東京23区の地名の由来 | ただのオタクと思うなよ

東京23区の地名の由来

金子 勤
幻冬舎ルネッサンス
発売日:2010-02-20


「秋葉原」を知らずに“アキバ”を語るなかれ

 この世には、4種類の本しか存在しないと、ある意味いえると思います。それは、
 「楽しくてためになる本」
 「楽しくないけどためになる本」
 「楽しいけどためにはならない本」
 「楽しくなくためにならない本」

 これまで500冊ばかりの本をこのブログで取り上げてきたと思いますが、一部の献本をのぞき、基本的に自腹で、古本ではなく新本を購入したものを取り上げております。である以上、なるべく損はしたくない。お金だけでなく一定の読書時間を無駄にしたくないですからね。

 で、上記の4通りの見方はあくまで読み手の主観で仕分けするものなのですから、何とか中身にメリットを見つけて、最後に挙げた「楽しくなく、ためにならない本」であることを避ける努力をしております。偉そうですが、これをできるかできないかが、「読書力」の器量なのではないかと、私は思います。読解力はその次の問題かと。

 で、きょう挙げる一冊は4番目に入りそうなところを何とか2番目の「楽しくないけどためになる本」に当てはまると決めつけて呼んだ物件です。

 そのタイトルは「東京23区の地名の由来」。

 タイトルだけ見ると、1番目に該当してもいい感じですよね。私もそう思いました。ところが、どこをどう転ばせても「面白い」という感覚は見いだせませんでした。なぜなら、中途半端だからです。

 一応この本の趣旨を記しておくと、文字通り現在の東京23区、及び各区内の番地の名前の由来を、一切の“創作”を排除して淡々と書き記していくという内容です。

 ところが、新書版にしてしまった限界からか、それとも調査不足なのか、すべての番地に言及しているわけではありません。まあ、人間のすることですから、ある程度仕方ないとは思いますが、もうちょっと内容が欲しかったというのが正直なところ。これが筆者の望みだったのか編集者の要望だったのかはわかりませんが、見事に狙いを外してしまっている。

 それと、ちゃんとご自分の足で調べたのか疑わしい箇所も見受けられます。その典型が「台東区」の「秋葉原」。

 あれ?と思った方もおられるかも知れません。秋葉原って千代田区じゃ?と。そう、電気街としての秋葉原は確かに千代田区。ただし電気街一帯の地名は「外神田」です。じゃあ台東区の秋葉原ってどこ?

 実は電気街と東北線(山手・京浜東北・新幹線)の線路を挟んで、ヨドバシカメラ・アキバの少し北の当たり。

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この当たりは電気屋さんは一軒もなく、一昔前までの物流拠点としての役目を成していたこの界隈の名残を残す段ボール集積所みたなものがひっそりとある程度なんですね。

 ところがこの本では「電化製品の町として知られる」とやってしまっているんですねえ。

 淡々と書き記すなら、事実を正確に押さえておかないと、辞書の役にも立ちません。それどころかほかの箇所にも「ちゃんと事実が書かれているのか」、要らぬ疑いさえ抱いてしまう。

 やっぱりこうやって書いてみると、「楽しくなくて、ためにもならない本」とした方が出版社にとってもいいのかも。どこだこれ?幻冬舎?ちょっと、しっかりしてよね。