さてさて無事に分娩室に入り、硬膜外麻酔をしてもらったもぐでありますが、陣痛が強く頻繁にならないため、なかなか出産にはいたらず、ぐーすかぴー3時間強ほど熟睡しておりました。


麻酔をしてしまうと下半身の感覚がなくなるため導尿カテーテル(Urinary Catheters)を初体験しましたよ。いや~本人自覚全くないのに尿が出てるってすごいです~。全然痛くなかったです。こちらの看護婦さんが『チクッとしますよ~』に相当する言葉としてよく『Pinch(つまむ)』と表現するのですが、なんかいっつもぴんと来なくてどれくらいの痛みなのかを想像する前に処置が終わることがたびたびあります。


この日は土曜日、出産予定日よりは18日も早い日のことでした。なんだかちょっと早めに生まれそうだなという母の勘はあったものの、さすがにこんなに早いとは思ってもみませんでした。


実はここ数回のエコー検査で先生から気になる質問をされ続けておりました。それは『経膣分娩(Vaginal Delivery)なのか、帝王切開(Cesarean Delivery/C-Section)なのか?』ということと、『いつ産むのか?』という質問でした。エコー検査の先生はそういった判断をせず、産婦人科の先生がどう言っているのかを聞いてくるのですが、これがなんとも不安を誘うのですよ。

今回は日本からの援軍がないのでできれば帝王切開は避けたいところなのですが、そもそも骨盤の小さいアジア人(もぐのお尻はその心配はありませんが・w( ̄▽ ̄;)w)の執刀をお医者が嫌がってすぐに帝王切開にしてしまうなんて噂も聞いているだけに、先生がなんて言うかが本当に気になるところなのですよ。

そうしてもう一つの質問の『いつ産むのか?』というのは、高血圧症(High Blood Pressure)、糖尿病(Diabetes)、Rh不適合(Rh Disease)、過期妊娠(Post-dated Pregnancy)などの時に行われる誘発分娩(Induced Labor/Induction of Labor)のことで、陣痛促進剤で計画的に分娩をするということを意味しております。

もぐとしても旦那ちゃんとしても、べびのサイズは標準内で、尚且つもぐの体調も良く、血糖値もコントロールできているので、できれば自然の流れに任せたいと思っておりましたが、この翌週の産婦人科の検診で分娩方法と分娩の時期を決めることになっておりました。

なんとなく、もぐとしては産休の兼ね合いもあったので『早く出ておいで~』とべびに言い聞かせていたところがあったと思います。そして『出てくるなら土日に出ておいで~。』そして『なるべくつるっと出ておいで~』と(笑)結果的には破水してしまったので陣痛促進剤は使うことになったのですが、きっかけはべびのGOサイン(おしるし→前駆陣痛→陣痛→破水)だったのでもぐとしては大満足なわけです。


そんなことを思い出しつつ、分娩室のベッドで横になっていると、看護婦がやってきて『なかなか陣痛が強くならないし、子宮口が開かないのでもしかしたら帝王切開の可能性もあるかもしれない。もうすぐ先生が来るからそこで判断してもらう。』と告げられます。


『ん~。ここまできてそうきたか~』と不安に思いつつ、最後の希望を捨てずに帝王切開にならないことを祈ります。もしも帝王切開になってしまった場合、旦那ちゃんに負担がものすごくかかるので申し訳ない気分でいっぱいです。しかも手術代に入院日が延長してと経費も馬鹿になりません。(アメリカでは出産にも保険が適用されるので普通の分娩だとあまりお金がかからないのです)


ほどなくして先生と助産婦さん(Midwife)が登場します。
先生は刑事コロンボのピーターフォークを髣髴とさせる穏やかそうな方で、人なつっこく話す姿にこちらの緊張もいつしかほぐれ好感がもてます。助産婦さんも恰幅の良い40代後半のベテランといった感じで安心感がもてます。


先生がすぐに子宮口をチェックすると、なんと驚いたことにすでに全開しておりました。なぜか陣痛は強くないのに子宮口は開いているというなんとも不可思議な状態だったようです。(看護婦さんは陣痛のデータだけを見て判断していたようです。)


分娩には3つのステージがあります。
第1期(First Stage)は子宮口が10cm開くまでをさすそうで、その中でもEarly Labor(子宮口が3cm開くまで、陣痛は25~45秒、休憩が5~15分)、Active Labor(4~7cm開くまで陣痛は40~60秒、休憩が3~4分)、Transition(子宮口が8~10cm開くまで、陣痛は1~2分、休憩は 60~90秒)と3段階に分かれているんだそうです。

もぐはラッキーなことに寝ている間にこの3段階を終えることができたようです。でも相変わらず陣痛は5分間隔だったりします。でも子宮口が開いたのでようやく第2期(Second Stage)に入ることができました。この時午前11時半、さすがに午前中は無理だとしても、陣痛の始まった昨日の1時から12時間以内の13時を目指して気合を入れなおします。


ようやくいきむ(Pushing)ことができるようになったわけなのですが、呼吸法を習っていないのでどうしていいのかよくわかりません。助産婦さんは陣痛が来たら『大きく深呼吸1回(吸って吐いて)、大きく吸って息を止めて10カウント、息を吐くを3セットするように。便秘のときにふんばるみたいに、お腹ではなくてお尻のほうに力を入れてね』と教えてもらいました。


麻酔が効いているので陣痛の感覚が全くありません。
助産婦さんがデータを元にいきむように言ってくれるのですが、全く出る気配がありません。正直5回目くらいまでは『本当にこんなところから生まれるんだろうか?というか、私に出せるのか?』と不安になったものです。陣痛の感覚が全くなく調子がつかめないので、無痛分娩を選択しておきながらここに来て麻酔を止めてもらうことにしました。

