「超高速!参勤交代」は佐々木蔵之介さん主演の時代劇エンターテインメント映画。2011年に日本映画製作者連盟が主催する城戸賞を全審査員満点で受賞した土橋章宏さんの脚本の映画化だ。

ストーリー:磐城国にある湯長谷藩。藩主の内藤政醇は江戸での参勤を終え、湯長谷に帰藩した。ところが、「5日のうちに再び参勤せよ」という松平信祝の命令がくだされる。貧乏藩の湯長谷藩では参勤にかかる資金や人出を工面出来ない。だが、命令に逆らえば藩の取り潰しもありえること。そこで藩ではさまざまな案が出るが、政醇は参勤を決意する。とうてい不可能と思われている状況下で政醇のとった方法とは……。

うーん。思っていたよりずっと面白くなかった。「テルマエ・ロマエ」並に笑わせてもらえるかと思ったが、笑うところも大してなく、予告編から受けたイメージとはだいぶ印象が違った。

かといって、真面目な参勤交代ドラマとしてもいまいち。参勤交代の意義やそれを行う際に諸藩がおさえなければならないポイントが全く分からないため、ストーリーの肝となるシーンがどこなのか不明なまま映画が進んでしまう。

しかも途中でよくわからない刺客たちが出てきて戦うことになるのだが、湯長谷藩の人たちが強い意味もよくわからないし、そういう伏線がはられていないので、何だか主人公補正で勝利!という印象だ。

そもそも戦う必要性もあまり感じられない。これは松平信祝の差し金なのだが、情報がここまで筒抜けならば刺客を差し向けるよりも、幕府を説得して他の町に監視の役人を派遣するなどして厳粛に参勤交代させた方が効果的だと思われる。暗殺というリスクの高いことをする必要があるのか非常に疑問だった。

しかもこの戦闘のせいで肝心の参勤交代について描かれる時間が短くなるという本末転倒ぶり。どうして全審査委員一致で受賞に至ったのかわからない。

全部が全部唐突な印象を受けるのに、その唐突さが全く笑いにつながらない構成。正直言って厳しい。

絶望的につまらないわけではないし、笑えるところもあるのだが、全く英がの波に乗れなかったし、急に出て来る情報が多すぎて行き当たりばったり。伏線をもっとはってほしかったし、参勤交代自体にもっと焦点を当てた作品にすべきだった。昨年の「清須会議」のようにしっかりとした歴史ドラマにするならまだしも、それがないのにここまで笑えないときつい。しかも予告編やポスターでは抱腹絶倒感を出しているちぐはぐさ。やるなら「ハーメルンのバイオリン弾き」くらいギャグで何とか不都合を乗り切るくらいのハチャメチャぶりが欲しかったところ。

中途半端に真面目で、中途半端に笑いどころがある。しかもどちらとしても面白くない。

プロモーションだけ上手くやって、興行成績をあげたところで、これでは映画離れを加速させるだけだろう。ドラマを観ていた方が面白いと思われても仕方ない作品だった。

公式サイトはこちら