【コラボ名】 PIKA*Chu
【リレータイトル】 秘めやかな想い
【更新予定日時】 毎週月曜 23時


我が家の半年記念がきっかけでご一緒させて頂く事に相成りました。
内容は以前から二人で盛り上げっておりました【微桃でちょっと切ない桃色な蓮キョ】です。
第一章から始まり、第五章での完結を予定しております。






***







遠ざかる背中を見つめながら、腕に力を入れる。

腕の中で息を飲む音が聞こえ、心臓の音が聞こえ。

今までの怒涛のような展開が、真実であったことを知らしめる。


「つ、つるが・・・・さん!ごめん・・・なさい」

「・・・・・・・」

「ごめ、ん、なさ、い」


段々と涙に濡れる声に慰めの言葉を掛けることも出来ずに、ただただ、蓮は腕に力を入れた。

背中すら軋んでしまうのではないかと思うほどの拘束を受け入れ、キョーコは蓮のシャツに縋りつく。


「役者の、心得・・・に・・・好きに・・・なって・・・・・ごめんなさい」

「キョーコ」

「ごめん、なさい」

「キョーコ」


腕の力を弱めて、髪を梳いて、背中を撫でて。

キョーコの気持ちが落ち着くようにと、蓮は彼女の名前を優しく優しく呼び続けた。

そして涙に滲む目尻に唇を寄せて。

彼女の彼女たる精神に訴えかけた。


「俺、お腹すいちゃった」

「・・・・・・・え?」

「ご飯、作りに、来てくれる?」


鳩が豆鉄砲を食らったかのように呆ける顔から、隠した意味を汲み取れ切れていないのだろうことが窺い知れる。

涙の痕がつく頬を拭って、もう一度言葉を重ねた。


「キョーコのご飯が食べたいって建前で、もう一回うちへ誘ってるんだけど」

「・・・・・・」

「良いかな?」

「は、はい!敦賀さんのご飯のことなら何でもします!!」


思わず力いっぱいそう答えるキョーコが彼女らしくて、微笑が深くなった。

誰がどこでどう、見ているかわからないこの状況下で、先程の続きを推し進めるほど浅はかではない。

浅はかではない、つもりだった。


「ありがとう・・・・・」


それでもやっぱり消化出来ない想いから・・・・・・もう一度身体をきつく抱きしめた。

受け入れられているということくらい分からないわけではない。

それでも二人並んで肩を寄せ合うには、絡み合った出来事が多すぎて・・・・・その心は遠い。


叶わないと思っていた少女が腕の中にいる、喜び。

恋焦がれていた少女の口から漏れた慟哭を聞いたときの、悲しみ。

自分の全てを捧げたいと思っていた少女の唇がまたも奪われた、怒り。


泥を舐めるように後味が悪く。

楽園にいるかのように心が浮き立つ。



まずやらなければならないことは、ただ一つ。



「もう一回順序立てて、話をしよう」

「じゅんじょ・・・・?」

「そう、順序。きっと俺たちは思い違いをたくさんしてる」


こてん、と見上げる顔にキスを一つを送る。

絡みに絡み合った出来事を、一つづつ、一つづつ、丁寧にとき解いて・・・・

腕の中の少女と共に歩める人生にしたい。


決戦は、今夜。

負けられないし、屈せない。


抱きしめた腕を開放して、いい加減ここから移動しようと提案すると、きゅぅっと捕まれていたシャツがそのまま引っ張られた。

想いを言葉に出来ないキョーコの顔に、助け舟を出す。


「どうしたの?」

「あの・・・・・敦賀さんの、きょーこちゃんは・・・・・誰ですか?」


尻すぼみで消え去ってしまいそうな薄い声で、落とされたのはまさかの真実。

絡み合った出来事の中枢と勘ぐっても良いほどの衝撃だった。

返す言葉を振り絞ったが・・・・・・きちんと言葉になっていたかどうか。

蓮には判断がつかなかった。


「君、だけだ」


何故なら、反射的にもう一度、キョーコを掻き抱いたから。

想いに色をつけるなら、きっとこの想いは、限りなく透明でいて、酷く不鮮明な色をしているのだろう。













敦賀さん宅へ向かいますー。