僕の愛しい監察官は、この真選組の中でも彼の右に出るものはいないと言う有能さを発揮している。

そんな有能な彼がどうしても敵わないのが、この真選組を束ねる将の補佐官である「鬼の副長」と異名をとる人物だったりすることも否めない事実で。


そうしてその補佐官たる「鬼の副長」に対して子供みたいに脅えながらも懸命にその男の期待に応えようとする姿をいじらしく思いながらも、僕の心の奥底に眠る口に出すのも憚(はばか)られるような想いは消えることはなく。


こう言う事を考えてしまっている時点で、僕ってもの凄く子供なんじゃないだろうか・・・だとかが頭の中を環状線よろしく、ぐるぐると回ってしまっている。



「ああもう、ダメだダメだ!」


「えっ!俺そんなにダメなんですかっ!先生!俺まだ花の二十代よ?おムコにも行けないで散って逝かなきゃなんないの?」


「え?ちっ違う違う!安心してくれたまえ、近藤さん。君は首から上の病気ではこの先七十年は死ねんだろうよ。」


「良かったですねィ、近藤さん。病魔にも嫌われちまうほどのミソってこってさァ。いやいや俺にゃあ真似できねぇときたもんですぜィ。」


「ちょっと、待って~~総悟ォオオォォ!それはそれでガラスのハートが傷ついちゃうでしょうっ!」


「大丈夫。壊れそうなものばかり集めちまうのは十代だけでさァ。二十代に小指だけで引っ掛かってる『だけの(強調)』近藤さんには縁も所縁(ゆかり)もない話ですからご安心を。」


「イヤァアアァアァァァ!総悟!そういう可哀想な俺をプロデュースしないで!いろんな意味を込めて、マ・ジ・で!」


「うるっせぇなぁ、近藤さん。流感の予防接種の事前診断が嫌だっつーから俺たちがついて来たんだろうがよ。そんくらいでビビってんのかよ、頼むぜマジで。それから総悟、近藤さんは今カウントダウンに入っちまった二十代を満喫してぇんだから、そういうデリケートな部分に触れちゃならねぇってあれほど言ったろうが!」


「ああっ!トシィイィィィ!今カウントダウンって言ったよね?言っちゃったよね?それ、今日一番のザックリクオリティーじゃなくね?」


「あーハイハイ。鴨太郎、そこの馬用のデッケェのでブスーッと一発やっちゃってくれや。五月蠅くて堪らねぇ。」


「イヤァアアァアァァ!トシッ!いつからサディスティック星の副長になっちゃったのォオォオオォォオ!」


「甘ぇな、近藤さん。俺ァそもそもいたぶる方専門だ。」


「そう・・・俺も毎晩敵わねぇんでさァ。」


「バッ・・・総悟!そういう事をここでばらしてんじゃねぇっ!」


「君たちは、診察を受けに来たのか、ネタ合わせをしに来たのかどっちなんだ。診察なら今すぐに静かに受けてくれたまえ。ネタ合わせならまだまだこの程度では笑いは取れないと思って精進したまえ。」


「すげぇな、鴨太郎・・・。」

「すごいですな、先生・・・。」

「すげぇや、伊東さん・・・。」


「変なところで妙にハモるのも辞めてくれないか。」




僕は、山崎くんのことを考え始めると診察のことすら頭になくなってしまうのかと、自分の医者としてのプロ意識に大きくバツ印をつけてしまいたい気分だった。



「局長~。終わりました~?」


この声を聞くだけで僕の鼓動がとんでもない位に早鐘を打ち始めていた。