『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015) | アディクトリポート

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※業務連絡
ダグ・チャンコさんのコメントは、
ネタバレ案件のため、後日の公開となります。
ご了承ください。

今日の記事は、具体的なネタバレは避けますが、
鑑賞前の人に先入観を与えるため、
観てから読むことを強くオススメします。


火曜日にご厚意で(おごってもらい)、IMAXで観る予定だったが、
とくてん
16日の深夜に、急遽18日の初回上映(2D通常版)を観られる条件が整い、
近場で一番席数の多いスクリーンの、前から4列目で鑑賞。

とにかく、公開たちまち観るしかない作品である。

なにせネタバレ地雷が、ネットのそこかしこに仕掛けられてるんだから!

自分が誘惑を断ち切れるかどうか、だけではない。

(※以下のリンクは、何も知りたくない人は、とにかく絶対クリック禁止!)
公開たちまち無法地帯となり果てる、ヤフーレビューをのぞかずにいられるのかとか、
公開翌日のウィークエンドシャッフルを聴かずにおけるのかという以外に、
検索語句に「フォースの覚醒」を打ち込むような自殺行為はもちろん御法度(ごはっと)だが、
全然予期しないところにネタバレが仕掛けられたりしてるから、油断もスキもありゃしない。

おまけに、本ブログの別記事のコメントカキコミでも、
「君なら当然観てるだろ」を前提に書いてくる
(これも一種の新手のサイバー攻撃だよね)から、
自衛手段としても、初回で観るのは必然だった。

さて、そんな『フォースの覚醒』の感想は?

「ようやく、自分の知ってるスターウォーズ(以下SW)が戻って来た!」
と言う雰囲気で始まり、
「本当にSWが戻って来た」と自分に無理やり言い聞かせていた(笑)
みた
新三部作(1999・2002・2005)よりは数段マシだが、
かといって最後まで見終われば、
諸手を挙げて大絶賛というわけにもいかない。

これはちょうど、「宇宙戦艦ヤマト2199」に感心しない旨を述べ続けた時、
nennda


テレビ「ヤマト2」「新たなる旅立ち」「ヤマト3」
とか、映画『永遠に』『完結編』と比べたら、
飛躍的なアップデートだろうに、
今となってはみすぼらしい、最初のヤマトがいつまでもサイコー
という老害原理主義と揶揄されたように、
「新三部作(エピ1~3)もダメなら、
それとは趣を変えたこっちもダメって、
どんだけ旧三部作(エピ4~6)原理主義なんだよ」
と思われそうだが、そういうことじゃないんだな。

見終わった時……というより、ある時点で感じたのは、
「こりゃあ、試写もなしにいきなり公開するわけだ」
ってことで、
なぜなら、ネタバレこそがドラマの核になっているから。

いってみれば、
『プレデター』の姿を誰もが知ってる今、


1作目の、「どんな姿をしてるのか」で興味を引っ張る手法が陳腐化するように、

プレデター<日本語吹替完声版>コレクターズ・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]
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ネタバレたちまち、『フォースの覚醒』の作品的価値は下がってしまい、
興行の寿命を縮めてしまうギャンブルだから、
本当に作品を大切に考えるなら、
取るべきではないやり方だといえる。

でもって、「○○は△△のXXだった」的なネタバレは当然、
SWを知っていることが前提だから、
『エピ1』から『エピ3』はともかく、
『新たなる希望』『帝国』『ジェダイ』を観ていなければ、
『フォースの覚醒』のドラマは、何がなんだかわからずに、
ちっとも面白くないってことになる。

初日初回上映は字幕版だったのに、
どう考えても字幕の読めなそうな、小さな子供の声が上映前に聞こえて、
「子供に理解できる内容じゃないだろ(PG13)。観たがる親の都合で道連れか」
と心配だったが、
案の定、ドラマの最大の見せ場のはずの橋のシーンで、
むずがって泣いていた。

そう、『フォースの覚醒』は、
子供が見ても全然面白くない作品で、
果たしてそれをSWと呼ぶのか、という疑問が浮かぶ。
@ea
ついでながら、劇中のノリからするに、
コスプレして観る映画かどうかも、疑問を感じる。

さすがにVFXは達者だが、
超兵器も攻略法も、
惑星の景観もさっぱり新味がないし、
ドラマのテンポは悪く、筋運びも不自然で、
とにかくケツのクライマックス(壮大なネタバレ)を先に決めておいて、
SWよりは『インディ・ジョーンズ』的なアクションをたたみかけて、
主人公は偶然の積み重ねでそこに行き着くという、
かなりありえない展開。

