「聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY」は車田正美さん原作の人気漫画「聖闘士星矢」の25周年を記念して製作が発表された3Dアニメ映画である。黄金に輝くポスターが盗まれる事件が起きるなど注目度は高かったが、僕の個人的な感覚では2週目になった途端一気に上映時間数が減った作品だ。まだ公開3週目だというのにもう終わりそうな気配である。

だが、さすがは聖闘士星矢。観に行った回はそれなりに混んでいた。

ストーリー:大富豪城戸光政はある日、雪山で謎の人物アイオロスから赤ん坊を託される。その赤ん坊こそ、サンクチュアリの女神アテナの生まれ変わりだった。光政は彼女を沙織と名付け、彼女を守る聖闘士たちを育成していた。そして時が流れた。ある日、沙織は何者かに襲われる。それを救ったのが星矢たちだった。そこで沙織はサンクチュアリから反逆の疑いをかけられていることを知る。

はっきり言ってしまえば、この映画の脚本はひどい。原作を知っている前提で書かれたとしたら、説明が多過ぎるし、知らない人に説明するには足りな過ぎる。更に、それぞれがアツい言葉を口にし、何となく雰囲気でだまされるが、大体言ってることが意味不明だ。相手のセリフや本人が見聞きしていないはずのことを知っていたり、謎の予知能力がない限り起こりえないことが普通に起こる。ご都合主義的な展開の連続だし、やっぱり言ってることが意味不明だ。

だが、それが聖闘士星矢の持ち味でもあるため、そこを深く突っ込むのは野暮なのかもしれない。そして、この映画のすごいところは「みんなが言ってることが意味不明なのに何だか胸がアツくなるしごまかされている」という点だ。普通はこんなにしっちゃかめっちゃかなことをやっていたら話についていかなくなるし、ちゃんと観る気も失せるだろう。だが、この映画は最後まで観る気力を失わせない。そういう意味では評価出来る。

また、映像もかっこいい。まあプレステのゲームのムービーかと思うような質感なのだが、変にリアルを追求するよりはその方が良かったとも思えた。

ただ、ギャグセンスのなさとよくわからない点が多くあったのはもう少し改善してほしいところだ。

地雷映画だと思っていた割には結構面白かったし、続編があったら観てみたいと思うのだが、そこまでヒットしていないのが辛いところ。そもそも上映回が一気に減ってしまうあたりに東映の力のなさを感じてしまう。あれだけ宣伝したのだから、もっと上映出来れば良かったのに。
昨年は「おしん」「キャプテンハーロック」といった作品を外した東映だが、同時に「中学生円山」や「ドラゴンボールZ 神と神」といったヒット作、良作も生み出していた。

だが、今年は魅力的な作品がほとんどない。「魔女の宅急便」が思いの外良かったが、一般受けするわけもなく、残念な興行収入に終わっている。「BUDDA2」に至っては何故製作したのかもわからない。その後は(観ていないのであまり言えないが)「L・DK」「キカイダー REBOOT」「わたしのハワイの歩き方」と誰得映画を連発。次に控えているのが「幕末高校生」であり、全く観に行く気が起きない。

東宝と興行収入1位を争うような良い企画で映画を作ってもらいたいところなのだが……。

少し話はずれたが、ひどい作品ではないので、原作が好きなら観に行ってもいいかもしれない。だが、原作を知らず、ノリについて行けないと苦しい1時間半を過ごすことになるだろう。細かいところに目をつむって観ることをおすすめする。

聖闘士星矢の公式サイトはこちら