林 道義
ユング思想の真髄

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ユング思想の解説書は数多くあるけれど、彼の思想全体を、その学問的方法論まで含めてこれほど明確にまとめた本には、お目にかかったことがない。本書がどれほどユング思想を幅広く解説しているかは、目次を見ただけでもよく分かる。

1章・ユングにとっての父性と母性
2章・ユング思想のルーツ
3章・臨床家としてのユング
4章・元型論
5章・学問的方法論
6章・対立物の結合
7章・シンボル的な生
8章・神とゼーレ
9章・神話としての世界観

いままでのユング思想の解説書といえば、《元型》と《象徴》と《記号》の違いを説明して、それに書き手自身の体験をチョコチョコっとプラスする、というパターンがほとんどだったように思う。それに対して本書では、ユングの学問的方法論の説明にも1章を割り当てて、さらにあまり充分に説明されることの少ない「対立物の結合」という彼の晩年の思想も盛り込まれている(6章)。
ユング思想の全体像をたった一冊で把握することのできる、数少ない解説書。ただ、筆者自身の「易占い」のエピソードが玉にキズ。。。