「百瀬、こっちを向いて。」は中田永一原作小説の映画化。中田永一は乙一の別名義としても知られている。出演は向井理、竹内太郎、元ももクロの早見あかりなど。

ストーリー:小説を刊行した新人作家相原ノボルは母校でイベントを行うことになった。地元の駅に戻った彼は高校時代の先輩、神林徹子と出会う。彼女と会話をするうち、ノボルは高校時代のある恋愛のことを思い出す。

青春映画として非常に面白い出来になっている。少し不安だった向井理さんのキャスティングも良かった。
「桐島、部活やめるってよ」を彷彿とさせる、青春の何とも言えない空気感が全編通して漂っていて、そこから出てくる痛みとか切なさとかそういったものが効果的だった。
元々、原作はさすが乙一、といった内容で、面白かったが、その面白さを損なわずに映像化したという印象だ。
前半部分は設定の説明が必要なこともあり、若干もったりしていたが、後半はドラマチックで心揺さぶられる。
この作品は現代と過去とが交互に映し出されるようになっているのだが、現代パートの出来はあまり良くない。中村優子さんの演技が申し訳ないがいまいちだ。あまり魅力がないし、よくわからない。原作と設定を変えてまで子供を登場させた理由もちょっと不明だ。
前半のつまらなさは現代パートが多く挿入されることも原因の一つと言えるだろう。向井理さんは悪くない分残念だ。
それに比べて過去パートはみんないい。竹内太郎さん、早見あかりさんはもちろんのこと、本来悪役となるはずの宮崎先輩役の工藤阿須加さんはかなり自然な演技と、奥に秘めた感情で役に深みを与えている。
映像も透明感があり、雰囲気がすごく出ている。ただ、個人的にはパンチラ寸前というカットがいくつも出てくるのはあまり必要なかったんじゃないかと思う。まあ男子高校生の目線なんてそりゃそうなるだろうけども。
ということで、かなり駆け込みで観に行ったが、良い映画だった。もう終わっちゃうけど、カップルなどにはおすすめの一作である。