「グランド・ブダペスト・ホテル」は「ダージリン急行」「ムーンライズ・キングダム」など独特な作風で知られるウェス・アンダーソン監督の最新作だ。ピンク色のお洒落なポスターと、北米での高評価があいまって、日本でもスマッシュヒットしている作品である。僕が行った日も観ようと思った回は売り切れ。次の回で観たけど、終わりが23時近くになるにもかかわらず、かなり多くのお客さんがいた。若い女性客が多く、今やっているもので大人の女性がデートで観てみたいと思う映画No.1なのかもしれない。

それにしても、ウェス・アンダーソン作品はデートで観るのに安牌な映画ではない。というのも、かなり独特なので、ハマる人はいいけど、ダメな人は苦手だと思うからだ。だが、概ね好評のようだし、これを機に映画デートをやめようというカップルが少なそうなので安心している。

ストーリー:歴史も格式もあったグランド・ブダペスト・ホテルだが、1960年代にはだいぶ落ちぶれていた。そこを訪れた作家はこのホテルのオーナーから話を聞くことになった。そこで語られたのは1920年代の名コンシェルジュであるグスタフ.Hと彼が巻き込まれたとある夫人の遺産を巡る騒動だった。

この映画はかなり面白い。ウェス・アンダーソン節が炸裂している映画ではあるが、「ファンタスティック Mr.FOX」や「ダージリン急行」と比べて随分とエンタメ性が上がり、わかりやすくなったと思う。

ウェス・アンダーソン監督作品は猛烈なテンポとストップモーションアニメのような箱庭的映像などが特徴だ。これらはもちろん健在であるが、だいぶ映像が整理され、状況がわかりやすくなっている。脚本も洗練され、非常に観やすい。それでいてハリウッド映画とは一線を画すストーリーの流れがある。

ちなみに、ブダペストは全く関係ないし、ハンガリーも出てこない。

あと、この映画をミステリーとして観に行くのは間違いだ。というか、そういう風に宣伝していることは愚かなことだ。この映画のジャンルはミステリーではなく、サスペンスかコメディだと思う。というか、サスペンスやコメディと言ってしまっても肩すかしをくらう人が多いと思うから、あまりジャンルを気にせずに観に行ってほしい。この映画のジャンルはウェス・アンダーソンだ。

怒濤の展開とブラック・コメディの嵐。だが、登場人物が整理され、きっちりキャラ立っていたので、観やすい。日本人にとって西洋人の顔は見分けがつかないことがあるが、そういったことも心配ない。衣装などでしっかりわかりやすくなっている。

細かいところまでこだわって作ってあるが、観るときはそんな細かいところは気にしない方がいい。そのくらいスピーディな映画だからだ。デートで選んでも多分大丈夫な映画。女の人同士で行くのもいいだろう。男同士で行くならX-MENとかを選んだ方が楽しいかもしれないが、この映画も十分楽しめる。そんな良質な映画だ。

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