小泉進次郎議員×与謝野馨大臣@衆議院・内閣委 | あはれ

小泉進次郎議員×与謝野馨大臣@衆議院・内閣委


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9日の衆議院内閣委員会にて、小泉進次郎議員が質問に立ち、与謝野大臣に対して税と社会保障の一体改革について質しました。小泉議員が冒頭述べている通り、先月7日に予定していた質問が、時間切れで(主に枝野官房長官が不明瞭な答弁を繰り返したためかと)終わったため、急遽与えられたこの日の質問時間で改めて与謝野大臣への質疑を行ったと。

自民党も参院選挙のマニフェストで消費税増税について触れているので、大きな方向性で現在の菅内閣と異なることが少ない中、質疑の中で特に小泉議員が危惧していたのは2点。当面の消費税増税で社会保障制度が磐石になるという状況にはないということを、正直に国民に伝えなければ、消費税増税がなったとて今現在よりさらに国民不安が増してしまうのではないかという点が一つ。もう一つは、世代間格差の視点から、子育て世代でもある若い世代の将来不安についてもケアする必要があるのではないかという点。世代間格差については、与謝野大臣が後期高齢者医療制度を引いて、貯蓄のある高齢者世代には応分の負担を求める考え方を示されていました。

与謝野大臣以外には、枝野官房長官に対して、公務員制度改革を行う民主党内閣の姿勢として求められる、政務官の給与返納について質していました。私が聞いた感想では、この日答弁にたった4閣僚のうち、枝野官房長官の答弁は、早口で回りくどく、酷く理解し難い内容でした。しかしながら、そんな中でも「4月中(またはそれより前までに)には結論を出す」という趣旨の答弁を引き出せたというのが、一つあったかと思います。

その他、玄葉大臣とは国家戦略室について、蓮舫大臣とは、規制仕分けの“仕分け”という言葉についてなどなどの質疑がありましたが、1時間の長丁場でしたので、とりあえず、若い世代の方々に聞いて欲しい、見て欲しい(特に横粂議員)小泉議員と与謝野大臣との質疑についてのみ起こしました。

税財政や社会保障制度の個別の是非はともかくとして、小泉議員が特に注力したいとしていた分野の一つである社会保障について、議員自身がどのような考え方を持っているかということを知る意味でも、非常に興味深い質疑だったと思います。

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2011/3/9 衆議院・内閣委員会


小泉

自由民主党の小泉進次郎です。きょうは1時間よろしくお願いします。2月7日の予算委員会で与謝野大臣を要求大事の一人としてお呼びをしながら、結局時間切れで質問ができなくなってしまいました。その節は本当にすいませんでした。

ですので、きょうは同じ過ちを繰り返さないように、まずは最初に与謝野大臣に質問をしたいと思いますが、私も実は質問しにくい質問なんです。それはどういうことかというと、この前の予算委員会の質問でも同じようなことを申し上げたんですが、今、政治不信、政党不信といってもいいと思います。そういう中で、私はその責任は与党野党関係ないと思っています。民主党ももちろんある。でも、自民党にもある。その中でも特に私は、自民党自身が過去の反省を、自らの口で国民に説明をもっと大きな声でしなければいけない。そうしないと自民党に対する信頼は帰ってこない。私はそう考えています。

そこで、今まで民主党政権に入る前に、自民党政権の中枢におられた与謝野大臣に、いくつかお聞きをしたい質問がございます。きょうその質問をする前に与謝野大臣の経歴を改めて拝見したんですが、94年に文部大臣をお務めになって、自民党の政調会長代理、内閣官房副長官、通産大臣、自民党の政調会長、経済財政政策金融担当大臣、自民党政調会長、内閣官房長官、拉致問題担当大臣も兼任。経済財政政策規制改革担当大臣、経済財政政策担当大臣、そして、財務・金融・経済財政政策担当大臣。そして、今の民主党政権の役職に就かれております。

