「動物愛護について宮崎は
遅れていると言われてきたが、
だんだん意識が変わってきた」
と話す。
山下さんが保護活動に関わる
きっかけは、10年ほど前に
見た動物愛護を訴える写真展。
ガス室で殺処分された犬の目が
忘れられなかった。
「現実を知ることが
つらかったんです。でも、
逃げてはだめだと思いました」
県の中央保護管理所にも
足を運んだ。
刑務所のような高いブロック塀
には、動物が投げ込まれない
ように有刺鉄線が張り巡らされ
ていた。所内は薄暗く、
コンクリ―トの冷たさと、
じめじめと湿度を感じた。
檻(おり)の中の
犬たちの目からは
敵意やおびえが見てとれた。
引き取り手が
見つからない場合は、
殺処分される。
実情を伝えようと、
06年からブログで
収容された犬の紹介を始めた。
ある母犬の話が注目を集めた。
3匹の子犬を抱えた母犬は、
人が近寄る度に威嚇。
だが日が経つにつれて
自らの運命を悟り、職員に
歩み寄るようになった。
のちに「奇跡の母子犬」として
出版され、堺雅人さん主演で映画
「ひまわりと子犬の7日間」として
公開された。
自分でも保護活動をしようと、
09年から現在の活動を始めた。
生目の杜運動公園近くの土地を
借り、コンテナを置いて柵を作った。
水も電気もなく、ポリタンクの水を
運んで世話した。その後、
国富町の一軒家を借り、
24時間態勢での世話が
可能になった。
今、犬30匹、猫27匹を
保護する。
山下さんは「宮崎で制度や施設の
改善を訴え続けてきた。宮崎が
変わり始めたのは、 やっぱり
『ひまわり』の存在が大きかった」
と話した。
(土舘聡一)