J・F・リシャール, 吉田 利子
問題はグローバル化ではないのだよ、愚か者―人類が直面する20の問題

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見るからにキワモノ的なタイトルの本だけど、内容は今後数十年の間に起こると予想される問題に、どのように対処すべきかを論じる、極めて真面目なもの。せっかくの本なのに、なんでこんなヘンテコな日本語タイトルをつけちゃったんだろう??

筆者はまず、近い将来に予想される世界的な問題について、明快な見取り図を示します。問題は大きく分けて2つあると筆者は指摘します。「爆発的な人口増加」と「ニューワールドエコノミー」。これらにより、今後数十年のあいだに、地球温暖化をはじめとする環境問題や食料問題、また国家間の経済格差など数々のグローバルな問題がさらに深刻化します。ところが、現在の国家システムや国連システムなどでは、問題解決のスピードがあまりに遅いため、早急に何らかの手をうつ必要のあるこれらの問題に対して、うまく機能することができてません(そのいい例が、地球温暖化会議をめぐる、ウンザリするような各国の対立に如実にあらわれています)。

以上のことを指摘したうえで、著者は、意思決定までに気のとおくなるような時間のかかるこれら従来のシステムにかわって、国際的なコンセンサスを迅速に形成するためには、インターネットをはじめとする情報ネットワークを駆使した「ネットワーク型統治」しか方法はないと指摘します。

コンパクトな本ながら、グローバルな問題についての明快な見取り図が示されていて、読みながら頭のなかのもやもやがスッキリ整理される思いがしました。筆者の提案する「ネットワーク型統治」の概念にはまだまだ問題点(たとえば費用は誰が負担するのか、議論は英語で進められるのか、その場合非英語圏の人々はどのように議論に参加するのか、などなど)があるように思いますが、方向性は間違っていないように感じました。