iPad雑誌「photoJ.」が気になるバージョンアップ、これでいいのかなあ | ただのオタクと思うなよ

iPad雑誌「photoJ.」が気になるバージョンアップ、これでいいのかなあ

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 iPadの発売と同時に、国内でもこれに対応した電子書籍・雑誌が堰を切ったようにどどんと、発売されています。どのコンテンツも、新しい流れに乗り遅れまいと、ペーパーとは違う独自の趣向が盛り込まれていて、使う側にとっても、また波に乗って一山当ててやろうと企む私のような業界人にとっても日々興味をかき立てられているところだと思います。

 そんな中でちょっと気になる動きを目にしたので、チェックしておきたいと思います。

 それはiPad発売と同じ日にあわせて毎日新聞が創刊したビジュアル誌「photoJ.」。新聞社発売の雑誌らしく、政治から経済・社会・スポーツ・ファッションなどなど、幅広いカテゴリーのホットなニュースを、iPadの高精細画面を活用した鮮明な画像とともにレイアウトした内容で、新しいデバイスのスタートアップ・コンテンツにふさわしい作りとなっています。しかも創刊価格ということで115円で読めるとあって、ダウンロード数はさぞ多いだろうことは容易に想像されるところです。

 この「photoJ.」の気になる特徴の一つに、「月刊」とも「週刊」とも明確に名乗ってない点があります。一応1カ月に1回をめどに新刊をアップするとアナウンスはしているようですが、そんなルーズな発刊方法は紙媒体ではまず考えられません。これも新しいメディアならではの柔軟さとも言えます。

 その創刊号がきのう8日、「バージョンアップ」が実施され、一部記事が追加されました。新たに追加されたのは「社民党が連立政権を離脱」「鳩山首相辞任」の2本。ページにして合計6枚分に相当します。

 周知の通り、先週から今週にかけて日本の政治情勢は唐突と言える大きな変化があり、この追加記事はその動きをフォローするもの。紙の週刊誌では絶対できない技を早くも繰り出してきたといえるでしょう。

 それはそれで画期的で斬新で、新しい雑誌メディアの進むべき方向として歓迎される手法であることは確かです。

 ただ一方で、気になる点も。この挿入した2つの記事のすぐ後に、バージョンアップ前からあった「小沢ガール 再び」という記事が並んでいるのです。トップには笑顔で記者会見するヤワラちゃんこと谷亮子さんと小沢一郎幹事長(当時)の写真が。さすがに内容を一部修正、というわけにもいかず、バージョンアップ後もそのままの内容で掲載されています。今更外すわけにも行かないというところなのでしょうか。

 あくまで私の予想ですが、これを「しかたない」と好意的に受け止めてくれる読者の方が圧倒的であるとは思います。きょう、初めてこの雑誌の存在を知って購入した読者がこのレイアウトを見ても、怒って編集部に抗議電話をかけることもないでしょう。

 ただ、今後例えば、広告掲載が可能になったときなど、こうした後付け処理にきっちり対応できるのかとなると、笑って済ますだけでは終わらないケースが想像されます。

 柔軟性という言葉は、報道記事の編集に携わった経験のある人間なら誰もが求める強みです。校了後に気付いた失敗でも、すぐさま「なかったこと」にできてしまう電子書籍の性質に期待する業界人も多いはず。でも、そんな夢の実現も、そう易々と手に入れられるわけではない現実を、この「photoJ.」のバージョンアップから垣間見られた気がします。