【コラボ名】 PIKA*Chu
【リレータイトル】 秘めやかな想い
【更新予定日時】 毎週月曜 23時
各章を二週間で終了しながら次の章に進む予定です。
長くなった章は、同週木曜23時にも更新がありますので、お楽しみ下さいませ、


我が家の半年記念がきっかけでご一緒させて頂く事に相成りました。
内容は以前から二人で盛り上げっておりました【暗く切ない桃色な蓮キョ】です。
第一章から始まり、第五章での完結を予定しております。



では、続きをどうぞ!




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ノックをするも応答のない、扉の奥。
微かに聞こえる声は、誰よりも逢いたかった彼女の声。
最低限のマナーとして、ノックはした・・・と自分に言い聞かせて、ドアノブをまわす。



ちんまりと佇む様は儚げで、庇護欲おも掻き立てるのに、それ以上に自分の苛烈ともいえる感情を誘い出す。

ゆらゆらと、誘うように。
捕食されることを、望むように。

瞳に浮かぶ涙さえ、甘美な毒薬のようだと思ってしまうのは、彼女という存在が不足しているせいだろう。
この飢餓は一体どこまで彼女を貪ればすむのだろうか。
そんな思惑に気付かないふりをして、座り込むキョーコに声を掛ける。

「どう、したの?」

零れ落ちてしまいそうな位、見開いた瞳には      驚愕と拒絶の色が入り混じっていた。
仮初の兄妹であったころには、向けられなかったその負の感情は、ナイフのように蓮の心に突き刺さる。

「どう、したの?」
「・・・・・つる、が、さん」
「うん?」

その瞳の色から逃れる為に、視線を逸らしてドアを閉めた。
もし、拒絶の言葉が襲ってきたら・・・・というようなことを、あえて考えずに、努めて平然を装うとしたのだが。
まるで千里眼を持つように、キョーコは蓮を暴いていく。

「敦賀さんこそ・・・・ど、したんですか?」
「ちょうど通りかかって、ね」
「何か、ありましたか?」
「・・・・・いいや」

核心の大枠を撫でるように問われ、言葉に詰まってしまう。
沈黙は肯定だ     そんな遠い昔のやりとりを彼女は覚えているのだろうか。
記憶の隅に追いやれがちの瑣末なことでさえ、きっかけすらあれば鮮やかに甦る。
そんな出来事は最上 キョーコという人間との事柄だけだった。

「どうも、しないよ」
「なんだか、思いつめた顔されてませんか?」

そういう自分の顔色は蒼白なくせに。
自分のことよりも相手を気遣うのは素晴らしい美徳だが、時と場合によっては良し悪しだ。


誰に抱きしめて欲しいのか。


その真相を問い詰めるべく、少しづつ、少しづつ。
お互いの距離を短くしようとする蓮。
それに呼応するように、同じ距離を離れるキョーコ。
小さな空間で永遠に交わらない光景はさぞかし滑稽なことだろう。

「最上さん、本当に大丈夫?」
「もちろんです!ですから・・・・」
「ですから?」
「こっちに来ないでください・・・・ッ!」

飛び込んできた言葉の破壊力をどう表現すれば良いのだろうか。
止まる思考で検分するのは、彼女の様子。
声に滲む感情を読み取れない程、ノーコンな役者ではない。

恐怖と拒絶。
その名前がぴったりと当てはまる、小さな悲鳴。

遠い昔の『久遠』としても。
仮初の兄『カイン』としても。

浴びることのなかった、その感情。
それは闇の中を漂っていた自分自身にとって、冷水を浴びるほどの衝撃だった。

「つ、敦賀さん!あの、これは!」

飛び出た言葉の鋭利さに気が付いたのだろう。
慌てて訂正をしようと思わず歩み寄ってしまったキョーコを捕まえ、薄い背中を壁へと押し付けた。

「・・・・ッ!」

思わぬ衝撃に息が詰まったキョーコに蓮は覆いかぶさるように身を近づける。
零れた吐息と慣れ親しんだキョーコの香りに、硬直していた心臓が解きほぐされていくように蓮は感じた。
恋焦がれるといった感情ではすまない飢えを満たすように、唇で触れていく。

髪に。
耳に。
頬に。
首筋。

小刻みに震える身体に合わせて。
シャツをきゅっと握り締める仕草すら、愛おしくて憎らしい。
頬と頬をすり合わせて、囁いた声は・・・・・自分でも驚くほどの低くどす黒いものだった。

「誰に、抱きしめられたいの?」
「ひゅ・・・・っ」
「答えて、じゃないと・・・・・」

折角、君に宥められて落ち着いていた闇の部分を、自分自身の手で解放してしまいそうだった。
合わせた瞳の奥に揺らめくのは、先程と同じ負の感情。
今までの関係から、少なくとも自分は好意的に彼女に受け入れられていると思っていたのは、幻想だったのか。

「最上さん、お願い」
「言ったって・・・・・無駄です」

奥歯をぎりりと噛み締めるように、唸る彼女。
他人という境界線を突きつけられて、決壊したのは『敦賀蓮』としての理性。
今までのように闇に囚われての結果ではなく、自ら手綱を緩めた。

初めて合わせた唇は、背筋が震える程       甘美なものだった。












超微桃っぽいことは次なのですー


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木曜23時に続きます・・・・