農家に代わり雑草ムシャッ

 高齢化や後継者不足などで放棄された耕作地を抱える農家に牛を貸し出し、雑草を食べさせて土地を管理する放牧実験に、県が今夏から乗り出す。荒れた農地は、周辺の畑などで鳥獣被害が起きる原因にもなっており、県畜産課は「牛はおとなしいうえによく働く。人手不足に悩む農家で活躍するはず」と期待している。放牧による耕作放棄地対策は山口県など全国で導入が進んでいるが、県内では初の試み。


 県によると、2005年の県内耕作放棄地は4755ヘクタールで、この20年間で倍以上に増えた。全農地の15・3%を占め、全国平均を5・6ポイント上回っている。雑草が生い茂った土地はイノシシが出没したり、病害虫の発生源になったりして、周辺の農作物に被害が及ぶこともある。


 県畜産試験場(三木町)で、雌2頭を電気柵や屋外に慣れさせる訓練をした後、8月ごろから農家に有料で貸し出す。牛の移動などにかかる実費として、月2万円程度の費用負担を予定している。県は、2頭を放牧すれば、1か月間で20アール分の雑草を食べるとみており、草の枯れる冬場まで放牧場所を代えながら実験する。


 各市町の農業委員会などを通じ、希望する農家の中から3戸程度を選定。お年寄りが多い中山間地域を中心に、機械や人手による草刈りが難しい農家を優先する。


 同課は「実験で評判が良ければ、牛の数を増やしたい。将来的には、農家側が自主的に取り入れるようになれば」としている。


(2008年4月4日 読売新聞)