農家の高齢化や後継者不足などで遊休農地が増えていることから、県は、企業の農業参入事業を始めた。実施主体となる市町村に受け入れを打診したところ、ほとんどの市町が応じて企業の参入農地区域を設定。県は広く企業に農業参入を呼び掛けている。


 国は2005年9月、企業が農地を借りられるように農業経営基盤強化促進法を改正した。


 この改正で参入できるようになったのは、企業やNPO法人、学校法人、社会福祉法人などの法人。市町村が農地の貸し付けをする区域を設定した上、法人が農業を行うことを旨とする協定を市町村と結べば参入できる。近畿地方では兵庫県ですでに6法人が参入しているという。


 この規制緩和に合わせ、県は貸し付け事業の実施主体となる市町村に参入区域の基本構想の策定を呼び掛けたところ、みなべ町と太地町、北山村を除く27市町が参入区域を設定した。県によると、田辺市では農業振興地域の農用地区域内にある遊休農地であれば企業の参入を受け入れるという。


 県は企業の参入を呼び掛けるため、県のホームページでの紹介を始めている。今後、県内建設業を対象にしたセミナーで事業を案内したり、企業の森事業に参画している企業に呼び掛けたりしていくという。


 また、企業が森林保全に取り組む「企業の森」事業が順調なことから、新たな取り組みとして農業版「企業の農地」の制度化を検討している。地元の組織が農地を借りて整備し、企業の福利厚生や社会貢献などで農業体験をしてもらう制度にする考え。県新ふるさと推進課は「遊休農地の対策は難しいが、支援策を考えながら地域活性化につながる事業を展開していきたい」と話している。


 県内では、農家の高齢化や農作物の価格低迷などで耕作放棄地が増えている。市町村が農業振興地域整備計画を定めた区域の農用地で、過去1年以上作物を栽培していない耕作放棄地は06年12月現在、国の調べで県内3万2401ヘクタールの農用地のうち、5・5%にあたる1795ヘクタールあった。全国平均の3・5%を上回っており、田辺市で3・3%、新宮市で11・2%、白浜町で5・9%、那智勝浦町で39・6%が耕作放棄地だった。


2007/10/8  紀伊民報