映画「僕と魔法の言葉たち」を見ました。素晴らしい映画でした。自閉症の子どもが、人とのコミュニケーションを作り、世の中に出ていくドキュメンタリー映画です。自閉症だった男性本人が、この映画に出演しています。

 この人はすでに大人になっていて、一応の社会的適応はできいます。しかし、ちょっとぎごちない感じがします。その「ちょっと」のリアルさがいい。これを、役者さんの演技で表現するのは難しいと思います。

 

 主人公は3歳のとき、突然しゃべらなくなった。

 ところが、その子の精神はディズニーのアニメ映画と共に生きていた。ある日、ディズニーアニメの台詞を突然しゃべる。それにヒントを得て、父親がアニメ映画のキャラクターを演じて、コミュニケーションの通路を作っていきます。

 その経過が、当時の様子を記録した家庭ビデオ、ディズニー映画の場面の挿入、回想によるスケッチなどで再現されていきます。

 

 

 そして、学校に行って、いじめにあった悲しみ。

 大人になってからの、ガールフレンドとの愛、そして破綻。

 それらをあまり劇的な盛り上げ方をせずに、淡々と描いていることに好感が持てました。

 

 いまの教育は、子どもを諸能力に分解して見ています。その諸能力を一つ一つ訓練し、総合すれば充実した生き方ができると信じています。

 しかし、これは実際の子どもの意識の在り方に沿っていません。子どもの意識は、キャラクターと物語によって構成されています。

 だから、この映画のような場合でも、ディズニーアニメなら、子どもに親しいものとして、意識の中に入ることができたのだと思います。

 

 子どもの感覚についての理解がもっと進んだとき、教育はほんとうに子どもに親切なものになるだろうと思います。

 


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