「ハイキック・エンジェルス」は日本の女子高生を主人公としたアクション映画だ。武田梨奈さんを世に送り出した「ハイキック・ガール!」で監督・脚本を担当した西冬彦さんが脚本、プロデュースをしている。監督は横山一洋さん。主演の宮原華音さんを始め、川本まゆさん、青野楓さんらアクション担当陣は実際に格闘技経験者。明記はされていないが、「ハイキック・ガール!」が実際に当てる打撃映画ということだったので、この映画もそういった撮影法が撮られているのかもしれない。格闘家の子安慎悟さんが敵役として出演している。

ストーリー:アクション映画部は女子高生ばかりの部活。その4人は廃校舎を利用して映画撮影をしていた。最終決戦の撮影を前にし、張り切る彼女たち。最終決戦の相手は武勇伝が噂される赤城マキになったと聞き、テンションの上がる部員たち。だが、その校舎に突如、謎の男たちが押し入ってきた。校舎に閉じ込められ、携帯の電波も通じなくなってしまった彼女たちはこの校舎から逃げ出すことが出来るのか……!?

ちょっと期待しすぎた、というのが本音だと思う。

確かにアクションはすごかった。特に川本さんのバトルシーンは圧巻。めちゃくちゃ手数が多い上にかっこいい。これは内さんが「ボーン」シリーズを意識したというもので、肘、ヒザを使った素早いアクションバトルシーンになっている。また、宮原さんのパートはジャッキー・チェンやブルース・リーを意識した正統派カンフーアクションを、青野さんのパートはキックを主体としたバトルを、とそれぞれのキャラクターに応じて戦闘スタイル、アクションスタイルが違うというのは非常に面白い。

舞台挨拶で内さんが「武田梨奈がたくさん出来ても仕方ないですから」と言っていたが、その信念と情熱は伝わってきた。彼女たちは1日5時間の練習を1年にわたって行っており、相当レベルの高いアクションシーンが展開されている。

が、そこまでこだわったアクションの良さを台無しにしているのが脚本の適当さだ。

まず、この映画の脚本にはほぼ伏線という概念がないので、行き当たりばったりで物語が進む。この時点でかなり厳しい。そして男たちの目的が納得いかないところだ。そこまでのコストをかけて派手にやる必要があったのか、と聞きたいのだ。普通に校舎を貸し切ってゆっくり探せばいいじゃないか。しかも携帯が使えなくなるジャマーなんて必要ないじゃないか。と言いたくなる。この辺をきちんとつめて考えるべきだった。いくらアクションがすごいとはいえ、これでは内容に対する興味が半分くらいになってしまう。あー、戦っててすごいね。で終わりだ。

また、宮原さんに演技経験が乏しいのも厳しい。彼女は彼女なりに頑張っていたとは思うが、セリフも不明瞭だし、弱々しい。どこか一辺倒になってしまう。これで主人公というのはちょっときつい。

ただ、アクションのシーンになると、さすがは空手経験者。目の殺気は半端ないし、すごく魅力的になる。その分、日常というか、戦っていない部分での演技のしょっぱさが目立つ。これは彼女の責任ではなく、そういったキャスティングをした以上、監督の責任だ。もちろん慣れもあるのかもしれないが、舞台挨拶での彼女の振る舞いは魅力的で、それだけの魅力を持っている人からそれを引き出せないというのはこういった若手を起用する映画の監督としては致命的だろう。

これは青野さんの演技にも言えることで、やはり基礎が出来ていない分、監督がしっかり引き出してあげなければいけなかったと思う。

ただでさえ説得力のない脚本に、こういった演技を重ねてしまうとちょっと厳しい。映画としての質が大きく下がってしまう。
ただ、何か彼女たちの頑張りは伝わって来るし、応援したくなる映画ではある。

そういった意味では壊滅的とは言わないし、実際、アクションだけを観に行くつもりで行けばかなり面白いと思う。「ラストミッション」よりははるかにアクションでの見所がある。

女子高生ばっかりが戦う本格アクション映画、という企画も良かったと思うし、これだけの人材を集められたのも素晴らしい。だからこそ、脚本と演技指導にもっともっとこだわるべきだった。そうすれば何十年も残り続ける伝説的作品になる可能性もあった。それだけに、残念である。

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