このため、ドラマに真実味がなく、説得力がない。

たとえば、まっとうに考えるなら、
ジャンゴ・フェットのクローンなはずの、
ストームトルーパーが黒人なのは、
さら
ルークやハンと同じ、敵地に潜入するための、
レジスタンスのスパイ変装かと思ったら、
劇中では全然別だったし、
ハンとチューイーが、
なつかしきファルコンにご帰還となれば、
再びの銀河の危機に瀕し、「宇宙最速のガラクタ」が欠かせなくなったので、
手放した愛機を必死に探した結果、ようやくたどりついたのかと思ったら、
そろろ
劇中では、まるで異なる展開だった。

↓単なる背景メカかと思ったら、
がるぼ
↑このガルボ・ジックもどき、それなりに出番があった。
↓すぐにお役御免だが…。

ふたり

プレミア上映を見たアメリカ女性ファンへのインタビューで、
「予想してた話と違う」と言ってたが、
「思ってたんと違う」
「コレじゃない」
「こんなの、SWと呼べない」
という違和感は、プリクエルとはまた別の形で、
『フォースの覚醒』のあちこちにちりばめられている。

思うに、これは作品を主導するボスが誰もおらず、補佐役ばかりが集まって、
終始、誰もが雇われ=お客様気分で取り組んでしまった結果だと思う。

つまり、自己の中に創作欲求や創作動機がないのに、
「SWは儲かるコンテンツだから」というだけで召集され、
必然でもないものに主体性なく取り組めば、
具体的に「こうしたい」がないわけで、
根幹となるストーリーが思いつかず、
既存作をなぞるリメイクにしかならない。

これと比べると、毎回別の話を思いついた点では、
ジョージ・ルーカスが、クリエイティブ・ジーニアス(発想の天才)だと言うのは、マユツバでもヨイショでもなく、ホントだった。
プリクエルでは、それを盛り立てる補佐役を欠いた(組む相手を間違えた)だけのこと。

なので、プリクエルでは、
「今度はこう言う話だったんだ」
という、聞き語り全体に対する印象や感想が、観客の側にあるという点では、
そこそこSWしてはいた。

一方、補佐役だけで編成されたチームは、
既存作の焼き直しの延長で、盛り上がるネタバレ爆弾を仕掛けて、
そこにつながる導火線に火をつけるような筋立てしか思いつかなかった。

一度はオファーを断ったJJエイブラムスが、やっぱり考え直して、
「こういうやり方ならできる」と行き着いたのが、これだったわけだが。

それでも本来主体となるべき、
ルーカス御大の意向を、一応聞きはしたものの、
相変わらず、プリクエル(前史三部作=新三部作)のくり返しに思えたから、
「そんなのは、ファンの観たいSWじゃない。同じ過ちをくり返すのは、もうゴメン」
と断じて、その案は白紙撤回。

「ファンが観たいのは、こういうSWなはず」と、
ひたすらファン目線で、自分が観たかったSWを追求。

その結果として思い切りオリジナル三部作を尊重したところ、
オールドファンは喜んでも、
新規客の開拓にはまるで貢献しない、一見さんお断りの敷居の高い映画、
相当のファンやマニアしか対象にしていない、
間口の恐ろしく狭い映画になってしまった。

それもあって、徹底的に考え抜かれたところと、
信じられないくらいテキトーで無思慮な部分が、
一つの映画の中に混在するという、
きわめていびつな仕上がり。

結果として、作品全体への感想がなくなり、
ネタバレ案件だけが印象に残るという、
かなり珍妙な事態に。

『スター・トレック』(2009)
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『イントゥ・ダークネス』(2011)で、エイブラムスに感心したのは、
それまでの映画版10作(カークで6作、ピカードで4作)が、
貧乏くさかったB級だったのを、
堂々たる超大作に昇格させたからだったのに、
『フォースの覚醒』は、SWという作品の幅を思い切り狭めてしまい、
見終わってたちまち、何度も見返そうという気は起きず、
それよりもこの先、
2018年の『エピソード8』、
さらにその後の『エピソード9』のネタバレ爆弾だけに関心が集中。
どれだけ無事に行き着けるかだけに気持ちが向くという、
本末転倒な事態に。

……。

何してくれとんねん!

まあ、でも、与えられた役職では各自ベストは尽くしたんだし、
何しろレイ役のデイジー・リドリーだけは、
にょん
抜擢に見事に応える、主体性のある演技への取り組みで超活躍、
『フォースの覚醒』という名の倒壊寸前の掘っ立て小屋を、最後まで持ちこたえさせてくれたので、
全体評価は80点、星4つが妥当な評価だとは思います。

ただし、
『新たなる希望』85点
『帝国の逆襲』95点
『ジェダイの帰還』75点
『ファントム・メナス』65点
『クローンの攻撃』70点
『シスの復讐』80点
——として。

そんなこんなで、
公開前には
マッドマックス 怒りのデス・ロード
と、どっちがいいかなと考えてたが、
見終われば『マッドマックス』の圧勝。
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『フォースの覚醒』は完敗でした。