「まずは“川下”から」と、“農家が野菜を売る道筋”を作ることから始めた。国立に開いたレストラン「農家の台所」。農家風店内には、発泡スチロールの「トロ箱」で栽培した野菜が並ぶ。隣にはサラダバー。若手社員が「これは鈴鹿市の近藤ファームさんが作った『フルーツキャベツ』。甘みが抜群です!」など、産地の蘊蓄(うんちく)や野菜の個性、生産者のこだわりを丁寧に説明する。


 地道に農家を回って築いた全国約100軒のネットワークのうち、毎日約20カ所から野菜が届く。オリジナルの野菜料理が豊富で、連日大人気だ。


 ◆従来イメージ破壊

 「こだわって作るなら高く売れて当然。客が納得して金を出すような売り場を作って『ちゃんと売る』ことで、生産者と対等の信頼関係ができる」


 店内で水耕栽培をし、そのスペースのリース事業を行うなど新たな収入源の可能性を探りつつ、農家の顔写真を選挙ポスター風に仕上げてズラリと張り出すなど、従来の農業イメージを壊す工夫を随所に仕掛ける。


 「野菜がおいしいだけじゃダメで、消費者は知的好奇心を満たしたい。食べる以外の付加価値をいかにつけるかが課題であり、アイデアマンである僕の本領を発揮できる分野だ」


 7月に立川市に開いた「大根1/3本からお届けします。」というユニークな八百屋も、量り売りや宅配も行う顧客志向のサービスが受け、ファンが増加中だ。


 「われわれのトロ箱栽培が東京の都市農業を変える!」と宣言。9月に手に入れた約450坪の自社農園を「トロ箱で野菜を生産する、日本一のハウス施設に育てる」計画だ。トロ箱野菜の販売は「小さな畑を土ごと売る」ことで野菜作りの負担を最小限にするという新発想。

2007.12.28 06:20