私は自民党政権の一つの反省は、本来であれば発行することが認められていない赤字国債を、麻痺状態ともいっていい、毎年発行して、し続けて、これだけの巨額の国と地方の借金を積み上げてしまった。そのことに対する反省を語らなければいけないと思っている中で、大臣ご自身は当時の反省なり、自責の念を込めて、率直な認識を伺いたいと思います。

与謝野

私が当選したのは昭和51年。その後、大平内閣、福田内閣と大平内閣といきまして、これは財政危機だと言った時の国債残高が34兆円だったわけです。それでも大平さんは34兆円の債務があるということを、非常に気にされて、一般消費税ということを言われましたが、選挙で敗れました。

その後、ずっと財政の問題は放置されたわけですけども、中曽根内閣になってから、赤字国債を発行するのだけはやめようというので、竹下大蔵大臣が赤字国債脱却というものを目指してやられたわけですが、これは実は、バブルの影響もあって、税収が非常に大きかったために、脱却することができて、で竹下内閣ができた後は中曽根内閣が失敗した売上税の代わりに現在の消費税というものを、なんとかやりとげたわけでございます。

その平成8年に、橋本内閣ができまして、私は官房副長官になった。これは、その時、梶山官房副長官から「与謝野お前は財政再建をやれ」というので、財政構造改革法というものを作りまして、国会まで通ったんですけども、橋本内閣は減税を断行してしまって、小渕内閣の時に凍結になった。

これは、幾つかの反省点があります。それは、負担を語らないで社会保険を伸ばしていったということ。景気対策を語るときに、公共事業を中心に有効需要を増やすという政策をとり続けてきたこと。それからもちろん、その背景には、政治家が税を通じて国民に負担をお願いすることに、大変恐怖を感じていた。その恐怖は小選挙区になって、さらに加速されたということを今、非常に自らの反省を含めて残念に思っております。

小泉

率直なご意見をありがとうございます。一つは、負担を語らないで、社会保障を拡大・拡充し続けてきたこと。もう一つは公共事業依存。三つ目に税の負担を小選挙区の導入以降、国民に対して求めるのを恐れたこと。この3つが与謝野大臣の自民党政権時代の反省だと思います。

二つ目に私は質問しようとしたところはまさにそこだったんです。その一つは二、三十年程前から少子高齢化時代が到来することがわかっていたにも関わらず、それに対応できるような社会保障制度を構築することが出来なかった。この反省も私は自民党がもっとしなければいけないことの一つだと、私はそういう認識でいます。だからこそ、与謝野大臣にきょうはあえて、私も自民党の一員でありながら、自民党についての反省を元自民党の先輩でもある与謝野大臣にお伺いしたわけですが、今は与謝野大臣は、菅内閣の社会保障・税、一体改革の責任者であります。ということは、今述べた反省を活かして、同じ過ちは繰り返さない。これが大臣に与えられた使命であると思います。

それを考えると、今大臣があげた三つ。負担を率直に国民に語ること。そして、2つ目の大臣の考えですと、公共事業に依存したような景気対策はもうやらない。三つめが例え選挙制度が今のまま続こうと負担を国民に訴えることを忘れない。これがこれから大臣が来月まとめる社会保障のあるべき姿、基本方針を纏める中でのベースとなる認識と、私は今捉えました。とすると、大臣は消費税の部分、これは国民におそれずに訴える方向で来月纏めると。そういうことで宜しいですか?

与謝野

私は国民と国というのを区別しておりません。国即国民だということを考えておりまして、国民が国に依存するとか、寄生するということはありえないと思っております。そこで税・社会保障一体改革やるときの原則は、まず正直であるということ。やっぱり国民に負担をお願いすべきことはお願いすることであると同時に、自民党もそうでしたけど、麻生内閣の最後にできた、安心社会実現会議の報告書、それから民主党の藤井先生が作られた藤井調査会(税と社会保障の抜本改革調査会)の報告書。思想としては同じベースになっておりまして、日本の社会は大金持ちを作る必要はないと。そして日本の社会は貧しくて、その困窮に泣くような人は作りたくない。やっぱり日本では中間層がしっかりとした社会。これが健全な社会だという思想が、これが麻生内閣時代の安心社会実現会議の思想にも流れておりますし、藤井調査会の報告書にも流れている、○×△□な思想だと思っております。私はそういう思想を大切にしながら、社会保障・税一体改革の案を作りたい、また作らなければいけないと考えております。

小泉

端的に、その中間層を多く作り、大金持ちは作らない。それが安心社会実現会議の基本的な認識だというご答弁でしたが、そういう社会保を作るこれからのまず前提として、消費税の負担をお願いせざるをえない。そういう認識で良いですか?

