酒井 邦嘉
言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか

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 見るからに難解そうなタイトルの本ですが、読んでみるとこれがけっこう面白かったです。

 この本のテーマは、人はどのようにして言語を話すようになるのか?そしてそのときに脳のなかでは何が起こっているのか??という問題。

 この難問については、言語学者のチョムスキーが打ち出した説を中心に、あーでもないこーでもないと、いろんな人たちが議論を戦わせてきました。チョムスキー説の要点は、人間の脳にはもともと言語を習得するための構造があらかじめあって、そのためにどの国の言語も似たような文法規則を持っているのだ、というもの。それがなぜこんなに議論をまきおこしたのかというと、ただ単に、これまでその正否を確認する方法がなくて、いつまでたっても白黒をはっきりさせられなかったからでした。本書は最近の脳科学の成果をふまえながら、人が言語を習得するとき脳では何が起きているのかという謎に挑む、知的好奇心を刺激するスリリングな本です。

ps.
 イラク戦争とのからみで最近なにかと話題のチョムスキーですが、この本ではじめて、彼の言語学者としての主張を知ることができました。