経済協力開発機構(OECD)が10月23日に発表したレポート『OECD諸国における農業政策:監視と評価2007』が、先進国による農業補助金が依然として途上国農産物の競争力を阻害しているとの見解を示した。


 レポートを書いた農業政策専門のStefan Tangermann研究員によれば、OECD諸国による昨年の農業補助金は、総計2680億ドルにも上った。


 補助金の額には、各国でかなり差がある。2004~06年において、ニュージーランドでは農家収入のわずか1%が政府からの補助金だったのに対して、米国・メキシコでは14%、カナダで22%、EUで34%、日本で55%、アイスランド・ノルウェー・韓国・スイスで60%以上などとなっている。


 また、米・砂糖・牛乳・羊肉・穀物・ひまわり・小麦に関しては、まだかなりの補助金が支給されている。


 しかし、驚くべきことに、OECDのレポートには米国産などの綿への補助金の問題が触れられていない。Tangermann研究員は、OECD加盟国からの反対によりレポートに盛り込むことができなかった、と釈明した。


 ただし報告書では、いくつかのEU諸国で、生産高にリンクした補助金から農家への所得保障へという好ましい変化が見られたとしている。


 先進国の農業補助金問題は、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドで問題になっている。ブラジルのWTO大使であるClodoaldo Hugheney氏は、EUでは2003年の「共通農業政策改革」によって一定の進展があったが、米国・日本・スイス・ノルウェーではほとんど改革がなされていない、と語る。


 ドーハ・ラウンド農業問題交渉のクロフォード・ファルコナー議長も、米国は(現在の300億ドルから)130~164億ドルぐらいまで補助金を減らさなくてはいけないと主張していた。


 先週行われたドーハ農業問題交渉では、補助金カット方針について米国が触れることはなかった。しかし、これまでのところ、170億ドルよりも補助金を下げることは不可能だとの立場を繰り返し明らかにしている。


 先進国の農業補助金問題について報告する。


【ジュネーブIPS=ラビ・カンス・デバラコンダ、10月23日】