与謝野

我々がスタートしたこの借金財政、どっかで引き返さなきゃいけないということは、自民党もあらゆる政権が思っていたことだったわけです。しかし、国の信用は絶大で、借金は幾らでもできたと。金利はあがらないと。国民の貯蓄というものは、毎年の国債発行に耐えるだけの貯蓄をしたと。しかし、きっちり数字を見てみますと、そろそろ限界にきていると。国民の純金融資産と今の公債発行残高の隙間は、ひとによっては色々と計算が違いますけども、77兆円ぐらいしかないっていう方もおられるわけですから、毎年44兆国債を発行していれば、2年にもみたない、残高しかない。マクロ的に見れば、そういう現状であります。

そういう状況を続けていけば、国債の国内消化というのは不可能と言うことになってまいります。当然、金利は上昇します。金利上昇は、個人にとっても企業にとっても、銀行の保有する資産においても大打撃を与えます。そこまでいってはいけないというのが私の信条でございます。

小泉

お話を伺っていると、その言葉の奥にあるメッセージというのは、段々明確になってきたなぁと思います。自民党も、当面10パーセントに消費税を上げると、これは参議院選挙のマニフェストにも書いてあります。私はおそらく与謝野大臣も同じような認識だと思っておりますが、そして菅総理も与謝野大臣を起用されたのは、そういう部分での期待があったと思います。ただ、私はその中で、危険だなぁと思うのは、いま国民の中で、消費税を上げたら、それで社会保障の給付やサービスはよくなるんだと。社会保障の綻びはそれで解消されるんだと。そういった誤解を与えかねない雰囲気があると思います。私はそこを、大臣が先ほど仰ったように、正直に語らなければいけない。毎年27~8兆円かかっている社会保障、たとえ全額を消費税が10パーセントになったところで、回したって、25その程度でしょう。つまり、それだけ上げたって、今やっているサービスを漸く恒久財源でやれるか、その議論にすぎないということを、もっと正直に語らなきゃ、いざその負担をお願いした時に、話が違うじゃないかと。そういう空気ができたとき。私は今の政治不信以上に、大きな失望というか、不信の極みに達してしまうんじゃないかという、私はそういう懸念を持っています。大臣の認識いかがですか?

与謝野

小泉委員のご指摘は、まさにその通りだと思っております。いま社会保障で、かかっているお金は国民はあまり意識しておりませんけども、年金に55兆、医療に34兆~5兆、介護に10兆、これはどっから出てくるかは別として、国民が必要としている社会保障3経費というのは55兆、35兆、10兆でちょうど100兆円必要なわけです。で、改めなければいけないのは、日本の社会保障制度が破綻しているという人がいるんですけども、現在はまだまだ破綻はしておりません。現に、100兆円のお金を払えるだけの、システムを運営しているわけです。しかし、先ほど少子高齢化を見誤った。その通りなんですが、少子高齢化が進んでいきますと、この100兆円が減るんではなくて、増えるという方向が間違いない。ですから、最初の理念はやはり、まず今の社会保障というのは破綻していない、だけども、続けていくことができるのかと。持続可能性っていうのは、我々が目指さなければいけない第一の原理。

それから、いま日本の国民の負担率は税と社会保険料で34~5パーセントだと思いますけども、借金で先送りしているのが、10パーセントから12パーセントぐらいありますから、やっぱり世代間の公平と。で、小泉さんと私の決定的な違いというのは、私はあの世に行けば「グッドバイ」と言って逃げ切れる世代なんです。小泉さんの世代はどうやっても逃げ切れない。だから逃げきれる世代と、逃げ切れない世代というのが、実はあって、やっぱり逃げ切れない世代のために何らかのことを今の世代はやっておかなければいけないということが二つ目。

