今年度アカデミー賞の作品賞を獲得し、満を持して公開となった「それでも夜は明ける」。「ハンガー」や「SHAME シェイム」の監督であるスティーブ・マックイーンの監督作だ。
自由黒人だったが、拉致され、奴隷として売り飛ばされてしまった男の12年間にわたる奴隷時代を描く本作。アカデミー賞は重いテーマの作品が選ばれやすいこともあり、順当な結果だろう。また、本作でルピタ・ニョンゴが助演女優賞を獲得している。各賞レースでも強さを見せており、批評家からの評判も上々。満を持しての日本上陸である。
さてさて、この「それでも夜は明ける」は奴隷制度をテーマにした作品だ。だが、自由黒人という立場からの転落という、あまり焦点が当たらない歴史の側面を描いている。当時は比較的多いケースだったにも関わらずだ。実話をもとにしているのだが、この視点からの作品が生まれたということは一つ価値があることだろう。世界の人に知らせる意味でも面白い。また、自由黒人である時と奴隷となって以降とでの扱いの差などが描かれているため、奴隷制度がいかに黒人を抑圧したものだったかもわかりやすく観ることができる。また、賞をとることができたのは「白人対黒人」という構図ではなく、「犯罪者の白人対被害者の黒人」という構図になっているからであるとも言われている。まぁ白人側からしてみれば先祖が悪かったからといって悪者として描かれるのは面白くないだろうし、そういう描き方をしたところで今の白人とは関係ないのだから無意味なことだ。

さてさて、肝心の映画は、というかと、かなり面白い。全編通して笑えるようなところはほとんどないが、正面から歴史の暗部を描いている重みがあっていい。
キウェテル・イジョフォーの演技も素晴らしいし、一緒に観ていて同じように圧迫されているかのような感覚を味あわせてくれる。

テーマの重さと、奴隷制度に馴染みがない日本では大ヒットは望めないと思うが、良質な映画なので、ぜひ観てほしいと思う作品だ。