この時すでにお昼は回っていたと思います。この出産のピークでも旦那ちゃんに時間を聞く余裕があるのも無痛分娩ならではなんだと思います。どうして日本で普及しないのですかね~。痛いの我慢するよりも絶対にいいと思うんですけどね。


麻酔を止めてしばらくすると少しずつ痛いのがわかるようになってきました。と言ってもすでに足の感覚がないくらい麻酔は効いているので、自然分娩の何万倍も楽な痛みなんだと思います。痛みを感じることでいきむことに少しずつ慣れてきたように感じます。少しずつべびが降りてきているのかお尻のあたりがなんだかおかしな感じがしております。


今までは助産婦さんと二人でやっていたのですがここに先生が加わって三人体勢になりました。あっ旦那ちゃんはもぐへの声かけ担当とビデオ撮影係りです。なかなか頭が見えてこないので、先生はもぐのあそこを『ぐりぐりぐりぐり~』と手でひろげているのですが、これも麻酔なかったら猛烈に痛そうな処置です。

先生の処置のおかげでようやく発露(赤ちゃんの頭が膣口から見える状態。Crowning)します。『これだけやってようやく頭が見えただけか~ほんとに出るんだろうか~』ともぐの脳裏に不安がよぎるのですが、ここに来てべびの心音が不安定になったとかならなかったとかで先生と助産婦さんがあわて始めます。いや実際には落ち着いているのですが、万が一に備えて吸引分娩(Vacuum Extractor)すると言うのです。

白い半円形の吸盤のようなカップをべびの頭に装着して引っ張ろうとするのですが、一回目はうまくはまらずにすぐに取れてしまっていました。その様子を見たもぐとしては、『あんなんでべびの頭を引っ張ったらかわいいわが子がセサミストリートのバートみたいになっちゃう~』と気合が入り、次の陣痛とともに気合のいきみをみせるのでした。

※参考 バート 左から2番目
千年寝坊助


そのもぐの気合を感じてくれた先生が『彼女はいきめるからこのまま産もう』と気持ちを変えてくれてそこから旦那ちゃん、助産婦さん皆で一気に産みの体勢へ入ります。もうすぐ赤ちゃんが生まれるということで、新たに一人看護婦さんの応援を依頼していました。


赤ちゃんの頭が半分くらい見えた頃でしょうか、新しく看護婦さんがやってきたのですが、なんといきなり『ビデオ撮影は禁止ですよ』と旦那ちゃんの撮影を止めるではありませんか。あともうちょっとで産まれるのに~と思いつつ、陣痛も痛いし、お尻も重いし、あそこらへんもなんだかよくわかんなくなってきていて、こういった瞬間はファインダー越しよりも直に目で見ておいた方がいいかもなんて思いながら最後の気合のいきみを始めます。

すると、『ぬるっ』という感触とともになんだか大きなものが出たような感じがして、先生と助産婦さんが『もう一回いきんで』というのにあわせてもう一回力を入れると『ずるずるっっ』という生暖かい感触がして何か赤いものが出てきたと思ったら、かわいいわが子が『おんぎゃ~』って言ってお腹の上に乗っているではありませんか。13時18分に誕生です。

感動って言うか、なんというか、筆舌に尽くしがたいとはまさにこのことなんでしょう。生まれたてのまだぬれた髪をなでたあの瞬間を忘れないようにしたいものです。旦那ちゃんがへその緒にはさみを入れて、もぐから切り離されたべびはすぐに検査に向かいます。

ようやくビデオ撮影の許可をもらい、旦那ちゃんは生まれたての我が子の様子を見に行きます。もぐも離れたところで見ています。お尻に蒙斑があるのが見えました。体重2736gの小さな女の子でした。本当はこのあと第3期(後産、Third Stage)で胎盤が出たはずなんですが、全く気づかないうちに終わっておりました。

気がつけば先生が釣り針のようなものでもぐのあそこを縫っているではあ~りませんか。会陰切開(Episiotomy)をしたのか、自然に裂けたのかはわからないのですが、縫ってましたね~。あとで痛いんだろうな~。ヽ(T-T )ノ

結局、いきみはじめてから2時間弱なので順調なお産だったのではないでしょうか。麻酔のおかげでかなり安定して出産に望めたと思います。その後は同じ部屋でべびと旦那ちゃんと2時間ほど過ごしました。生まれてすぐの時間に触れ合うことが重要だと(カンガルーケア)母乳は出ないのですが乳首を吸わせたりして母親の実感はまだ沸かないものの、我が子が愛おしい気持ちでいっぱいでした。

旦那ちゃんは昨日から一睡もしてなくて、いろいろあって大変だったのですが、我が子の誕生に喜びいっぱいの様子です。母子ともに健康でほっと一安心といったところでしょうか。


2時間後助産婦さんがやってきて、トイレに行けというのですが、足は麻酔で笑っちゃうほどに役に立ちません。抱えられるようにしてトイレに連れて行かれ用を足すように言われるのですが、どこにどう力を入れていいかもわからず一向に出る気配がありません。仕方がないのでまたベッドに戻り導尿カテーテルの簡易版で尿を抜かれるのですが、旦那ちゃんも見ている中、非常に格好悪いったら仕方ありません。

歩けないので車椅子に乗り、べびを抱っこしてようやく4階の入院するお部屋へと移動するのでした。ここで月曜日のお昼まで(2泊3日)親子3人で過ごすことになります。