第3の点では、格差とか貧困とか、こういう問題はあるっていう人もいるけど、ないっていう人もいるんですけども、やっぱり現実問題として非正規雇用が1200万人いるとか、年収200万以下の人がこれだけいるとか、いう話を聞く時に、やっぱり自民党がかつて熱心に所得再配分政策をやってきた、いわばその部分については社民主義的な私は政党であったと思うわけで、やっぱりこれからの政治は、そういう社会全体の光があたっていない部分にきちっとしたことをやると。

先ほど俗な言葉で申し上げました通り、お金持ちなんか作る必要はないと。困窮して貧しさになくような世代を、人たちを作ってはいけないと。やっぱり中間的な世代というものを、健全な中間世代、世の中を作るってことが、やっぱり我々の使命感でなければならないと、そういう観点に立つのが大事だと思っております。

小泉

二つ目の世代間の問題については、私からは言いにくいことを言ってくださってありがとうございます。まさに大臣仰ったように、私の世代は逃げ切れないんですよ。今から40年後、2050年。私は69歳です。いまの大臣とほぼ同い年。今の大臣は、若い世代・現役世代3人に支えてもらっている。私が大臣の年になるときに、私は一人の現役世代に支えてもらわなければいけない。これから、社会保障税一体改革の中の議論で、私はこれも恐れずに正直に言わなければいけないと思うのは、やっぱり世代間の格差、この公平性の部分、また持続可能性も考えた時に、高齢者の皆さんに負担をお願いしなければいけないこと。給付の抑制の部分。そして、若い世代の負担の軽減、この方向性にいかないと、どう考えたって、これからの将来の世代、そしてまだ生まれていない世代、この人達には希望を与えることはできない。私はその認識でいますが、そういった認識を下に、これからの議論を進めて頂けますか?

与謝野

高齢者を大事にしたり、尊敬したり、いたわったりすることは大事です。しかし、例えば貯蓄の分布をみますと、子育て世代は殆ど貯蓄がない。50を過ぎて、55、60といくと貯蓄が非常に持っている。で、実際にお金が必要なのは、子育て世代。やっぱり、私も爺さん世代に段々迫ってきたんですけども、やっぱり高齢者の世代も、当然もっている資力に応じて負担をするというのは当たり前のことなんです。

私が去年非常に残念に思ったのは、後期高齢者医療制度が非常に非難の対象になったことなんです。こんなによくできた制度はないと私は思ってました。去年の統計だと33兆円の全部医療費の中で75歳以上の方の使う医療費は11兆、1/3だった。これは、75歳も過ぎてくると、あちこち体が痛んでくるのは当たり前の話なんですが、じゃぁ11兆を誰が負担したのか。1兆円は高齢者の窓口ですよ。5兆円は税金です。4兆円は各健康保険から貰ってきたお金なんです。残りの1兆円を高齢者の保険で持ってくださいと。ってことは1400万人いる、75歳以上の方に、皆が9兆円もってるんだから1兆円もってくださいというのは当たり前の話なんです。それを、あたかも高齢者を無用にいじめているとか、高齢者に無用な負担をかけているという議論をすること自体、私はナンセンスだと思っていました。

小泉

熱が入って後期高齢者医療制度までお話をして下さったんですが、後ろで蓮舫大臣、玄葉大臣と苦笑いで目を合わせていたのがなんとも印象的でしたが(議場笑い)、私もあれは世代間のことを考えた時に、負担のあり方を明確にしたと、そういった部分で、そこの部分評価されるべきところもあるんではないかなと、私はそういうふうに考えています。冒頭、与謝野大臣と、社会保障、また今後の財政についてもお話をさせて頂きましたが、来月とうとう基本方針をまとめるということですから、今お話をされた負担を恐れず、正直に現実を語り、日本の将来のあるべき姿を、若い世代も希望を持てるようなそういう方針がでるか、今後の議論、注視をしていきたいと思います。

(大臣政務官の給与返納についての話へ)